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220716:恩田陸『蜜蜂と遠雷』読み始める■産経新聞のコピーです。――共産党の志位和夫委員長は15日、安倍晋三元首相の葬儀を国葬として行うと岸田文雄首相が発表したことに関し、「国民の中で評価が大きく分かれている安倍氏の政治的立場や政治姿勢を国家として全面的に公認し、安倍氏の政治を賛美・礼賛することになる」として、国葬実施に「反対する」との談話を発表した。――多くの国民の意思とは無縁の党の主張です。無視しましょう。とにかく岸田首相の大英断を、小政党はごちゃごちゃいわないでもらいたい。■恩田陸(おんだ・りく)は、デビュー作『六番目の小夜子』(新潮文庫)以来の追っかけでした。本書は推薦作として紹介しています。その後しばらくとおざかっていましたが、いま『蜜蜂と遠雷』(上下巻、幻冬舎文庫)を読み始めました。若き日の恩田陸としか親しんでいませんので、楽しみな読書となりそうです。■恩田陸のプロフィールは次のとおりです。――1964年生まれ。1991年『六番目の小夜子』が日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となる。2004年、2005年、『夜のピクニック』で、吉川英治文学新人賞、第2回本屋大賞を受賞する。2006年、『ユージニア』で、日本推理作家協会賞を受賞する。2007年、『中庭の出来事』で、山本周五郎賞を受賞する。2017年、『蜜蜂と遠雷』で、直木三十五賞、本屋大賞を受賞する。山本藤光
2022年07月16日
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鮫島浩『朝日新聞政治部』(講談社)東日本大震災と原発事故で、「新聞報道の限界」をつくづく思い知らされた。2014年、朝日新聞を次々と大トラブルが襲う。「慰安婦報道取り消し」が炎上し、福島原発事故の吉田調書を入手・公開したスクープが大バッシングを浴びる。そして「池上コラム掲載拒否」騒動が勃発。ネット世論に加え、時の安倍政権も「朝日新聞バッシング」に加担し、とどめを刺された。著者は「吉田調書報道」の担当デスクとして、スクープの栄誉から「捏造の当事者」にまっさかさまに転落する。(アマゾン内容案内)◎朝日が夕日になった前記アマゾン案内には、続きがあります。以下、引用です。――保身に走った上司や経営陣は、次々に手のひらを返し、著者を責め立てた。そしてすべての責任を押し付けた。社長の「隠蔽」会見のあと、待っていたのは「現場の記者の処分」。このときに「朝日新聞は死んだ」と、著者は書く。戦後、日本の政治報道やオピニオンを先導し続けてきた朝日新聞政治部。その最後の栄光と滅びゆく日々が、登場人物すべて実名で生々しく描かれる。(アマゾン内容案内)鮫島浩『朝日新聞政治部』(講談社)を手にしたのは、50年間購読を続けてきた朝日新聞を解約した1年後のことでした。学術欄、特に文芸欄に未練がありました。だからずっと歪んだ報道に、目をつぶっていました。それが「虎ノ門ニュース」を視聴するようになってから、ふつふつと許せないという感情がわきあがってきました。コメンテーターたちが、こぞって朝日新聞批判をしていたからです。そして購読紙を産経新聞へと切り替えました。その後朝日新聞が社説で、東京オリンピック反対の論陣を張ったことを知りました。朝日が夕日にまで、落ちぶれたことを実感させられました。そんな背景から、内部告発本に興味を持ちました。本書のサマリーは「現代ビジネス」のネット欄で読んでいました。筆者が朝日新聞時代の、上司や同僚や部下たちが実名で登場します。東京オリンピック反対の社説については、本書でも少し触れられています。スポーツ部などから、大きな反発があったようです。この社説が象徴するように、朝日新聞には根強い反日・政権批判の姿勢があります。また中国や韓国に対する、弱腰な立ち位置が目立ちます。しかし本書では、これらのことに関する記述はありません。官僚的な組織の体質。派閥と保身を第一義に考える経営陣。ネット時代を顧みない、傲慢な上から目線の人群れ。腐敗した朝日新聞の内部を、元政治部記者は舌鋒鋭く糾弾してみせます。印象的な記述がありました。駆け出しだったときの著者が、上司である先輩大物記者から感じとったことです。――それまで新聞記者は「過去に起きたこと」を取材して報じるものと思っていた。橘さんの話を聞くうちに、政治経済の「未来」を的確に見通す記事はとても重要だと気づいた。(本文より)若き鮫島浩はこの訓戒を胸に、過去と現在を未来へとつなぐ記事を書こうと意欲的でした。ところがやがて、この訓戒はきれいごとだと悟ります。朝日新聞は立憲民主党の機関誌なのか。こういい放った友人がいました。番記者として頭角をあらわしてきた著者も、朝日新聞本体の歪みを実感することになります。朝日新聞は吉田清治の嘘の告白を真に受け、日本軍は朝鮮の女性を拉致して従軍慰安婦にした、と大々的なキャンペーンをしました。やがてそれがすべて嘘だと判明し、記事の撤回を余儀なくさせられました。「現代ビジネス」(2022.06.16)に、グーグル日本の元社長・辻野晃一郎氏が本書の感想をよせています。――舞台は天下の朝日新聞社。ネットメディアの台頭に押されて凋落を続けるオールドメディアの「凋落の本質」が、鮫島さんという一人の反骨精神豊かなエリート政治記者の栄光と挫折を通じて生々しく描かれている。凋落の本質とは、詰まるところ「自滅」だ。◎薄っぺらな防露本ではない『朝日新聞政治部』の核心部分は、鮫島浩が福島第一原発事故の責任者が語った「吉田調書」のスクープから幕が開きます。極秘扱いされていた「吉田調書」を入手した鮫島たちは、膨大な文章を読みこなします。そして次のような記事を発信します。――震災4日後の3月15日朝、第1原発にいた9割の650人が吉田所長の待機命令に違反し、10キロ南の第2原発に撤退したというものだった。 吉田所長の発言を紹介して過酷な事故の教訓を引き出し、政府に全文公開を求める内容だった。(この引用文献の出典わかりません)大スクープ記事だったはずのものは、予期せぬ大パッシングに遭遇します。混乱のなかで吉田所長の命令は、確実に全員に届いていたはずはない。これが批判の論拠です。鮫島はこの批判をもっともだと判断します。そして第一報の脆弱だった部分を補完する、第2弾の記事を提案します。ところがこの申し出は、経営陣から拒否されます。このことで問題は、さらに大きくなります。最終的には、社長が謝罪に追い込まれます。その点について鮫島は、次のように語っています。――吉田調書の第一報は、百点満点ではなかったと思います。「吉田所長の待機命令に違反し、福島第一原発の所員650人が福島第二原発に撤退していた」と書いたわけですが、そもそもあれほどの災害の渦中ですから、命令が届いていない所員もいたでしょう。「結果的に命令に違反する形で、退避をしていた」と表記すれば、あれほどの問題にはならなかったかもしれない。(鮫島浩と中島岳志との対談。鮫島チャンネル2022.06.13の鮫島浩の発言から)そして次のように続けます。――「管理職だった私が結果責任を免れないのは理解できます。ただ、経営陣が自分たちの危機管理の失敗を棚上げして現場の記者に全責任をなすりつけたら、失敗を恐れて無難な仕事しかできなくなってしまう。これが、朝日新聞が死んだ最大の原因ではないでしょうか」(鮫島浩と中島岳志との対談。鮫島チャンネル2022.06.13の鮫島浩の発言から)吉田所長については、私は門田隆将『死の淵を見た男』(角川文庫)の書評を発信しています。この本を読む限り、鮫島が発信した第1報は、軽率だったと思います。鮫島は会社を去ることになります。今はネットメディアを立ち上げ、本来の報道倫理に立ち戻った言論活動を行っています。2021年6月、朝日新聞社は創業以来最大の約458億円の大赤字を出しました。'90年代は約800万部を誇っていた発行部数も、いまや500万部を割っています。記者が失敗を恐れて萎縮し、無難な記事しか載らない紙面が読者に見捨てられつつあるのでしょう。朝日新聞の凋落は、誰にも止められないかもしれません。(現代ビジネスを参考にまとめました)鮫島浩『朝日新聞政治部』は、薄っぺらな暴露本ではありませんでした。組織論、ジャーナリズム論として受けとめるべきでしょう。山本藤光2022.07.15
2022年07月15日
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220715:上田岳弘のこと■公明党北側さんのコメントを、共同が見出しにしています。この人のいう「ムード」って何なのでしょうか。どうも「世論」ではないようです。――「ムードだけで改憲できない」 公明幹部、慎重議論要請――いずれにせよ、改憲には乗り気ではないようです。自民党は公明党に、三行半を下すときです。■上田岳弘(うえだ・たけひろ)『太陽・惑星』(新潮文庫)を読んでいます。すでに『私の恋人』(新潮文庫)と『ニムロッド』(講談社文庫)を読んでいます。上田岳弘の世界について、次のような記述があります。――朝日新聞紙上での松浦寿輝と鴻巣友季子との対談「ノーベル賞を語り合う」において、両氏が上田の名前を挙げ、中でも松浦は「卑近な現実から離陸して、観念の高みまで想像力を飛ばそうという意気込みが感じられ」るとし、その作風を評し「新超越派と名付けた。(ウィキペディア)前2作に魅せられたので、今度も楽しみにしています。山本藤光
2022年07月15日
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220714:畑野智美のこと■安部元首相の死にたいして、高市早苗さんの決意を取り上げた記事がありました。スポーツ報知からです。――「安倍元総理が他界されたという現実を受け入れるまでには大変な苦痛を伴いましたが、今後は、多くの同志議員と力を合わせて、安倍元総理の御遺志を引き継ぎ、懸命に働くことで恩返しをしてまいります」と記した。■畑野智美(はたの・ともみ)は『国道沿いのファミレス』(集英社文庫)を読んで以来、気になっている作家です。ただしずっとほんわかとした作品ばかりで、紹介したい作品とは出逢っていません。もうすぐ『水槽の中』(角川文庫)を読んでみます。40歳を越えた作家の成長を願いながら。■畑野智美のプロフィールは次のとおりです。――1979年生まれ。2010年、「国道沿いのファミレス」で小説すばる新人賞受賞。2011年、同作で小説家デビュー。2013年、『海の見える街』で吉川英治文学新人賞候補。2014年、『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞候補。■新人作家にとって、吉川英治文学新人賞受賞がステータスになっています。がんばれ、畑野智美。山本藤光
2022年07月14日
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220713:ロアルド・ダール『少年』がいい■第104回全国高等学校野球選手権千葉大会1回戦が11日行われ、茂原市・長生の森野球場では、わせがくが千葉学芸に0-82の5回コールドで敗れた。以上はFull-countのニュースの引用です。このニュースには続きがあります。――田村監督は「この学校の生徒は9割が不登校を経験している。そんな選手たちが笑顔で野球をやってくれたのは教員冥利に尽きます」と打ち明けた。歴史的大敗を喫したが、選手たちは前を向いていた。■「わせがく高等学校」は、悩みを抱えた生徒が集る高校として有名なところです。監督のコメントのとおり、立ち直った生徒たちの笑顔が素敵でした。■ロアルド・ダールは『オズワルド叔父さん』(ハヤカワ文庫)を推薦作としています。しかし昨日読み終えた『少年』(ハヤカワ文庫)も、ダールらしい絶品でした。著者自らの少年時代を、ユーモアあふれる筆運びで描いた作品です。山本藤光
2022年07月13日
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220712:大石直紀『美しい書店のある街で』がいい■虎ノ門ニュースで竹田恒泰さんも、同じことをいっていました。以下、アベマタイムスの引用です。安部元首相の襲撃殺害を受けての、識者たちのコメントです。まったく同感です。――『これは民主主義に対する挑戦だ』っていう異口同音にみんながいったっていうこと自体が、こんな危機のときに自分の頭を使わずにパターン認識で決まった言葉を人から借りてきて喋るっていう。それが日本の一番のインテリ層、有識者層である。これはもう日本の最大の弱み。平和ボケそのもの」■大石直紀(おおいし・なおき)は、『パレスチナから来た少女』(光文社文庫)を推薦しています。最近文庫化された『美しい書店のある街で』『物語の生まれた街角で』(ともに光文社文庫)は、「京都本大賞」を受賞した作者ならではの、味わい深いミステリーです。人情ミステリーとくくってもよい、新しさを感じさせてくれました。■大石直紀のプロフィールは次のとおりです。――1958年生まれ。1999年、「パレスチナから来た少女」で日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビューした。2003年には「テロリストが夢見た桜」で小学館文庫小説賞を受賞、2006年には「オブリビオン〜忘却」で横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞を受賞した。山本藤光
