MUSIC LAND -私の庭の花たち-

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「十三夜の面影」2




「とにかく、こんな格好ではなんだから、

うちに行って着替えないか?」

僕は薄衣のかぐや姫を

人目からかばうように

前に立ち、歩いていった。

後ろから素直についてくる。

「こんな時間に開いてるブティックはないからね。」

と言いながらも、

それを口実に自分の家へ連れて行こうとする僕。

でも、今夜泊まるところもないだろうし、

ほっとけないよな。

自分にそう言い訳している。

タクシーでうちまで直行してしまった。

結構かかったけど、仕方ない。

部屋は散らかっていたが、

あわてて片付けて、座らせる。

かぐや姫は、周りを珍しそうに見回してる。

来る途中も見たかっただろうが、

ゆっくり見られなかったのだろう。

お茶を出すと、恐る恐る手を伸ばす。

「これは何ですか?」


「日本茶だよ。

紅茶や珈琲よりもいいかと思って。

昔、飲んだことあるんじゃないかな。」


「そういえば、地球に居た時、飲んだことあるような。

もうずっと前だからよく覚えていないけど。」

首をかしげるしぐさも愛らしい。


「そうだろうね。

お茶は貴重で薬代わりだったしな。

飲んで、落ち着いたら、

着替えようか。

目のやり場に困るから。」

本当は着替えさせるのが

惜しいくらいなのだけど、

そうしないと、自分が

抑えられなくなりそうで怖い。

スエットの上下を渡して、

洗面所で着替えるように言う。

「これはどう着るのですか?」


「足をこのズボンに通すんだよ。」


「こうですか?」

目の前でやろうとするので、

あわてて、止めた。

羞恥心がないのだろうか。

男の前で無邪気すぎるよな。


「それでいいから、洗面所でね。」

といってもユニットバスだから、

バスルームも兼ねているのだが。

こんな狭いワンルームマンションで、

二人っきりとは、

僕の自制心が持つだろうか。

今夜は長いなあ。

「着替えてきました。」

スエットの上下でこんなに可愛いのだから、

ワンピースでも着せたら、と想像してしまう。

とりあえず、ベットに彼女を寝かせ、

僕は下のカーペットに横になる。

「私だけ寝床を用意してもらって、

申し訳ないわ。

まだ余裕ありますよ。」

と自分の脇を指差す。


「いいよ。僕はここで。

隣では寝られないんだ。」

あわてて手を振る。

誘ってる訳じゃないよな。

分かってないのだろうか。

そう思っているうちに、疲れていたのか、

軽い寝息が聞こえてくる。

僕はやはり寝つかれない。

起き上がって、寝顔をのぞく。

安心しきった顔を見ると、

とてもじゃないが、何も出来ない。

眠れないまでも、

せめて目を瞑って休まないと。

明日はどうしようと考えると、

ますます目が冴えてしまうのだった。

続き



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