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みんなもその通りだと思った。
なんだか楓はあたしたちを悲しませないように、
まるで眠っているのを装っているかのように見える。
■ ヒロの留学日記
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【第四回楓祭】
皆様、この場にお集まりいただき、本当にありがとうございます。
本日、楓祭も第四回目を迎えることとなりました。
どうぞ皆様おひとりおひとりが、青木学院のメンバーとして参加していただければ嬉しいです。
冒頭にアップした画像は、前々回のコメント欄でお約束させていただいた、楓の手による修正の入った「We are The World」の歌詞です。
楓は実に耳が良く、情報処理能力にも長けていたので、私たちは「厩戸皇子」とあだ名していたほどなのですが、1985年夏、英が日本発売前に手に入れてきた「We are The World」のカセットテープを聞いたときも、その才能は発揮されました。
曲を聞きながら、楓は歌詞カードを見ていたのですが、サビの部分を聞き終えるやいなや、愛用のシェーファーの万年筆をやおら取り出し、「こことここ、歌詞が違ってる」と訂正を入れたのです。
歌詞カードには、
「There's choice we're making
We're saving out own lives」とあったのですが、
「There's a choice we're making
We're saving our own lives」
楓はこう聞き取ったのです。
冒頭の画像をアップするにあたり、1985年以来初めて、「We are The World」の歌詞を検索してみました。すると、その歌詞は楓が直したとおりのものであることが判明しました。
「サビの部分を間違って載せるなよなー」と笑っていた楓。
あらためて、「厩戸皇子」の豊耳(とよとみみ)に感心する次第です。
さて、本日は楓祭の場を借りて、飛雁にもスポットを当ててみたいと思います。
自分からこのような企画をしておきながら、実は今日に至るまで、このような内容をアップすることに非常に逡巡いたしました。なぜならば、ヒカリに最も近しい友人が、強固に反対の意思表示をしていたからです。
ヒカリという人物の特性は、ある一定の名称でカテゴライズされるべきものではないと、彼は強く感じている。確かにそれは、すべての人格にも同じようにいえることだと思います。
彼は言います。「かわいそうだから助けてあげるとかじゃなくて、自分があのユニークな存在と一緒に成長していきたいだけ」
ただ、Kのご両親からいただいたヒカリの人となりについてのご指摘と、ご自分やご自分の家族をかえりみてのご相談が、「青木」の出版以来多く寄せられていることから、私はこの更新に踏み切ろうと考えました。ヒカリの友人も「実称ではなくて略称でならば」という条件で譲歩してくれました。どうか、皆様のご理解とご支援もよろしくお願いいたします。
お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、ヒカリは「AS(略称)」という生まれつきの発達障害を持っています。私たちははじめ、ヒカリのこの特性に気づきませんでした。当時は彼の識字障害ですら日本では知られているものではなく、ASにいたっては誰も耳にしたことがない障害だったと思われます。
しかしヒカリの場合は、識字障害が先んじているのではなく、ASに並存する障害として、識字障害(LD)が現れているのだと、最近でははっきりと診断が下されています。
さて、ASとはいったいどんな特性を持つ人なのでしょうか。私は専門家ではないので、愛、燦々とさんのご協力を得て、この記述を進めていきたいと思います。
ASは、知的な遅れの目立たない自閉症のことを指します。
自閉症とは、内気とか人嫌いなどの性格的なものを表わすものではなく、病気でもありません。発達心理学では、生まれつきの障害と考えられており、風邪のように一時的な治療で治るものではなく、愛情が不足して陥ってしまう心の病気とも異なります。いわば、脳の仕組みが通常発達者とは違う、ととらえていただければ真実に近いと私は考えています。
その上で、知的な遅れが目立たない自閉症は「AS」と呼んで知的な遅れのある自閉症と区別することがあります。ASのことを、「高機能自閉」という言葉であらわすこともあります。いずれにしても、ASの人はほかの人と変わらず、誰もがすぐれた能力を持っています。また、知能指数も一般の人より高い傾向があり、興味のあることには長時間集中できる特性も持っています。それゆえ、かれらの力を見出し、正しい知識をもって適切な支援をすれば、長じてから得意な能力を伸ばして研究者となったり、ある分野で素晴らしい才能を開かせることもあります。
ASには次のような特徴がみられます。
ASの人はほかの人がどう思うかを自然にわかることや、言葉に出して言わないけれどみんながわかっている決まりのようなものを理解するということがうまくできません。ですから、日本などのいわゆる「以心伝心」の伝統がある国では、非常に苦労を強いられることになります。