2022年07月12日
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220711:インドリダソンにハズレなし■前評判どおりの結果になり、安堵しています。以下、ヤフーニュースより。――改選55議席の自民は63議席に達し、単独でも改選過半数を確保する大勝を収めた。与党に日本維新の会、国民民主党、憲法改正に前向きな無所属を加えた「改憲勢力」が、改憲の発議に必要な3分の2(166議席)の維持に必要な82議席以上を獲得した。■アーナルデュル・インドリダソンには、ハズレがありません。ちょうどR・D・ウィングフィールド(推薦作『クリスマスのフロスト』創元推理文庫)にはまったときみたいに、出る作品をまちかねて読みつないでいます。現状では推薦作を『湿地』(創元推理文庫、柳沢由実子訳)としています。ところが次作『緑衣の女』『声』『湖の男』(いずれも創元推理文庫、柳沢由実子訳)もすばらしい作品でした。現在第5作『厳寒の町』を待機本コーナーにおいています。■インドリダソンのプロフィールは次のとおりです。――1961年生まれのアイスランドの推理作家。1997年、処女作 『Sons of Dust』(日本では未翻訳)を発表。日本では2012年に『湿地』が初翻訳。以降、『緑衣の女』で、北ヨーロッパで最も優れたミステリに贈られるガラスの鍵賞を2年連続で受賞する。『緑衣の女』で英国推理作家協会が贈るCWA賞のゴールド・ダガー賞(最優秀長編賞)を、『声』でマルティン・ベック賞を受賞する。山本藤光
2022年07月11日
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220710:河野多恵子のこと■ロシアのウクライナ侵攻後、初めてとなる主要20カ国・地域(G20)の外相会合が7日、インドネシアのバリ島でおこなわれました。ここにはロシアも参加しています。しかし日本を含むG7各国は夕食会には参加しませんでした。社交の場で、ロシアとの同席は避けるべきとの判断です。主要テーマは食糧危機ですが、おそらく収穫はないでしょう。■昨日ここまで書いて、朝のニュースをみました。露中VS日米欧の構図が鮮明となり、共同声明すら出せませんでした。国連同様もういらない集まりです。■河野多恵子は『後日の話』 (文春文庫)を推薦作としています。河野多恵子の簡単なプロフィールと、河野多恵子について書かれた著作を紹介します。――1926~2015年。1961年「幼児狩り」で注目され、1963年「蟹」で芥川賞を受賞する。――秋山駿:作家と作品(小沢書店)――黒井千次:小説家の時計(構想社)――河野多恵子(文藝春秋編「青春の一冊」文春文庫プラス)――「現代文学」月報集(講談社文芸文庫)――国文学:現代作家110人の文体(1978年11月増刊号)――知っ得:現代の作家ガイド100(学燈社)――知っ得:現代作家便覧(学燈社)――鈴木健次インタビュー集:作家の透視図(メデアパル)――ダ・ヴィンチ2015.04追悼記事――百目鬼恭三郎:現代の作家一〇一人(新潮社)――福田和也:作家の値うち(飛鳥新社)――文藝春秋編:私たちが生きた20世紀(上)(文春文庫)――毎日新聞社学芸部:私の小説作法(雪華社)山本藤光
2022年07月10日
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220709:今村夏子『むらさきのスカートの女』読むぞ■安部元首相が、暴漢の凶弾で命を落としました。日本だけではなく、世界を牽引した偉大な政治家でした。。対中国、対韓国の暴挙に、きっぱりとノーを突きつけられる政治家でした。石原慎太郎さんにつづき、日本国の未来を、ずっと考えつづけてきた偉人が、また一人消えてしまいました。心からご冥福をお祈り申し上げます。■今村夏子(いまむら・なつこ)は『こちらあみ子』(ちくま文庫)を読んだだけです。今度文庫化された芥川賞受賞作『むらさきのスカートの女』(朝日文庫)を読むことにしました。今村夏子が一時休筆していました。しかし再起後の筆運びは順調のようです。■今村夏子のプロフィールは次のとおりです。――1980念生まれ。「あたらしい娘」が2010年、太宰治賞を受賞した[5]。同作を改題した「こちらあみ子」と新作中篇「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』(筑摩書房)で、2011年に三島由紀夫賞受賞。2014年刊の『こちらあみ子』ちくま文庫版に新作「チズさん」が併録されたが、それ以外に作品の発表はなく、半引退状態となっていた。2016年、「あひる」を発表し、芥川龍之介賞候補に挙がった。同作を収録した短篇集『あひる』で、河合隼雄物語賞受賞。2017年、『星の子』で芥川賞候補[3]、野間文芸新人賞受賞。2019年、『むらさきのスカートの女』で芥川賞を受賞。山本藤光
2022年07月09日
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220708:李琴峰『ポラリスが降り注ぐ夜』文庫に■李琴峰(り・ことみ)は、芥川賞受賞作『彼岸花が咲く島』(文藝春秋)を読んでいます。今度、短編集『ポラリスが降り注ぐ夜』(ちくま文庫)が文庫になりました。期待の作家なので、読んでみたいと思います。■李琴峰のプロフィールは次のとおりです。――1989年生まれ。台湾出身。2017年、初めて日本語で書いた小説『独舞』(のち『独り舞』に改題)で群像新人文学賞優秀作を受賞し、作家デビュー。同作は、通勤電車の中で浮かび上がった「死ぬ」という一語が創作のきっかけだったという。『独り舞』台湾版は自訳で刊行(2019年、聯合文學出版社)。2018年10月1日、日本の永住権を取得した。2019年、『五つ数えれば三日月が』で第161回芥川龍之介賞候補。同作は後に単行本化し、野間文芸新人賞候補となる。2021年、『ポラリスが降り注ぐ夜』で芸術選奨新人賞を受賞。同年、『彼岸花が咲く島』で三島由紀夫賞候補、芥川龍之介賞受賞。山本藤光
2022年07月08日
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220707:昨日買った本■元気をもらえる動画があります。「全日本O-70選手権」と入力してください。70歳以上の選手で構成される、サッカーの決勝戦の動画です。きびきびした動きに驚きました。この動画の再生回数は40万。中国でも、大いに話題になっているようです。■昨日買い求めた新刊文庫です。楽しみなのは、ガルシア・マルケス中短篇傑作選、ナボコフ『ディフェンス』、伊与原新『フクロウ准教授の午睡』です。川越宗一『熱源』は「山本藤光の文庫で読む500+α」で紹介済みです。ポプラ文庫 伊吹有喜:なでしこ物語天の花ポプラ文庫 藤岡陽子:跳べ暁河出文庫 ガルシア・マルケス中短篇傑作選河出文庫 ナボコフ:ディフェンス文春文庫 川越宗一:熱源文春文庫 伊与原新:フクロウ准教授の午睡飛鳥新社 百田尚樹:禁断の中国史山本藤光
2022年07月07日
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220706:深緑野分『スタッフロール』読むぞ■日本にいる中国人はすべてがスパイになり得る。こんな怖ろしいニュースがありました。記事(47NEWS)の見出しだけコピーします。スパイ活動従事は法律で決められており、絶対に断れないのです。――成績トップだった中国人留学生は、母国の“依頼”を断れずスパイ活動の「末端」に転落した 夢を持つ若者を引き込む中国軍の情報活動 日本へのサイバー攻撃関与の疑いで国際手配へ■深緑野分(ふかみどり・のわけ)は『オーブランの少女』(創元推理文庫)、『戦場のコックたち』(創元推理文庫)、『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)と読みつないできました。本日から直木賞候補作の『スタッフロール』(文藝春秋)を読み始めます。現状では『ベルリンは晴れているか』が一押しです。■深緑野分のプロフィールを紹介しておきます。――1983年生まれ。2010年、短編「オーブランの少女」で東京創元社主催ので佳作に入選し、作家デビュー。2016年、『戦場のコックたち』で第154回直木三十五賞候補[8]、第18回大藪春彦賞候補[9]、2016年本屋大賞第7位。。2019年、『ベルリンは晴れているか』で直木賞候補[、大藪春彦賞候補[、2019年本屋大賞第3位。2022年、『スタッフロール』で直木賞候補。山本藤光
2022年07月06日
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220705:根本昌夫『実践 小説教室』がいい■産経新聞が伝えていました。――参政党は国政に議席を有しない政治団体でメディアが報じる機会は少ないが、各地で黒山の人だかりができ、既存政党への不満の受け皿になりつつある。■根本昌夫(ねもと・まさお)は、教え子の若竹千佐子(おらおらでひとりいぐも)と石井遊佳(百年泥)が芥川賞を同時受賞したときの先生として一躍有名になりました。そのために『実践 小説教室・伝える、揺さぶる基本メソッド』(PHP新書)はまったく入手できなくなりました。そんなおり河出書房新社が『実践 小説教室・伝える、揺さぶる基本メソッド』の単行本を刊行してくれました。2018年のことです。やっと長い順番待ちだった本書を、先週から読み始めました。これまでにたくさんの小説の書き方本を、読んできました。まだ半分ですが、本書は絶品です。もっと若いときに、読みたかったと思ったほどです。山本藤光
2022年07月05日
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220704:「文豪ナビ」(新潮文庫)がいい■経済学者の高橋洋一さんのツイッターを、東スポWEBが伝えていました。以下そのコピーです。ひどいねつ造です。――テレ朝のグラフは経済産業省が発表した電気の使用割合のグラフの「テレビ・DVD」の項目がなくなっていた。経産省のグラフでは「テレビ・DVD」の使用量は8・2%と全体の4番目という大きな数字を示していただけに、ネット上ではテレビ局の都合のいいように加工したとして「捏造だ」「悪質」など炎上する騒ぎに。■新潮文庫の「文豪ナビ」は、いつでも取り出せる書棚においています。先月読み終えた藤沢周平を含めると、ちょうど10冊になります。その他の既刊の著作は、次のとおりです。川端康成、芥川龍之介、太宰治、谷崎潤一郎、夏目漱石、三島由紀夫、山本周五郎、池波正太郎、司馬遼太郎。女流作家の不在と安部公房、大江健三郎、村上春樹などがないことが気になります。山本藤光
2022年07月04日
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220703:呉勝浩『爆弾』読むぞ■呉勝浩(ご・かつひろ)は注目している作家です。今回、直木賞候補作の『爆弾』(講談社)を買い求めてきました。講談社が早くから推奨している作家で「IN POCKET」(2017年2月号)では、特集を組まれたほどです。そのときは推奨されていた『白い衝動』(講談社文庫)を読みました。若々しさのなかに、荒々しさが潜んだユニークな作家という印象でした。その後、直木賞候補となった『おれたちの歌をうたえ』(文藝春秋)に感動しました。今回の『爆弾』は、直木賞の有力候補と聞いています。とりあえず発表前に読んでおくことにします。■呉勝浩のプロフィールは次のとおりです。――1981年生まれ。2015年(平成27年)に『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞し、デビューを果たす。受賞当時のペンネームは「檎克比朗」であったが、「読みづらい、書きづらい、覚えにくい」との指摘があり、以降は「呉勝浩」の名義で活動する。コールセンターの管理者として勤務しながら、3日ある週休を執筆活動に充てている。2018年(平成30年)、『白い衝動』で第20回大藪春彦賞を受賞した。2020年(令和2年)には、『スワン』で第41回吉川英治文学新人賞と第73回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門を受賞した。2021年(令和3年)、『おれたちの歌をうたえ』で第165回直木三十五賞候補。(ウィキペディア)山本藤光
2022年07月03日
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220702:ドナルド・キーン『石川啄木』文庫に■第100回箱根駅伝は、関西の大学にも出場資格が与えられます。秋の予選会には、関西の大学も参加します。しかし関西の大学が出場資格を得るのは、とてつもなく難しいようです。現時点の持ちタイムでは、関西勢の可能性はゼロとのことです。■ドナルド・キーンの著作が文庫になりました。前回は『正岡子規』(新潮文庫)で、今回は『石川啄木』(新潮文庫)でした。外国人の日本文学者がこの世界に踏み込むのは、並大抵のものではありません。2作品とも「ドナルド・キーン著作集」で読んでいますが、文庫化されたので再読したいと思います。山本藤光
2022年07月02日
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220701:西村賢太さんのこと■電気代が値上げになります。原発の再稼働はしない。石炭の火力発電は自粛。これでは安定した電気はつくれません。政府はエネルギー政策に、しっかりとした道筋をつけるべきです。電気料金の値上げは、政府の無策がもたらしたものです。■西村賢太(にしむら・けんた)さんが亡くなって、4ヶ月になります。その追悼を特集した「本の雑誌」6月号を舐めるように読破しました。残念で仕方がない作家でした。山本藤光の文庫で読む500+αでは『暗渠の宿』(新潮文庫)を紹介しています。「本の雑誌」の特集を読んで、もっとほかの作品にも触れるべきだと思いました。■西村賢太さんのプロフィールは次のとおりです。――1967~2022。2003年夏、同人雑誌『煉瓦』に参加して小説を書き始める。2004年、『煉瓦』第30号(同年7月)に発表した「けがれなき酒のへど」が『文學界』12月号に転載され、同誌の下半期同人雑誌優秀作に選出される。同年に『煉瓦』を退会。2006年、「どうで死ぬ身の一踊り」で第134回芥川賞候補、「一夜」で第32回川端康成文学賞候補、『どうで死ぬ身の一踊り』で第19回三島由紀夫賞候補となる。2007年、『暗渠の宿』で第29回野間文芸新人賞受賞。2008年、「小銭をかぞえる」で第138回芥川賞候補。2009年、「廃疾かかえて」で第35回川端康成文学賞候補。2011年、「苦役列車」で第144回芥川賞受賞(ウィキペディア)山本藤光
2022年07月01日
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220630:豪華な作家が肉声で語る『カセット文芸講座・日本の近代文学』(全12巻、C・Bエンタープライズ)を持っています。しかし最近はカセットで視聴できる機材がなく、ずっと押し入れの奥にしまい込んでいました。どこかの出版社で、CD復刊していただけないものでしょうか。調べたら東京のこの会社は、なくなっているようなのですが。とにかく豪華な作家たちの肉声に、触れることができます。各巻は次のとおりです。01.吉村昭が語る森鴎外/竹西寛子が語る樋口一葉02.加賀乙彦が語る島崎藤村/津島佑子が語る泉鏡花03.大庭みな子が語る与謝野晶子/大岡信が語る北原白秋04.黒井千次が語る石川啄木/小田切進が語る夏目漱石05.加藤周一が語る永井荷風/中村真一郎が語る谷崎潤一郎06.三田誠広が語る武者小路実篤/大江健三郎が語る志賀直哉07.大庭みな子が語る有島武郎/加賀乙彦が語る室生犀星08.中村真一郎が語る萩原朔太郎/遠藤周作が語る芥川龍之介09.井上靖が語る川端康成/小川国夫が語る梶井基次郎10.黒井千次が語る宮沢賢治/三浦哲郎が語る井伏鱒二11.吉村昭が語る林芙美子/加藤周一が語る堀辰雄12.大岡信が語る中原中也/野坂昭如が語る太宰治山本藤光
2022年06月30日
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220629:辻村深月『ツナグ』続刊でた■「NHK100分de名著」の安部公房『砂の女』4回目を見終わりました。いちばん好きな小説なので、完璧に読みこなしていると思っていました。ところが教えられるところが、たくさんありました。素晴らしい番組だと思います。次回は「太平記」です。テキストを買い求めて、勉強します。■映画化されたので、ご覧になった方もいるかもしれません。辻村深月(つじむら・みづき)『ツナグ』(新潮文庫)の続刊『ツナグ・想い人の心得』(新潮文庫)が店頭にならびました。個人的には、こちらの作品の方が好きです。未読の方はぜひ最初の文庫から読んでください。辻村深月は『島はぼくらと』(講談社文庫)と『凍りのくじら』(講談社文庫)を紹介しています。3作品を選ぶとなると、『ツナグ』シリーズになります。山本藤光
2022年06月29日
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220628:西條奈加『金春屋ゴメス』再発刊■大相撲名古屋場所がはじまります。注目は不祥事で三段目まで番付を下げた朝乃山の1年振りの土俵です。そんな朝乃山の記事がありました。以下、毎日新聞からです。――厳しい番付社会の大相撲で、大関経験者とはいえ幕下以下になれば高砂部屋では掃除など雑用もしているという。反省、反省の毎日を過ごし、ふがいない気持ちを乗り越え、稽古に打ち込んできた。■西條奈加(さいじょう・なか)の直木賞受賞作『心淋し川』(集英社)は見事な作品でした。しかし個人的には、デビュー作『金春屋ゴメス』(新潮文庫)の方が好きです。本書は単行本で読みましたが、文庫が入手できませんでした。したがって書評の発信は見送っていました。それが昨日、再刊(新潮文庫NEX)されました。もちろん買ってきました。再読してから、書評を書きたいと思います。■西條奈加のプロフィールは次のとおりです。――1964年生まれ。2005年、『金春屋ゴメス』が日本ファンタジーノベル大賞大賞を受賞しデビューする。2012年、『涅槃の雪』で中山義秀文学賞を受賞。2015年、『まるまるの毬』で吉川英治文学新人賞を受賞。2021年、『心淋し川』で第164回直木三十五賞を受賞。山本藤光
2022年06月28日
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220627:中島京子『夢見る帝国図書館』がいい■参議院選挙結果次第で、社民党は単なる政治団体に格下げされるかもしれません。そんなおり、福島党首の声が掲載されていました。スポーツ報知の記事からです。――「党がなくなることは考えないようにしています。伸びるしかないから。(党が)ニュースになるのは悪くないし、けなされてもいい。大変だから助けて、と。この政党がなくなるのは困る、と思ってもらいたいです」――ほとんどの有権者は、なくなっては困るなんて思っていません。■中島京子は『FUTON』(講談社文庫)を推薦作として紹介しています。本書は著者のデビュー作です。それ以来ずっと、中島作品を読み続けてきました。そして直木賞受賞。わがことのように喜んだものです。昨日読み終えた、著者最新文庫『夢見る帝国図書館』(文春文庫)がこれまたいい。中島京子にハズレなし。■中島京子のプロフィールは次のとおりです。――1964年生まれ。2003年、『FUTON』で小説家デビュー。同作が野間文芸新人賞候補となる。2006年、『イトウの恋』で吉川英治文学新人賞候補。2007年、『均ちゃんの失踪』で吉川英治文学新人賞候補。2008年、『冠・婚・葬・祭』で吉川英治文学新人賞候補。2010年、『小さいおうち』で直木三十五賞受賞。2014年、『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞受賞。2015年、『かたづの!』で河合隼雄物語賞・歴史時代作家クラブ作品賞・柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞。『長いお別れ』で中央公論文芸賞・日本医療小説大賞をそれぞれ受賞。2020年、『夢見る帝国図書館』で紫式部文学賞を受賞。2022年、『ムーンライト・イン』『やさしい猫』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。山本藤光
2022年06月27日
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220626:門田隆将『疫病2020』の文庫化待ち■門田隆将のツイッターを引いておきます。まったく同感です。――玉木雄一郎氏が「やめた方がいいと思います。ポイント還元は民間に任せて国は税の還付か現金給付をして下さい。そもそも今国がやるべきは節電のお願いではなく電力の安定供給の確保です。節電より発電」と。ご尤も。一銭たりともお金を出したくない財務省に踊らされる"亡国政権"はとにかく退場を。■門田隆将は『死の淵を見た男』(角川文庫)を「山本藤光の文庫で読む500+α」で紹介しています。『疫病2020』(産経新聞社)も捨てがたいのですが、文庫化されてから紹介することにします。山本藤光
2022年06月26日
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220625:丸山健二のこと■中国は今月末のNATO会議に参加する日本、韓国などに向けて、次のような見出しの記事を中央日報に掲載しました。――韓日のNATO参加巡り…中国「アジア太平洋地域は北大西洋ではない」■笑ってしまうのは、記事の中味のほうです。引用しておきます。おまえがいうなっちゅうの。――「中国は国家間の発展関係は世界平和と安定に寄与するべきで、第三者を狙ったり第三者の利益を害してはいけないと一貫して考えてきた」■丸山健二の新作がならんでいるのを。久しくみていません。もう80歳に近い年齢です。ムリもないかもしれません。丸山健二は『夏の流れ』(講談社文芸文庫)を推薦作にしています。若いころは、丸山作品の追っかけをやっていました。今は少し寂しいですが、近いうちに未読作品を手にしたいと思っています。■丸山健二のプロフィールは次のとおりです。――1943年生まれ。第23回文学界新人賞を受賞した小説「夏の流れ」が、1967年の第56回芥川賞を受賞。その後1973年「雨のドラゴン」、1976年「火山の歌」がそれぞれ第9回、第12回谷崎潤一郎賞候補作、1987年「月に泣く」が第14回川端康成文学賞候補作となったが、本人曰く「芥川賞受賞の際の騒ぎが不快だった」ことを理由に賞はすべて辞退している。山本藤光
2022年06月25日
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220624:綿谷りさ『生のみ生のまま』文庫に■参議院選挙の最大のポイントは、自衛隊を憲法に明記することを認める、4党の当選者数にあります。何としてでも、4党にがんばってもらいたいと思います。以下、毎日新聞のニュースです。――自民党は憲法9条への自衛隊明記や緊急事態条項の創設を含む4項目の条文イメージを掲げる。改憲に前向きな自民、公明、日本維新の会、国民民主の「改憲4党」が憲法改正の発議に必要な3分の2の議席(166議席)を得られるかが焦点で、4党が3分の2以上の議席を獲得するには計83議席を得る必要がある。■綿谷りさ(わたや・りさ)は『蹴りたい背中』(河出文庫)を、推薦作として紹介しています。著者が17歳でデビューして以来の、おつきあいとなります。成熟した著者が、衝撃的な作品を発表しました。それがやっと文庫化されました。『生のみ生のまま』(上下巻、集英社文庫)がそれです。帯には「女性同士の性愛関係を描きながら、他ならぬその特別な愛を追求する小説である」とあります。ご堪能ください。■綿谷りさのプロフィールは次のとおりです。――1984年生まれ。高校在学中に「インストール」で文藝賞受賞。受賞当時17歳。2003年『蹴りたい背中』で野間文芸新人賞の候補となり、2004年に同作品で芥川賞受賞。当時19歳。2010年、『勝手にふるえてろ』が織田作之助賞大賞候補。2012年、『かわいそうだね?』で大江健三郎賞を受賞。同年、京都市芸術新人賞を受賞。2019年、『生のみ生のままで』で島清恋愛文学賞を受賞。山本藤光
2022年06月24日
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220623:窪美澄『夜に星を放つ』直木賞に期待■参議院選挙の公示がなされました。自民党の圧勝がささやかれています。野党があまりにもふがいないので、仕方がないのかもしれません。岸田政権はもっと憲法改正と国防を語ってもらいたいと思います。安倍晋三、高市早苗のように、きっぱりと。■窪美澄(くぼ・みすみ)は『ふがいない僕は空を見た』(新潮文庫)を推薦作としています。最新作『夜に星を放つ』(文藝春秋)が直木賞候補になっています。文庫化されたら、紹介したいと思っていた作品です。受賞を大いに期待しています。■窪美澄のプロフィールをウィキペディアから引いておきます。――1965年生まれ。2009年「ミクマリ」でR-18文学賞大賞を受賞し小説家デビュー。2011年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』(新潮社)で山本周五郎賞受賞、本屋大賞第2位[2]。同作はタナダユキ監督により映画化され、トロント国際映画祭に出品された。2012年、『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞受賞。2018年、『じっと手を見る』で直木賞候補。2019年、『トリニティ』で直木賞候補、織田作之助賞受賞[6]。2022年、『夜に星を放つ』で直木賞候補。山本藤光
2022年06月23日