また、自分の気持ちや表情や身振りなどで表現してほかの人に伝えることもうまくありません。ところが、感覚については特に鋭かったり、逆に非常に鈍かったりもします。能力においてもばらつきがあり、ヒカリの場合、PCはすばやく正確に操作できるのに、TVゲームのコントローラーはまったく動かせない、字を書くのは相当苦心するのに、絵は素描のように美しく書く、などといった特徴があげられます。
ASの人はあまりほかの人と一緒に過ごそうとしなかったり、ひとりでいるほうが多いようです。けれども、自分からはほかの人に近づかないけれど、相手から誘ってくれば友人関係を受け入れる、ヒカリのようなタイプもいます。そのなかでもまず気の合う子と交流を深めることができれば、そのなかで自分と他人との関係を見直していくことも可能になります。特性を理解してくれる子と、友達を信じて頑張ってみようと思う気持ちがひとつになれば、ASの人には大きな成長が期待できます。
しかし、どうしても相手の気持ちを感じ取ったり、自分の気持ちをうまくあらわすことが難しいという特徴を持っているため、こちらが手助けをした方がいい場面も出てきます。
以下は、ヒカリの常に隣人であったヒロや松丸の行動から教えられた、具体的な対応のポイントを挙げてまいります。
話すときは曖昧な言い方をなるべく避けて、具体的に簡単な言い方で伝えるようにします。
一般の人「この本、どうだった?」
ヒカリ「別に」「わかんない」
ヒロ&松丸「この本、面白かった?」
ヒカリ「面白かった」
一般の人「どうやってきたの?」
ヒカリ「まず家を出て、富士見台というバス停に行き、
8時13分に臨港バスというバスに乗って──」
(主に何について聞かれているのかわからないので延々と話してしまう)
ヒロ&松丸「バスで来たんだよね?」
ヒカリ「うん」
一般の人「どうしたの?」
ヒカリ「なにが?」
ヒロ&松丸「顔色が悪いよ。お腹が痛いの? 頭が痛いの?」
ヒカリ「そういえば朝から何も食べてなかった」
一般の人「修学旅行の班行動、どこに行きたい?」
ヒカリ「なんで行かなくちゃならないんだ?」
ヒロ&松丸「修学旅行中、おまえはとにかくおれについてこい」
ヒカリ「わかった」
ASの人の多くがそうであるように、ヒカリも知能指数が一般よりも高いので、「チビ」「デブ」「ハゲ」など「禁止言葉」を決めておくと、一度に覚えて、以後、絶対に使わないでいられます。自分の語彙から「消す」ことができるのです。決まりごとを律儀に守る「習性」があるので、「これは人間界での決まりごとなんだ」と教えれば、案外素直に聞き入れてくれます。もともと、悪意があったり、わがままな面があるのではなく、素直で人をだますということを知らない、ピュアな人なのです。
ヒロはヒカリのことを「ビジュアル・ラーナー」と呼びます。
ヒカリは文字や文章を見て内容を理解することは難しくても、写真やイラストなど、視覚的な情報で判断することは得意です。「今日は僕は帰りが遅いから、先に食べてていいよ」というメモ書きを見ても、意味はすぐに出てこないのです。
こんな場合、ヒロはヒカリがひとりで食事をしている画像をメールで送ります。すると、ヒカリは意味を理解して、それに従うことできるのです。
ところが、ひとくちにビジュアルといっても、顔文字や絵文字にしてしまうと意味がわからなくなるなど、ビジュアルに対する理解力にもばらつきがあるのがASであるヒカリの特徴です。
映画などを見ていても、ヒカリは主人公の気持ちになることが難しいのです。
ヒロが「シングル・フォーカス」と指摘するように、映画に出てきた「グラス」が「どこどこのレストランのグラスと同じ種類だった」などという部分だけを見て取っていることがあります。映画を見る前に、「ヒカリだったらどうする?」というように、自分に置き換えてみることをアドバイスしておくと、映画の内容を追えるようになったりもします。
また、ヒロはASについて、高機能「自開」とも言っています。
ヒカリの状態は「自分を閉じている」のではなく、逆に「開けっ広げ過ぎ」というヒロなりの感覚を持っているようです。
ヒロや松丸は非常にバランスの取れた性質を持っているため、ヒカリの特性と周囲の反応を瞬時に理解し、両者をうまくまとめるような言動が取れるのです。ヒロや松丸が誰に教わることもなく、自分たちで自然にヒカリを理解していったことに敬意を表します。
ただし、ASの人は人によってあらわれ方が違います。上記に挙げた特性が、すべてのASの人に当てはまるというわけではありません。また、手助けの仕方もそれぞれ違いがあることでしょう。
もし、皆さまの身近に、ヒカリのような「ちょっと変わっていて、すごく魅力的」な人がいたら、正しい知識をもって、理解をしてあげてください。そしてできれば、手助けをしてあげてください。
次回は「ヒロの留学日記」のつづきとともに、ヒカリ自身の「感じ方」「考え方」についてインタビューした記事をアップしたいと思います。
皆さまのご理解とご協力に心から感謝いたします。
ヒカリに関しての別の観点については こちら
をご参照ください。
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◆ 去年の楓祭
の折、チーフのご紹介で出会った天晴くんが、
無事に移植手術を克服されました。皆様の祈りとご協力に感謝いたします。
10月28日、ブルーナのキイロイトリの海苔佃煮べんとうv
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