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220622:深緑野分『スタッフロール』に期待■深緑野分(ふかみどり・のわけ)は、ずっとアタリの作品ばかりでした。デビュー作『オーブランの少女』(創元推理文庫)、『戦場のコックたち』(創元推理文庫)に続いて、『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)も堪能しました。今、直木賞候補作『スタッフロール』(文藝春秋)を読み始めています。今回も期待大です。■著者のプロフィールを牽いておきます。ウィキペディアより。【深緑野分】1983年生まれ。2010年、短編「オーブランの少女」で東京創元社主催で佳作に入選し、作家デビュー。2016年、『戦場のコックたち』で直木賞候補、大藪春彦賞候補[、2016年本屋大賞第7位。。2019年、『ベルリンは晴れているか』で直木賞候補、大藪春彦賞候補、2019年本屋大賞第3位。2022年、『スタッフロール』で直木賞候補。山本藤光
2022年06月22日
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220621:東野圭吾『秘密』の長い書評■東野圭吾については『秘密』(文春文庫)を取り上げて、長い書評を書いています。あまりにも長いので、3回にわけて掲載しました。一挙公開したいと思います。■東野圭吾『秘密』(文春文庫)その1妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な〈秘密〉の生活が始まった。映画「秘密」の原作であり、98年度のベストミステリーとして話題をさらった長篇。(「BOOK」データベースより)◎長い長い『秘密』の舞台裏に挑む これから紹介するのは、私の最長の書評です。私はこれを「ミステリーZ」(2001年)というメルマガに連載しました。以下連載したものを引用させていただきます。1.東野作品には、実体験がふんだんに反映されている話題の作品『秘密』が文庫化されました。これを機会に何回かに分けて、『秘密』(文春文庫)の「秘密」に迫ってみたいと思います。すでに読んでしまった読者は多いと思いますが、東野圭吾をもっと深く知る一助になれば幸いです。断っておきますが、私は著者の追っかけではありません。読んだ作品もかぎられています。だから全作品を通しての作品論は書けません。 書棚をあさって出てきた初期作品は、『放課後』『卒業・雪月花殺人ゲーム』『学生街の殺人』(いずれも講談社文庫)と『白馬山荘殺人事件』(光文社文庫)だけでした。あとは単行本の最近の作品『白夜行』(集英社1999年)『片想い』(文藝春秋2001年3月)などです。こんな乏しい東野圭吾の読書体験で、『秘密』を語るのはおこがましいのですけれど、どうしても本質に迫ってみたい作品が『秘密』でした。 『秘密』の初出は、1998年9月文藝春秋刊です。文庫化されるまでに約3年を要しています。それだけ単行本が売れていたのでしょう。さもなければ、もっと早くに文庫化されているはずです。ちなみに本日、東京堂書店で確認してきました。書棚にあったのは、2001年2月印刷の28刷でした。東京堂書店は、神田の古本屋街の裏通りにあり、私の知っているなかでは品揃え、書店としての美学・哲学などの面でナンバーワンの書店です。書泉グランデの真裏に位置していますので、一度のぞいてみていただきたいと思います。これぞ書店とうならせられるはずです。 話が横道にそれました。本題に入ります。『秘密』には東野圭吾の人生の断片が、いくつも埋め込まれています。東野圭吾のプロフィールを知るには、著者自身が書いているホームページを見ることをお薦めします。それを作品に重ねると、『秘密』のなかから著者自身の思いが見えてきます。 東野自身が書いたプロフィールを眺めてみます(文中のかぎカッコ内は引用部分)。東野圭吾は1958年「大阪市生野区にある、しけた時計メガネ貴金属の小売店で、3人姉弟の末っ子として生まれ」ました。 1962年自宅から1キロほど離れた公園で迷子になります。「迷子になった公園は、1999年発表の『白夜行』の冒頭に登場」します。両親は大相撲に夢中になり、気がつかなかったようです。1964年「大阪市立小路小学校に入学します。(中略)この年、東京オリンピックがあったはずだ」。「給食については苦い思い出が多々ある」。詳しく知りたい方は『あの頃ぼくらはアホでした』(集英社文庫)を読んで下さい」 プロフィールは、実にていねいに書かれています。コピーをとったら、A4サイズで5枚にもなりました。ここまでの引用は、まだ1枚目のコピーの半分だけです。東野圭吾は自分の過去を、重要なファクターとして描きます。そのあたりのことを、著者自身はつぎのように語っています。――作品には今までの生き方や、経験がかなり反映されています。意識の中にある何らかの記憶なり、想い出なりに基づいて、ある部分を引き出し、拡大して、という作業で作品を仕上げることもありますし。無意識のうちに、過去の自分も投影されていると思いますし。作品と自分の経験が無関係ですとは決して言えないですね。(「ダ・ヴィンチ」2000年2月号「『秘密』がおしえるココロのヒミツ」栗田昌裕との対談) 東野自身の書いたプロフィールのなかからも、前記のごとく実体験と作品の関係が2つもでてきます。次回は『秘密』のなかから、東野圭吾の過去と重なる部分を拾ってみたいと思います。東野の人生がどう作品に反映されているのか。そのあたりを検証してみますのでお楽しみに。 (2009.06.11)2.とことん「時計」にこだわりを示す『秘密』松野時計店、懐中時計、壁時計、腕時計、札幌の時計台と、『秘密』のなかには数多くの「時計」が登場します。これは東野自身が、時計メガネ貴金属の小売店で生まれたためだけではありません。東野はとことん「時計」にたいするこだわりをもっています。東野自身の「時計」に関するエピソードを紹介しましょう。 東野は少なくとも1999年夏までは、文字盤の大きなクオーツの腕時計を愛用しています。就職祝に父親からもらったものです。ブランド品ではありません。(「週刊文春」1999年8月5日号「家の履歴書」を参照しました) 今でも愛用しているのか否かはわかりません。なぜなら東野圭吾の写真は、いずれも長袖シャツを着用していて、袖口が確認できないからです。どなたか腕時計が写っている写真をおもちでしたら、教えていただきたいと思います。私はいまだに、文字盤の大きなクオーツを身につけていると思っています。 主人公・平介は、もちろん腕時計くらいはしています。しかし、平介が腕時計に目をやることはあまりありません。どうして、と思う場面でも腕時計には目をやりません。作品のなかで、平介が腕時計を見るのは2回だけです。それも建物や食べ物に対するディテールに比べると、腕時計に関する説明はあまりにもそっけないものです。まるで詳細を書くことを避けているように、投げやりな記述になっています。 ――彼(平介)は腕時計を見た。午前十一時を回ったところだった。今から急いで会社に戻っても、すぐに昼休みだ。(本文174ページより)――翌日、平介は帰りが少し遅くなった。腕時計の針は八時十五分を指している。(本文209ページより) 腕時計ではなく、壁時計に目をやる場面は何度かあります。あるいは、時間の確認をした対象を明確にしないままの記述もあります。壁時計についても、ディテールは明確にされていません。東野が大切にしているのは、過去の思い出が染み込んだ時計のみのようです。あとは時計は単なる時を刻む道具として、大きな価値を認めていないといえます。――祭壇をセットし終えると、彼(平介)は喪服から普段着に着替えた。壁の時計は午後五時三十五分を指している。(本文より)――時刻は午後二時を少し回っていた。パンフレットによれば文化祭は五時までだ。彼は急いで支度を始めた。(本文より)――受話器を置いた平介の胃袋には、しこりのようなものが生じていた。彼は時計を見た。(本文より) いかがでしょうか。他にも目覚まし時計を見たりと、時刻を確認する場面はあります。しかしいずれも、前記の引用部分と差異はありません。時計に関しては、東野らしくないあっさりし過ぎの表現しか見つからないのです。 ところが懐中時計については、とことんこだわりを示します。実に詳細な記述がつづきます。これは単に、時を刻むものではないからです。就職祝いに父親からもらった腕時計を、東野は「文字盤の大きな、ブランド品ではない、クオーツ」とディテールを説明していることと考え合わせていただきたいと思います。 東野にとって、思い出につながる時計にこそ価値があるのです。事故を起こしたバス運転手・故梶川の妻は、夫のあとを追うように死亡します。平介は梶川の形見である懐中時計を、孤児・逸美より託されます。――大きさは直径が五センチほどだ。銀色をしている。斜め上に竜頭がついていた。蓋を開けようとした。ところが金具がひっかかっているのか、指先にどんな力を込めても開けられなかった。(本文217ページより) 腕時計や壁時計とは比較にならないほど、詳細を書きこんでいます。さらに「時計」にまつわる、つぎのような場面があります。札幌へ出張した平介は、時間潰しも兼ねて有名な時計台を訪れます。 ――タクシーは間もなく太い道路脇に止まった。なぜこんなところに止まったのだろうと思っていると、「あれです」と運転手が道の反対側を指差した。/「あれか……」平介は苦笑した。たしかに写真などから描いたイメージとは大違いだった。屋根についた、ただの白い洋風家屋といえた。(本文238ページより) 札幌の時計台も、陳腐なものにしか過ぎません。平介に一笑にふされた札幌時計台の描写は、松野時計店のそれと比べると違いは歴然としています。松野時計店や懐中時計については、次回にもっと掘り下げてみたいと思います。(2001.06.30)3.松野時計店は、東野の生家そのもの 遅くなりましたが、『秘密』のストーリーを確認しておきたいと思います。主人公・杉田平介は、自動車部品メーカーに勤務する40歳前の働き盛り。妻・直子と娘・藻奈美に囲まれ、都内のマイホームで幸せに暮しています。そこへ突然の災難がふりかかります。妻と娘がバス事故にまきこまれ、病院へ搬入されるのです。 妻・直子は死亡し、娘・藻奈美だけが奇跡的に一命をとどめます。目覚めた藻奈美は、平介に自分は直子だと主張します。肉体は娘のものですが、人格は妻・直子のものなのです。主人公・平介の奇妙な日常がはじまります。 このなかで生家の時計メガネ貴金属店は、重要な役割として登場します。 ――出張を明日に控えた木曜日、平介は定時で会社を抜けさせてもらい、その足で荻窪に行った。そこにある一軒の時計屋に用があった。(本文より) 時計屋の場面は、作品のなかで2回使われています。背中を丸めた古臭い松野時計店の主人は、まぎれもなく東野の父親そのものです。この時計店の主人は、やがて『秘密』の作品全体を左右する告白をおこないます。詳細については、ネタばらしになりますのでふれません。時計店の主人が、秘密を告白する場面は圧巻です。 東野作品は、常に読者を意識して描かれています。その根底には、客商売のプロだった父親の姿があります。プロの小説家としての東野圭吾は、父親を尊敬しています。客商売にたいする父親の思想が、読者のためにというプロ作家の哲学となって生きているのです。東野自身に語っていただきます。――落ち着かない食事だったですよ。箸をとって、さあ一口食べようとすると、扉がギッと開く。今みたいに電子レンジなんかなかった時代ですから、親父はしょっちゅう冷めた味噌汁と御飯。かわいそうでしたけれど、客商売だったですからねぇ。(「週刊文春」1999年8月5日号「家の履歴書」より) 平介が預かった懐中時計をめぐって、松野時計店の主人・浩三と交わす会話を紹介します。――昔よく出回った懐中時計だよ。しかも何度か修理している。悪いけど、骨董的な価値はないねえ」「そうなんですか……」「だけど、別の価値はあるよ。これでなきゃだめだっていう人もいるかもしれない」「どういうことですか?」「おまけが付いているんだよ、ほら」。浩三は立ち上がり、蓋を開けたまま懐中時計を平介の前に置いた。(本文より) 最近の時計は、使い捨てみたいに扱われています。東野圭吾にはそれが許せないのです。時計は時を刻むものですが、同時に1人の人生の生きざまをも刻んでいます。東野圭吾はそのことを実感しています。お客さんの思い出のときを再生する父親。時計は未来に向って進みますが、それは持ち主の歴史を内包してのものなのです。 松野浩三が告げた「おまけ」とはなにか。ここでは形としての「おまけ」がついているけれど、懐中時計にはすべからく見えない「おまけ」がついているんだよ。東野はそう信じているのでしょう。そうでなければ、腕時計や壁時計との温度差が説明できません。(2009.06.13)4.異なる二つの「実験」 東野圭吾は、大阪府立大学工学部を卒業しています。その後、自動車部品メーカーに勤めました。このときの体験も『秘密』に色濃く投影されています。 東野圭吾は大学時代の「実験」と、社会人になってからの「実験」は180度ちがうといいます。前者は実験によって導かれる結果が、最初からわかっています。わかっている結果どおりになれば、成功なのです。この退屈で単純で偶発性のない実験を、東野は嫌っていました。後者はなにもないところから、試行錯誤のすえになにかを見だす実験です。東野は熱心にとりくんだのは当然のことでしょう。 東野作品は、自動車部品メーカー勤務時代の「実験」に似ています。事実としての社会現象をベースとした、ミステリーは数多くあります。ところが東野はそれを好みません。素材としてあるのは、自分自身の過去の体験。そこから何かを構築するのが東野流なのです。 「実験」に関して、東野を象徴する資料があります。『探偵ガリレオ』(文春文庫、初出文藝春秋1998年)にたいする東野自身のコメントです。 ――他の現象もすべて、一応科学的根拠に基づいて描いたつもりである。ただし実験はしていない。というより、現実問題として実験不可能な現象ばかりを扱っている。物理的に不可能なのではなく、道徳的に不可能なのだ。/実験はできないから、仮にやったとしたらこうなるだろうという予想が、本書の生命である。/たぶん確認実験などは誰にもされないだろうとタカをくくっている。」(「本の話」1998年6月号) 東野作品は、周到に容易された結末に向って書き進められてはいません。ぼんやりと思い描いた結末に向って、試行錯誤をくりかえします。社会人時代の「実験」と同じ手法で、作品をつむぎだしているのです。 また『秘密』のなかには、多くの「一応科学的根拠に基づいて描いたつもり」を象徴する場面が登場します。下請け会社に関する描写を引用してみましょう。なんのことなのかさっぱりわかりません。ただし『秘密』の構図を際立たせる効果はあります。 ――D型インジェクタというのは、来年本格的にスタートする予定の製品だ。現在はそれを田端製作所で作っている。その試作品を使ってビグッドの研究者たちがテストを繰り返し、最終的な確認を行っているわけだ。」(本文117ページより)(2001.06.30)5.結婚生活への鎮魂歌『秘密』には、もう一つ重要な体験が見え隠れしています。東野圭吾は25歳のときに結婚し、『秘密』の執筆前に離婚しています。その当時のことを、東野自身がつぎのように語っています。 ――たぶん僕のなかで変わったものがあるとすれば、力が抜けたんだと思います。/夫として、妻の気持ちをわかろうというのは必要だと思うんです。でも、難しいですよね。/夫婦という関係を解消してしまったあとのほうが、相手の気持ちが見えてくるというか。一歩下がって見られるようになったというか……。( 「週刊文春」1999年8月5日号「家の履歴書」より) 夫婦の機微をみごとに描きだした『秘密』は、先に引用した言葉とは無縁ではありません。離婚の痛みを、新たなエネルギーにおきかえる。この作品は、東野圭吾の結婚生活への鎮魂歌なのかもしれません。 平介は若さを手に入れた直子に、嫉妬しはじめます。そしてすこしずつ夫婦の亀裂が深まってゆきます。私がもっとも心を動かされた場面があります。ちょっと長くなりますが、引用してみたいと思います。夫婦の危うい機微を、これほどまで的確に描き上げた文章をほかにはしりません。 ――この夜の食事は、直子と結婚して以来最悪の晩餐となった。どちらも一言も口をきかず、ただ黙々と箸を動かした。かって何度か夫婦喧嘩をした時と決定的に違っていたのは、気まずさの底にあるのが怒りではなく悲しみだという点だ。平介は腹を立ててはいなかった。直子と自分との間にある、未来永劫埋まることのない溝の存在を認識し、たまらなく悲しくなっていた。そして同様の思いを彼女も抱いていることは、身体から発せられる雰囲気でわかった。皮肉なことに、こんな時だけ夫婦特有の以心伝心というものが働くのだった。(本文276ページより) おそらくこの文章は、離婚を経験していなければ書けないでしょう。東野自身が書いているように、「相手を一歩下がってみられるようになった」ための所産といえるからです。(2001.07.07)東野圭吾『秘密』(文春文庫)その26.在るべきところへの執着 東野圭吾は「居所」に、とことんこだわります。それは幼いころの境遇と、無縁ではないでしょう。東野には2人の姉がいて、部屋は共同でした。その後、生家は何度も増改築を重ねます。小学校の途中から、姉たちが隣室である和室へと移りました。しかし東野の部屋は、姉たちを越えて階下へと降りる通路でもありました。上の姉が家を出ます。今度は下の姉との共同部屋となりました。 結局、東野は家をでるまで、のんびりと1人部屋で過ごす機会には恵まれませんでした。1浪後に大阪府立大学電気工学科へ入学します。トイレと炊事場が共用の、安アパートに暮すことになります。念願の1人暮しを満喫するには、ほど遠い環境であったわけです。 大学卒業後は、愛知県の自動車部品メーカーの独身寮へはいります。ここでも3DKを3人で分割する、共同生活を余儀なくされました。25歳で結婚。棟続きの社宅へと移りました。東野はいいます。――みんな自分のいちばん落ち着く場所を探しているんでしょうけど、僕自身は大阪のゴミゴミした商店街の、自然も緑もないところで生まれ育っていますから。街の中にいるのが楽なんですよ」( 「週刊文春」1999年8月5日号「家の履歴書」より)「居所」へのこだわりは、『秘密』のなかにも登場します。つぎに引用するのは、妻の直子のセリフです。直子が示す家への執着はすさまじいものです。これは東野自身の叫びともいえるでしょう。――とにかくね、今買わなきゃ。今買わないと、平ちゃん、永遠に家なんて買えない気がする。永久に借家住まいだよ。そんなのいやでしょ? 自分の家、ほしいでしょ? 欲しかったら買おうよ。すぐ買おうよ」(本文より) 杉田平介のマイホームは、三鷹駅からバスで数分のところにあります。直子にスピッツがほえるように、きゃんきゃんいわれて買った中古住宅です。平介も十分に満足しています。マイホームを象徴する、こんな場面があります。――平介がこの家を気に入った第一の理由も、この広い浴室だったといってもいい。(本文より) 東野圭吾は、ていねいに家の間取りを描きます。これは改装をくりかえした大阪の生家の影響でしょう。こうした描写は、いたるところに認められます。 (2001.07.20) 7.新聞をあまり読まない平介『秘密』は、結末部分が大きな話題になりました。しかし私は、冒頭部分に強い印象を受けています。主人公の杉田平介は、「テレビ」好きとされています。作品のなかに、テレビを観ている場面はふんだんに登場します。ところが「新聞」は、あまり出てきません。私の疑問は、その点にあります。 まず作品の冒頭を引いてみましょう。――予感めいたものなど、何ひとつなかった。/この日夜勤明けで、午前八時ちょうどに帰宅した平介は、四畳半の和室に入るなりテレビのスイッチを入れた。それは昨日の相撲の結果を知りたかったからにほかならなかった。」(本文より) 昨日の相撲の結果が知りたいのなら、新聞の方がてっとり早いと思います。それをいつ映るかもしれない、テレビで待ちつづける。これは常識的には、考えにくいことです。新聞を購読していないのだろうか、との疑問がおきました。40歳を目前にした会社員が、新聞をとっていないのは不自然だからです。 私は「新聞」の2文字を、作品のなかに追い求めました。そして発見しました。やはり新聞は購読していたのです。 ――新聞を拾い上げようとして、部屋の隅に押しやられている本やノートに目がいった。(本文126ページ) ただし平介が新聞を読む場面は、全編を通じて2回しか出てきません。それも熱心には読まれていません。 ――彼(平介)はそばにあった新聞を広げた。地価依然上昇という見出しが出ている。だがその記事は読んではいなかった。(本文275ページより) ――食事の後は風呂に入り、その後は新聞を読んだりテレビを見たりして過ごした。(本文381ページ) この引用が、新聞を読む2つの場面なのです。当然、新聞を読んでもおかしくない場面でも、平介は新聞を読みません。つぎの場面はどうでしょうか。私なら「新聞や雑誌」と書く場面なのですが。 ――昼過ぎまで布団の中で雑誌を読み、午後からはゴルフ番組と野球中継を見た。(本文より) 「時計」同様に「新聞」の扱いも貧弱なものです。ところが「新聞」は、重要な場面の小道具として扱われます。あたかも「懐中時計」のような意味合いで。 ――リビングボードを少し前にずらし、壁との隙間にレコーダーとテレフォンピックを押し込めるようにした。さらに隙間が見えないよう、古新聞を積んでおいた。古新聞を処分するのは平介の仕事だ。(本文322ページより) では冒頭部分に戻りましょう。平介は相撲の結果を観るためにつけたテレビから、妻・直子と小学生の娘・藻奈美を乗せたバス事故を知るのです。この時間に「新聞」では事故を知る術はありません。東野圭吾が平介のテレビ好きを強調し過ぎているのは、冒頭部分の矛盾を釈明するためではないでしょうか。(2001.08.05)8.『秘密』のなかの「秘密」『秘密』のなかに、いくつかの「秘密」がでてきます。以下はその場面の引用です。これらを解き明かしてしまうと、完全なネタばらしになってしまいます。だからさらりと整理するにとどめたいと思います。 奇跡的な生還をとげた藻奈美は、平介に「自分は直子である」と告白します。妻でなければ知らないことを、藻奈美の口からつぎつぎに明らかにされます。事態を理解した平介は、そのことを2人だけの「秘密」としなければならないと考えます。 ――どうすればいいかなあ。人にいっても、とても信用してもらえんだろうしなあ。医者にだって、どうすることもできんだろう」/「精神病院に入れられるのがオチでしょうね」/「だろうなあ」平介は腕組みをして、唸った。(本文42ページより) 結局、このことは誰にも明かされない2人だけの「秘密」となりました。2つめの「秘密」は、つぎの場面です。引用文の2人は、平介と直子のことです。――「このテディベアの正体は、二人だけの秘密ね」そういって直子はぬいぐるみを胸に抱きしめた。(本文73ページより) 平介があずかった懐中時計の裏蓋にも、秘密は隠されていました。この「秘密」は物語の展開に重要な意味をもちます。これも詳細は説明できません。 遺族会の集まりでは、つぎの場面がでてきます。これも「秘密」の一種です。 ――幹事の林田が再び立ち上がり、今後の方針などについて話した。さらに、ここでの話し合いの内容については極力口外しないでほしいという注意が添えられた。特にマスコミには気をつけるようにとのことだった。(本文より) 松野時計店の浩三は、平介に物語上最大の秘密の告白をおこないます。その部分だけ引用してみたいと思います。 ――「これねえ、藻奈美ちゃんからは口止めされてたんだけど、やっぱり話しておくよ。あんまりいい話だから」(本文より) 終章に近い部分に、直子と藻奈美の「交換日記」の話がでてきます。これも「秘密」の一形態といえます。さらにこんな場面があります。 ――「お父さん」彼女がいった。「長い間、本当に長い間、お世話になりました」涙声になっていた。/うん、と平介は頷いた。永遠の秘密を認める首肯でもあった。(本文より) 表紙カバーの帯をめくると、下の方から藻奈美の部屋のイラストがあらわれます。このイラストにも、ある「秘密」が隠されています。(2001.08.14)9.飽くなき「笑い」の追求 東野は『秘密』を「自分ではものすごい笑いのつもり」で書いたといいます。ところが「書き上げてみると切ない話」になっていたともいっています。(「東野圭吾が選ぶ笑いの10冊」ダ・ヴィンチ1999年9月号) 実際に、そんな箇所を検証してみたいと思います。その前に東野が選んだ10冊のうち、いくつかを紹介しておきます。井上ひさし『モッキンポット師の後始末』(講談社文庫)群ようこ『無印OL物語』(角川文庫)筒井康隆『日本列島七曲り』(角川書店)清水義範『国語入試問題必勝法』(講談社文庫)阿刀田高『ナポレオン狂』(講談社文庫)「笑い」にこだわる東野らしいラインナップだと思います。本文から「笑い」を意図したと思われる個所を引用してみます。 ――冷蔵庫の中には、ほかにハンバーグとビーフシチューが入っている。明日の朝はハンバーグにしよう、と彼は今から決めていた。――まず味噌汁を啜り、少し迷ってから唐揚げに箸を伸ばした。唐揚げは直子の得意料理であり、平介の大好物でもあった。――プロポーズの言葉は単純に、「結婚してくれ」だった。直子はそれを聞いて、なぜか笑い転げた。そして笑いがおさまった後、「いいよ」と答えたのだった。――彼はポケットからよれよれのハンカチを出し、目を押さえた。洟が出てきたので、鼻の下も拭った。ハンカチはたちまちびしょぬれになった。――「初めて俺が君の部屋へ行った時のことは?」/「覚えている。とっても寒い日だった」/「うん、寒かったな」/「あなた、ズボンを脱いだら、下にパジャマを穿いてた」 平介が時折見せる仕種のなかに、たくさんの「笑い」の種を発見できます。東野が選んだ「笑い」の作品は、いずれも高度な笑いを得意にした作家により書かれたものです。ミステリー作品に散りばめられた「笑い」。東野は不思議な作家です。本来なら「笑い」の部分は、作品のなかで浮いてしまいかねないのですが。 引用文をじっくりと読んでいただきたいと思います。明日の朝食メニューを今から決めてしまう平介。迷ったあげく唐揚げに箸を伸ばす平介。日常のなかのさり気ないひとこまを、東野はあっさり「笑い」の種にしてしまいます。それが巧みであり、作品をひっぱる原動力ともなっているのです。主人公を読者に近づける方法としては、危なっかしい挿話は効果的であるようです。(2001.08.18)10.多用する「対極」 ミステリーにかぎらず多くの作品は、2つの極の微妙なバランスで構成されています。それがミステリーなら、加害者と被害者、追うものと逃げるものなどの形であらわれます。この構図は乱用すると、退屈きわまりないものになってしまいます。「対極」にあるもの同士が、なにかのきっかけで接近しはじめます。ミステリーの面白さはその場面にあります。遠くにあった2つが、なにかのはずみで、しだいに重なりあいます。その妙がミステリーの楽しさなのです。 『秘密』には、たくさんの「対極」が登場します。「夫」と「妻」。平介と直子の取り合わせが究極ですが、バス運転手・梶川と後妻の征子の関係も忘れられません。「親」と「子」、「加害者」と「被害者」、「親会社」と「下請け会社」、「上司」と「部下」、「男の子」と「女の子」、「肉体」と「精神」、「公立の建物」と「安アパート」……数え上げたりキリがありません。 東野はこれらのバランスを重んじ、「対極」をきわだたせるための人物造形を、ていねいにおこないました。登場人物はいちようにやさしく、相手への思いやりがあります。本来なら、プラスとマイナスに働く「対極構造」です。それをけっして、強者と弱者のパターンには落とさないのが東野流なのでしょう。 故バス運転手の妻・征子が、遺族に謝罪する場面があります。平介の隣りにいた藤崎が立ち上がり、「あんたの旦那は人殺しだ」と叫びます。このときに平介はつぎのように考えます。 ――皆がどう思っているのか、平介にはわからなかった。はっきりしていることは、藤崎の台詞によって救われた者など一人もいないということだった。彼が口にしたのは禁句だったのだ。(本文95ページより) 平介は征子にたいしても、同じ被害者じゃないかと思える度量の広さをもっています。この気持ちが「対極」の緩衝材となっています。平介が妻・直子に注ぐ愛情。娘・藻奈美にみせる慈愛。そして平介が周囲の人たちに示すやさしさ。『秘密』は、ほのぼのとさせられるミステリーでもありました。(おわり) 「ミステリーZ」の読者のみなさまへ長い間おつきあいいただきありがとうございます。1冊の本を読み、素人でもこのくらいは読書を広げることができます。雑誌や新聞からの切抜きを作品と重ねて、じっくりと読んでみる。ぜひ試みてください。すごく楽しいです。藤光伸。(補:これは以前つかっていたペンネームです)(山本藤光:2001.08.19初稿、2014.11.29改稿)
2022年06月21日
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220620:田辺聖子のこと■昨日の世紀の一戦は、那須川天心が武尊を破りました。K1好きには、たまらない試合でした。5.6万人も集ったそうです。残念ながら、テレビ放映はなかったようです。■田辺聖子は『今昔まんだら』(角川文庫)と『私的生活・乃里子3部作』(講談社文庫)の2作品を「山本藤光の文庫で読む500+α」に掲載しています。■田辺聖子のプロフィールを引用しておきます。ウィキペディアより――1928-2019年。1956年に上梓した『虹』で大阪市民文芸賞を受賞してからは本格的な作家活動に入り、恋愛をテーマにした小説や大阪弁を用いた一種の方言文学の制作に取り組んだ。1964年に『感傷旅行』で第50回芥川賞に選出され、若手女流作家の寵児となる。以降は人気作家として多くの執筆依頼を受けていくが、純文学の賞である芥川賞の受賞者としての立場を枷に感じ、後年に「直木賞の方が欲しかった」と冗談含みで語っている。1987年の第97回直木賞から2004年第132回まで直木賞の選考委員を務めた。文学仲間の川野彰子への追悼文を寄せたことが縁で、その夫で神戸で医師をしていた川野純夫と知り合う。1966年に後妻として川野と結婚し、36年間連れ添う。田辺のエッセイ等に登場し親しまれた「カモカのおっちゃん」とは、2002年に逝去した川野のことである。■田辺聖子に関する書籍には、次のようなものがあります。――阿川佐和子:あんな作家こんな作家どんな作家(ちくま文庫)――阿刀田高:作家の決断・人生を見きわめた19人の証言(文春新書)――井上ひさし:笑談笑発・井上ひさし対談集(講談社文庫)――大村彦次郎:文壇うたかた物語(ちくま文庫)――佐藤嘉尚:「面白半分」怪人列伝(平凡社新書)――椎名誠選:素敵な活字中毒者(集英社文庫)――知っ得:現代作家便覧(学燈社)――知っ得:現代の作家ガイド100(学燈社)――ダ・ヴィンチ:解体全書Ⅱ(リクルート)――百目鬼恭三郎:現代の作家一〇一人(新潮社)――文藝春秋編:私の死亡記事(文春文庫)――文藝春秋編:私たちが生きた20世紀(上)(文春文庫)――文藝春秋:読書と私(文春文庫)――毎日新聞社学芸部:私の小説作法(雪華社)山本藤光
2022年06月20日
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220619:斎賀秀夫『日本語実力テスト』やっと卒業■日刊ゲンダイの記事です。見出しは次のとおり。――朝日新聞販売所では法律違反の就労が状態化…週40時間以上働く奨学生も【水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇】■朝日新聞はこんなことを書いています。――昨年7月、朝日新聞が電子版「GLOBE+」の記事で、ベトナム人奨学生たちは<1週間28時間までに制限された労働時間の範囲で新聞を配る>と当然のこととして書いたのは、明らかに事実に反している。自らの奨学生制度を正当化したい意図があるのかどうか知らないが、ベトナム人たちの実態が全く伝えられていないお手盛りの記事だ。■毎朝少しずつ、チャレンジしていました。ようやく、最終ページにたどりつきました。ページを進めるたびに情けなくなり、腹立たしくもなりました。よくも難問を集めてくれたものです。斎賀秀夫『日本語実力テスト』(池田書店)には、絶対に手をだしてはいけません。山本藤光
2022年06月19日
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220618:河崎秋子『鯨の岬』読むぞ■鈴木宗男のツイッターの一部です。ウクライナのゼレンスキー大統領に向けたものです。もちろん大炎上しています。「女性自身」の記事より。――《名誉ある撤退は「人の命を守る」上で、極めて大事なことである。また、物価高で世界中が悲鳴を上げていることを考えるべきだ》――これはプーチンに向けるべき言葉だろう。■タイ在住の娘家族が来月来日します。3年ぶりのことです。コロナで足踏み状態でしたが、やっと自由の身になりました。大きくなった孫娘たちに会うのを楽しみにしています。■タイといえば、後記の見出しの食レポが絶品です。末尾の著者名で検索すると読むことができます。――【やりすぎ】タイの串カツ居酒屋が「日本そのもの」すぎて笑うしかない / 生レバーも絶賛販売中だぞ! 亀沢郁奈 2022/06/17――最後は卵かけごはんもでるというから驚きです。■直木賞候補作が決まりました。窪美澄。呉勝浩。深緑野分、河崎秋子の4作品です。今回は驚きました。未読の著者が直木賞候補になる例は、ほとんどありません。しかし、河崎秋子はまったく知らない名前でした。さっそく書店へ行き、昨日発売の河崎秋子『鯨の岬』(集英社文庫)を買い求めました。これからじっくりと品定めをします。山本藤光
2022年06月18日
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220617:鮫島浩『朝日新聞政治部』がいい■ヤフーニュースの引用です。――政府は15日、電力料金の上昇の負担を軽減するため、節電をした家庭や企業にポイントを還元する制度を導入する検討を始めた。電力会社がアプリなどを使って既に実施している還元制度を利用。前年より節電した家庭などにポイントを還元することを想定している。――国の最重要なインフラのことを、おまけですませるとは何と無策。原発の再稼働に舵を切るときです。世界一高い電気料金の件を、まともな施策で対応すべきなのです。■鮫島浩『朝日新聞政治部』(講談社)読了。暴露本かと思って読みました。しかし組織論、ジャナリズム論として、一級品でした。詳しくは書評を執筆しますので、そちらで触れることにします。大スクープをした中間管理職の著者が、お家騒動に巻き込まれて袋だたきにあうといった話でした。お粗末な朝日新聞の体質が、腐臭を放っていました。大企業に勤めるサラリーマンや政治家や官僚には、ぜひ読んでもらいたいと思います。山本藤光
2022年06月17日
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220616:瀬戸内寂聴のこと■TBS NEWS DIGからです。――立憲民主党はさきほど、18歳の学生との飲酒疑惑が浮上し自民党を離党した吉川赳・衆院議員に対する議員辞職勧告決議案を、国会に提出しました。■このニュースにはおまけがあります。――吉川氏の経歴を見ると、大学卒業後、議員秘書の経験しかなく、企業などに就職した経験がない段階で、衆議院議員に立候補し、何度かの落選後、前の自民党議員が準強制性交により議員辞職後、繰り上げ当選した議員だった。前の辞職した議員と似たような問題で、議員辞職に追い込まれている吉川議員も自民党。■瀬戸内寂聴は『奇縁まんだら』(日経文芸文庫、解説:丸谷才一)を推薦作として紹介しています。このシリーズは他に『続・奇縁まんだら』『続の二・奇縁まんだら』『終り・奇縁まんだら』(いずれも日本経済新聞社)の3冊があります。しかし私の知る限り、これらは文庫化されていません。なぜなのでしょうか。■瀬戸内寂聴のプロフィールです。ウィキペディアより。――1922年生まれ。東京女子大学在学中に結婚し、夫の任地北京に同行。1946年に帰国し、夫の教え子と恋に落ち、夫と長女を残し家を出て京都で生活。大翠書院などに勤めながら、初めて書いた小説「ピグマリオンの恋」を福田恆存に送る。1950年に正式な離婚をし、東京へ行き本格的に小説家を目指し、三谷晴美のペンネームで少女小説を投稿し「少女世界」誌に掲載され、三谷佐知子のペンネームで「ひまわり」誌の懸賞小説に入選。1956年、処女作「痛い靴」を「文学者」に発表、同年「女子大生・曲愛玲」で新潮同人雑誌賞を受賞。その受賞第1作「花芯」で、ポルノ小説であるとの批判にさらされ、「子宮作家」とまで呼ばれるようになる。■瀬戸内寂聴に関する著作は、私の蔵書の範囲でつぎのとおりです。――阿川佐和子:あんな作家こんな作家どんな作家(ちくま文庫)――秋山駿:作家と作品(小沢書店)――阿刀田高:作家の決断・人生を見きわめた19人の証言(文春新書)――巌谷大四:懐かしき文士たち・戦後編(文春文庫)――大沢在昌:作家との遭遇(新潮社)――尾崎真理子:寂聴文学史(中央公論新社)――「現代文学」月報集(講談社文芸文庫)――国文学:現代作家110人の文体(1978年11月増刊号)――小谷野敦:恋愛の昭和史(文春文庫)――齋藤愼爾:寂聴伝・良夜玲子(新潮文庫)――塩澤実信:文豪おもしろ豆事典(北辰堂出版)――知っ得:現代作家便覧(学燈社)――知っ得:現代の作家ガイド100(学燈社)――瀬戸内寂聴(文藝春秋編「青春の一冊」文春文庫プラス)――:瀬戸内寂聴:自作を語る:週刊ブックレビュー20周年記念ブックガイド(NHKサービスセンター)P91――高橋源一郎・山田詠美:顰蹙文学カフェ(講談社文庫)――百目鬼恭三郎:現代の作家一〇一人(新潮社)――中村真一郎編:ポケットアンソロジ・恋愛について(岩波文庫)――文藝春秋編:私たちが生きた20世紀(下)(文春文庫)――毎日新聞社学芸部:私の小説作法(雪華社)――松原新一ほか:戦後日本文学史・年表(講談社)山本藤光
2022年06月16日
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220615:李琴峰のこと■千葉日報のニュースです。――千葉県内で太陽光発電所から銅線ケーブルが盗まれる被害が多発している。銅の価格高騰を受けた転売目的の犯行とみられ、県警は今年、野田市や香取市など県北部を中心に数十件の被害を確認。無人の太陽光発電所は狙われやすいとして、警戒を強化している。――太陽光パネルをねらった窃盗は、これからも増えると思います。無人で監視カメラなし。■李琴峰(り・ことみ)は、1989年生まれの台湾出身の作家です。私は芥川賞受賞作『彼岸花が咲く島』(文藝春秋)で、存在を知りました。本書はまだ文庫化されていませんので、紹介を控えていました。ところが『ポラリスが降り注ぐ夜』(ちくま文庫)が、先に刊行されてしまいました。本当は文庫化された芥川賞受賞作を紹介したかったのですが。まずはできたての文庫を、読んでみることにします。■李琴峰のプロフィールをウィキペディアから紹介しておきます。――1989年生まれ。台湾出身。2017年、初めて日本語で書いた小説『独舞』(のち『独り舞』に改題)で第60回群像新人文学賞優秀作を受賞し、作家デビュー。同作は、通勤電車の中で浮かび上がった「死ぬ」という一語が創作のきっかけだったという。『独り舞』台湾版は自訳で刊行(2019年、聯合文學出版社)。2018年10月1日、日本の永住権を取得した。2019年、『五つ数えれば三日月が』で芥川賞候補。同作は後に単行本化し、野間文芸新人賞候補となる。2021年、『ポラリスが降り注ぐ夜』で芸術選奨新人賞を受賞。同年、『彼岸花が咲く島』で第34回三島由紀夫賞候補、第165回芥川賞受賞。山本藤光
2022年06月15日
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220614:村田沙耶香『私が食べた本』がいい■少し時間がかかりましたが、やっと成立しました。――成立した改正法は、侮辱罪の法定刑に「1年以下の懲役もしくは禁錮」と「30万円以下の罰金」を加え、これに伴い公訴時効が1年から3年に延びた。時効が延びたことで、人権を侵害する悪質な書き込みをした投稿者を特定する捜査が可能な期間も長くなり、厳罰化に加えて誹謗中傷への抑止効果が期待できる。(毎日新聞)■村田沙耶香(むらた・さやか)は、『授乳』(講談社文庫)を推薦作として紹介しています。しかし『コンビニ人間』(文春文庫)の評価が海外で高いので、じっくりと読み直そうと思っています。その前に読んだ『私が食べた本』(朝日文庫)がよかった。本書は本にまつわるエッセイ集です。現代作家の究極の一冊を、紹介してくれています。山本藤光
2022年06月14日
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220613:藤沢周平のこと■藤沢周平(ふじさわ・しゅうへい)は、『蝉しぐれ』(文春文庫)を「山本藤光の文庫で読む500+α」に掲載しています。司馬遼太郎とともに、できれば全作品を読破したいと思う作家です。■プロフィールを紹介しておきます。藤沢周平:1927-1997。江戸時代を舞台に、庶民や下級武士の哀歓を描いた時代小説作品を多く残した。とくに、架空の藩「海坂藩(うなさかはん)」を舞台にした作品群が有名である。。1971年についに :溟い海(が第38回オール讀物新人賞を受賞し、直木賞候補となり、翌年:暗殺の年輪(で第69回直木賞。新進の時代小説作家として認められるようになる。(ウィキペディア)■藤澤周平について書かれた書籍です。――文豪ナビ藤澤周平(新潮文庫)――朝日新聞週刊百科編集部編:藤沢周平のツボ(朝日文庫)――遠藤展子:父・藤澤周平との暮し(新潮文庫)――野火迅:ヘタな人生論より藤沢周平(河出書房新社)――藤沢周平を読む(新人物往来社)――高橋敏夫:藤沢周平・負を生きる物語(集英社新書)――文藝春秋編:藤沢周平の世界(文春文庫)――松本健一:藤沢周平が愛した静謐な日本(朝日文庫)――NKK私の藤沢周平政策版:わたしの藤沢周平(宝島社)――阿川佐和子:あんな作家こんな作家どんな作家(ちくま文庫)――井上ひさしほか編座談会・昭和文学史・第3巻(集英社)――オール読物2012.11・藤沢周平の美しさ――佐高信:司馬遼太郎と藤澤周平(知恵の森文庫)――杉本章子:私が出会った作家(「オール読物」2010年5月号)――関川夏央:おじさんはなぜ時代小説が好きか(集英社文庫)――田辺聖子:楽老抄・ゆめのしずく(集英社文庫)P287――福田和也:悪の読書術(講談社現代新書)――福田国士:文豪が愛し名作が生まれた温泉宿(祥伝社新書)――藤沢周平(文藝春秋編「青春の一冊」文春文庫プラス)――山本一力・縄田一男・児玉清:ぼくらが惚れた時代小説(朝日文庫)――洋泉社MOOK:時代小説ベスト100(洋泉社)山本藤光
2022年06月13日
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220612:黒川博行『キャッツアイころがった』がいい■東京都と大阪府とに、批判の声が渦巻いています。ともに太陽光パネルの問題です。東京は新築戸建てに、太陽光パネル設置を義務づける。大阪は太陽光パネル事業に、上海電力を参入させた。いずれの案件も、ネットで炎上しています。しかしマスゴミは、だんまりを決め込んでいます。最近、都議会や府(市)議会議員が、声を上げ始めたようです。2案件とも、撤回させなけらばなりません。■黒川博行(くろかわ・ひろゆき)は、『アニーの冷たい朝』(創元推理文庫)を推薦作として紹介しています。本当はサントリーミステリー大賞受賞作である『キャッツアイころがった』(創元推理文庫)を紹介しようとしていました。しかし書籍がみつからず、断念していました。そんなときに、角川文庫から同書のリメイク版が出たのです。読み直してみました。やっぱりいい作品でした。■黒川博行のプロフィールを紹介しておきます。――1949年生まれ。高校の美術教師などを経て、1983年、『二度のお別れ』が第1回サントリーミステリー大賞佳作に選ばれ、翌年同作で小説家デビュー。佳作の次は大賞が獲りたいとより熱心に小説に打ち込むようになり[8]、1986年に『キャッツアイころがった』でサントリーミステリー大賞受賞。この時選考委員を務めていた田辺聖子について「恩人である」と述べている。ほどなくして二足のわらじ生活が辛くなり、1987年に教師の職を辞して作家専業となる。(ウィキペディア)山本藤光
2022年06月12日
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220611:キーン『正岡子規』文庫に■2月1日に死去した元東京都知事で作家、石原慎太郎さん(享年89)の「お別れの会」が9日、東京都内のホテルで開かれました。多方面で活躍した慎太郎さんらしく、政財界からスポーツ、芸能分野の関係者ら一般も含め約5000人が参列したとのことです。■ドナルド・キーンは『ドナルド・キーン自伝』(角地幸男訳、中公文庫)を推薦作として紹介しています。ドナルド・キーンの著作では、ほかに『ドナルド・キーン著作集15・正岡子規・石川啄木』(新潮社)を高く評価しています。そのなかの『正岡子規』(新潮文庫)がやっと文庫化されました。おそらく石川啄木も近いうちに文庫化されるでしょう。もちろん文庫で再読します。■正岡子規については、『笑う子規』(ちくま文庫、天野祐吉編)を紹介させてもらっています。これを機会に、正岡子規に触れていただきたいと思います。山本藤光
2022年06月11日
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220610:『生きてしまった・太宰治ミステリ』がいい■岸田内閣を支持するか。新聞報道では支持率が高いのですが、ネット調査では78%が支持しないと出ています。新聞とワイドショーしかみない老年とネットの若者とでは、評価が真反対となっています。岸田が明確な国防論を口にしたのを、聞いたことがありません。国防を語れない人は、一国のリーダーとなる資格はありません。■ミステリといわれれば、そんな感じもします。「太宰治ミステリ」としてくくられた作品集『生きてしまった・太宰治ミステリ』(河出文庫)がいい。いくつか既読の作品もありました。それらの作品を、ミステリとして読んだことはありませんでした。そんな意味でミステリとされた収載作は、すべて新鮮に思えました。山本藤光
2022年06月10日
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220609:今村夏子『むらさきのスカートの女』文庫に■ボクシング世界戦で井上尚弥に敗れた、ノニト・ドネア(フィリピン)のセリフです。スポーツマンらしいコメントで、感動しました。――「今日のイノウエは本当に凄かったし、彼はやっぱり最高だ。本当にアメージングなファイターだし、こうして彼とリングで一緒に闘えたことを嬉しく思う。これは彼も同じことを思ってくれていたら嬉しい」(THE DIGESTより)■今村夏子(いまむら・なつこ)は、『こちらあみ子』(ちくま文庫)で、いいなと思った作家です。その後、芥川賞作家となります。受賞作品『むらさきのスカートの女』(朝日文庫)がやっと文庫化されました。1980年生まれの中堅作家ですが、しばらく休筆の時期がありました。本書を読んでから、書評を発信したいと思います。山本藤光
2022年06月09日
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220608:「NHK100分de名著」ぜひ観て■昨日の「NHK100分de名著」は。「安部公房『砂の女』」の第1回放映でした。これがすばらしくよかった。本日再放送があるので、ぜひご視聴ください。ヤマザキマリさんの解説、伊集院光さんの合いの手。これが絶品でした。行きにくい世の中だな、と感じている方にはお勧めです。■「山本藤光の文庫で読む500+α」から『砂の女』を転載しておきます。安部公房『砂の女』(新潮文庫)砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。(アマゾン内容紹介)◎『砂の女』の魅力私が本格的に本を読むようになったのは、安部公房『砂の女』(新潮文庫)との出合いからでした。高校時代まで読書とは軽いつきあいの生活だっただけに、『砂の女』を読んでそのちみつな描写に圧倒されました。男が昆虫採集のために砂丘を訪れます。男は村人の意思で、女ひとりが住む、砂の底の家に軟禁されます。家は毎日、砂をかきださなければ埋もれてしまいます。男は砂との格闘に明け暮れます。――砂ってやつは、こんなふうに、年中動きまわっているんだ……その、流動するってところが、砂の生命なんだな……絶対に、一ヶ所にとどまってなんかいやしない……水の中だって、空気の中だって、自由自在に動きまわっている……だから、ふつうの生物は、砂の中ではとうてい生きのびられやしません……。(本文より)男は何度も、砂の底からの脱出を試みますが失敗します。やがて男は偶然に、「希望」と名づけた仕かけから「水」を発見します。砂の毛管現象を活用した装置です。男の日常に変化が訪れます。これまでは砂をかきだすという、労働との対価として施されていた水。それがいつでも自由になりました。砂の表面のように乾ききった日常に、うるおいがうまれます。男は「あわてて逃げだしたりする必要はない」、と考えはじめます。人間の希望には「飛びたちたい」と「巣ごもりたい」の2つの種類があります。これは安部公房自身がなにかに書いていました。『砂の女』の主人公は、「希望」と名づけた装置から水を発見したとき「飛びたちたい」という気持ちを、「巣ごもりたい」に転換したのです。 安部公房の魅力は、豊かな比喩と繊細な自然描写にあります。さらに微妙な主人公の心の動きを、硬質な文章で描いてみせるところにあります。『砂の女』は世界中で翻訳されています。『砂の女』は安部公房の好きな、メビウスの輪を用いた構成になっています。メビウスの輪とは、細長い紙片をひとひねりして、両端を貼り合わせたものです。できあがった輪の面をたどると、出発点が終点と重なります。最後まで小説を読んだときに、冒頭の2行が活きてきます。――八月のある日、男が一人、行方不明になった。休暇を利用して、汽車で半日ばかりの海岸に出掛けたきり、消息をたってしまったのだ。(本文より) ◎安部公房から広がる読書世界1人の作家にとことん傾倒する。読書スタイルとしては、当然のことだと思います。私も筒井康隆と西村京太郎に、夢中になっていた時代があります。私の読むペースよりも、彼らの書くスピードの方が早かった。小さくなる後姿を見やりながら、私はぜいぜいと肩で息をすることになりました。当時私は、中央大学で国文学を専攻していました。小林一茶、松尾芭蕉、宇治拾遺物語、万葉集など面白くもない授業を受けながら、辟易としていました。1冊ウン千円(喫茶店のコーヒが70円の時代)もする自著をテキストとして購入させ、使い古したノートで偉そうな講義をする教授たち。暗澹(あんたん)たる毎日に救いの手を差しのべてくれたのは、創作集団「ペンクラブ」でした。このクラブは歴史のある「白門文学」を発信し、作家への登竜門でもありました。ペンクラブでは、現代文学作家の研究も活動の一環でした。私は迷いなく、安部公房を選びました。安部公房の研究をし、自ら創作活動もおこなう。大学生活が少しずつ充実してきました。芥川賞を受賞した『壁』(新潮文庫)は、ルイス・キャロル(推薦作『不思議な国のアリス』新潮文庫)に触発されて書いたものです。『壁』の序文には、石川淳(推薦作『紫苑物語』講談社文芸文庫)が緊密な文章を献呈しています。少年時代の安部公房は満州で暮らしており、そのころはリルケやハイデッカーに傾倒していました。私の安部公房研究は、次第に広がっていきます。安部公房が傾倒した作家から、作品への影響を検証するのです。偉い文芸評論家が「安部公房はカフカの影響を受けている」などと書いたら、カフカ(推薦作『変身』光文社古典新訳文庫)も読んでみなければなりません。リルケ(推薦作『マルテの日記』新潮文庫)、石川淳、花田清輝(推薦作『復興期の精神』講談社文芸文庫)も読みあさりました。当時の安部公房は、三島由紀夫(推薦作『潮騒』新潮文庫)らと「第2次戦後派」と呼ばれていました。当然カッコでくくられた作家たちの作品も読み、社会や文壇の潮流も解き明かさなければなりません。大江健三郎(推薦作『万延元年のフットボール』講談社文芸文庫)、堀田善衛(推薦作『広場の孤独』新潮文庫)、吉行淳之介(推薦作『夕暮まで』新潮文庫)などの作品も、深読みすることになりました。それまでの私は日本文学を大雑把に、「近代」と「現代」に分けて考えてきました。ところが、もっと細かな潮流があることを知りました。それが前記の「第2次戦後派」や「第3の新人」(安岡章太郎・吉行淳之介・遠藤周作など)「内向の世代」(古井由吉、後藤明生、日野啓三、黒井千次、小川国夫、坂上弘、高井有一、阿部昭、柏原兵三など)であったりするわけです。◎安部公房が語る『砂の女』『砂の女』の結末について、安部公房自身の見解を示します。「国文学」(昭和49年9月増刊号)における、磯田光一との対談からの引用です。読者が深読みするよりも、著者が語っているのだから間違いはないはずです。(引用はじめ)安部公房:『砂の女』の結末というのは、到達することが問題ではなくて、出発点に立つということが問題なのだ、ということだよね。磯田光一:はああ……。安部:「出発点だ」という発想に立っていれば、いいんだな。必要なのは、その「出発する(スタートする)」ことなのであって、到達することのために、ほかが全部消えてしまうのは困る。磯田:ええ、ええ。安部:出発時の目標どおりに到達しなかったからといって、人を裁いては意味はないの。磯田:それなら、たえず「出発」をくり返すということになりますか。安部:そういうことになりますね。磯田:あの『砂の女』の主人公にとって、考え方によっては、たまたま、昆虫採集に出かけた、あの時点が出発点という見方は、できないものですか。安部:できないのです。(引用おわり)私は大学時代、磯田光一の授業だけは欠かさずに出席しました。磯田光一は、三島由紀夫、永井荷風、小林秀雄などについて、優れた著作を発表していました。文学作品を深読みするとは、まず自分自身でじっくりと考えてみる。作品論や対談を図書館で調べる。大好きな作家について調べるのは、楽しいことでした。◎安部公房全集全30巻のこと(2009.03.06)昨日千葉の書店から電話がありました。「定期購読の本が入荷しました」。相手はそう告げた。「定期購読なんてしていませんよ」と私。困ったようなため息のあと、「安部公房全集なんですけど」といっています。え、まだ全集の続きがあったの、と驚きました。確かに安部公房全集は、定期購読していました。最終巻(第29巻)を買い求めたのは、何年前だったのでしょうか。書棚から取り出し、奥付を見た。2000年12月、5700円となっていました。本日、追補版・安部公房全集の第30巻と対面できます。終っていたと思っていましたが、これで完結となるようです。最終巻は検索ROMなどがついて、8400円とのこと。楽しみです。1巻平均を5000円として、15万円以上かかった計算になります。安部公房は卒論で選んだ作家ですしし、サインをもらいに新宿紀伊国屋まで行ったこともあります。日本を代表する偉大な作家。それが安部公房だと確信しています。安部公房にのめりこんだために、私の読書も広がりました。たくさんの示唆と知を与えてもらいました。本日書店へ行って、最後の1冊を手にすることになります。死ぬまでにあと1回、第1巻から読み直してみたいと気合いをいれました。(山本藤光:2014.08.02初稿、2018.02.26改稿)
2022年06月08日
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220607:ピンチョンのこと■現代ビジネスにユニークな記事がありました。お裾分けさせていただきます。――蚊のエネルギー源は糖分で、普段は蝶や蜂と同じように花の蜜や樹液、果実の汁などを吸って生きているのだ。ではなぜ、夏になると人の血を吸いに来るのか。実は血を吸うのはメスの蚊だけで、産卵に必要なタンパク質を摂取するために吸血するのだ。つまり、蚊にとって血液は子孫を増やすための「特別食」なのである。■ピンチョン(トマス・ラッグルス・ピンチョン・ジュニア)は、『スローラーナー』(ちくま文庫、志村正雄訳)を推薦作として紹介しています。ピンチョン作品のなかでは、本書が最も平易だからです。他の作品については難し過ぎて、最後まで理解不能となりました。プロフィールを紹介します。■1937年生まれのアメリカの小説家です。現代のアメリカ文学を代表する小説家のひとりであり、1990年代以降定期的にノーベル文学賞候補に挙げられています。公の場に一切姿を見せない覆面作家として知られています。作品は長大で難解とされるものが多く、SFや科学、TVや音楽などのポップカルチャーから歴史まで極めて幅広い要素が含まれた総合的なポストモダン文学です。(ウィキペディア)山本藤光
2022年06月07日
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220606:眉村卓『時空の旅人』がいい■感動しました。FNNプライムオンラインからの引用です。――堀江謙一さんは1962年、世界で初めて小型ヨットで単独無寄港の太平洋横断に成功していて、今回は逆ルートでの挑戦となった。ハワイ沖などを経て69日の航海で、4日未明、紀伊水道に設定したゴールを通過し、午後5時ごろ、西宮市に到着した。■眉村卓(まゆむら・たく)は、『なぞの転校生』(講談社文庫)を推薦作として紹介しています。しかし捨てがたい作品があります。『時空の旅人』前中後編(角川文庫)がそれです。本書は歴史冒険SF小説と言われています。同書はハルキ文庫でも読むことができます。あなたを不思議な世界に誘ってくれる作品を、ぜひ探してみてください。おそらく新刊書店では見つけられないと思います。山本藤光
2022年06月06日
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220605:ジョン・アーヴィングの3作品■産経新聞からのコピーです。――政府・与党内では、台湾当局との意見交換を含む情報収集の強化のため、派遣する職員を現役自衛官に格上げすべきだとの声が出ていた。関係者によると、政府は今回、日中関係への影響を考慮し現役とはするが文官にとどめる方針で、現役自衛官の派遣は今後の検討課題だという。――記事にあるように、現役の自衛官派遣はまだ先になるようです。台湾有事は日本の有事。まあ、一歩前進というところです。■ジョン・アーヴィングは、『熊を放つ』(上下巻、中公文庫)か『ガープの世界』(上下巻、新潮文庫)を推薦作として紹介しようと思っていました。しかし先月読み終えた『未亡人の一年』(上下巻、新潮文庫)が実にいい。どれを選ぶか迷っています。山本藤光
2022年06月05日
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220604:橋本治『落語世界文学全集』は終わったのか■FNNプライムオンラインの記事です。――脱税事件などが相次いだ日本大学について、運営に大きな問題があるとして大学基準協会が「不適合」と判定しました。――林真理子さんの理事長就任が決まろうとしているときに、とんでもない一報です。これで国からの補助金にブレーキがかかります。林真理子さんは金の問題でも、頭を悩ませることになりそうです。■橋本治さんが亡くなってから3年が過ぎました。大好きな作家でした。書棚には100冊ほどの著作があります。そのなかで続刊を楽しみにしていた全集があります。『落語世界文学全集』(河出書房新社)です。第1巻は橋本治「おいぼれハムレット」でした。次回配本予定は「異邦人」のはずでした。これが刊行されないままです。第1回で大いに楽しんだだけに、残念です。この全集は終わったのでしょうか。山本藤光
2022年06月04日
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220603:林真理子『愉楽にて』読むぞ■林真理子さんは、日大芸術学部の出身です。昨日のニュースで日大の理事長になるかもしれない、との一報がありました。以下ニュースの引用です。ヤフーニュースより――今月1日に開催された日大の選考委員会が、林氏を次期理事長候補として選出した。3日の理事会で承認され、7月に正式に就任する見通しだ。■悪名高い日大を救うには、この人しかいないと思います。それで思い出したのですが、林真理子はまだ「山本藤光の文庫で読む500+α」に掲載していませんでした。むかし『林真理子の名作読本』(文春文庫)に感動して書評を書いています。このニュースを機会に、『愉楽にて』(新潮文庫)をよんでみることにしました。帯には「新聞紙上、最高のエロス」とあります。日経新聞連載中に、大きな話題になった作品です。山本藤光
2022年06月03日
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220602:西村賢太『瓦礫の死角』のこと■ユーチュバーが、ゲームセンターのクレーンゲームの検証をしていました。一等賞から五等賞までのクジを引き当てるゲームです。彼は7万円をつぎ込んで、すべてのクジを釣り上げました。結果は五等賞が12枚で、残りはすべてハズレでした。当然、これは詐欺です。店側との交渉は後日ということで、放映は終わりました。とんでもない事件です。■書店の新刊コーナーにありました。思わず買ってしまいました。いつもなら奥付を確認して、発行日を確認するのですが。講談社文庫はシュリンクパックになってから、この確認作業ができません。というわけで、西村賢太『瓦礫の死角』(講談社文庫)の2冊目を買ってしまいました。帯に「追悼」の文字があったので、新刊だと思い込んでしまったのです。山本藤光
2022年06月02日
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220601:100分de名著は『砂の女』■昨日の産経新聞一面トップの見出しです。久しぶりに爽快なニュースでした。――中国、安保協定の合意失敗 太平洋島嶼国と会議――中国は太平洋島嶼(とうしょ)諸国の外相オンライン会議で、安保協定の締結を目論みました。しかしフィージーなどの反対があり、企ては失敗に終わりました。中国の野望、壊れたり。■6月になりました。今月の「NHK100分de名著」は。「安部公房『砂の女』」が取り上げられます。「山本藤光の文庫で読む500+α」の日本近代文学(1945年以前生まれの作家)では、第1位の評価をしている作品です。解説はヤマザキマリ。雑誌を買い求めて、番組開始を楽しみに待っています。山本藤光
2022年06月01日
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2205+31:半村良のこと■文春オンラインにショッキングな記事がありました。見出しだけ引用します。日本政府の危機管理はどうなっているのだろう。唖然とさせられました。――「自衛隊に中国系メーカーのPCが配られて唖然」「LINEの情報もダダ漏れ」“ファーウェイ排除”を進めない日本の超危険。■半村良は『晴れた空』(上下巻、祥伝社文庫)を「山本藤光の文庫で読む500+α」で紹介しています。ウィキペディアにおもしろい記載がありました。紹介させていただきます。――ペンネームは、イーデス・ハンソン(良いです、半村)に由来するのではないかとよく言われるが、実際は薬品のネーミング法などをヒントに語呂の良いものを選んだのだという。イーデス・ハンソン説については、小松左京の言い出した冗談を、本人が特に否定しなかったために広がったという説が有力である。パスティーシュ小説で著名な清水義範は、学生時代に作った同人誌を通じて半村と文通が始まり、大学卒業時と同時に上京する際、半村を頼ったと述べている。当時の半村は広告代理店を退社して専業作家に転身し、大きくブレイクしようとした時期にあたった。その後も清水に目をかけ、亡くなるまで交友が続いた。清水は、いくつかの自伝的作品で半村をモデルにした人物を登場させており、師匠と呼んでいる。山本藤光
2022年05月31日
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220530:柳美里『JR上野駅公園口』がいい ■以下、テレ朝ニュースからの引用です。――日本赤軍の重信房子元最高幹部(76)が28日朝、懲役20年の刑期を満了して出所しました。(中略)重信元最高幹部は日本赤軍の解散を宣言していますが、現在も7人のメンバーが逃亡していることなどから、警察当局では出所後の動向を注視しています。――問題は最後の部分にあります。刑に服していないかっての仲間が、まだ7人も逃亡中なのです。■柳美里(ゆう・みり)は、『フルハウス』(文春文庫)を推薦作として紹介しています。しかし最近読んだ 『JR上野駅公園口』(河出文庫)が印象的で、紹介したいなと思っています。本書はアメリカで最も権威のある文学賞のひとつ、全米図書賞を受賞しています。■簡単にストーリーを紹介します。以下、WEB河出からの引用です。――本作は福島県相馬郡(現在の南相馬市出身)で、1964年東京オリンピック前年に出稼ぎ労働者として上野に上京、高度経済成長ののち、そこでホームレスとなった男性が主人公。柳美里さんが一貫して取り組んできたテーマ「居場所のない人に寄り添う物語」です。山本藤光
2022年05月30日
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220529:鮫島浩『朝日新聞政治部』出た■鮫島浩『朝日新聞政治部』(講談社)がついに発売されました。私はkindleを買い求めました。以下、現代ビジネスの案内記事です。―― 一昨日(27日)発売されて即大反響を呼んでいる。登場する朝日新聞幹部すべて実名、元政治部エース記者の鮫島氏による衝撃の内部告発ノンフィクションは、2014年に大バッシングにさらされたとき、朝日新聞の中枢で何が起きていたかを洗いざらい暴露している。■本書の抜粋版は、ネットで読むことができます。全7回連載予定のうち、現在は5回までアップされています。本書を買おうと思ったのは、この抜粋版のすさまじさに魅せられたからです。40年間購読し続けた朝日新聞ですが、いまは産経新聞に切り替えています。朝日に洗脳されている方に、朝日を見限った方に、ぜひ読んでいただきたいと思います。■ちょっと長いのですが、アマゾンの案内を貼り付けておきます。――「吉田調書事件」の当事者となった元エース記者が目にした、崩壊する大新聞の中枢。登場人物すべて実名の内部告発ノンフィクション。地方支局から本社政治部に異動した日、政治部長が言った言葉は「権力と付き合え」だった。経世会、宏池会と清和会の自民党内覇権争い、政権交代などを通して永田町と政治家の裏側を目の当たりにする。東日本大震災と原発事故で、「新聞報道の限界」をつくづく思い知らされた。2014年、朝日新聞を次々と大トラブルが襲う。「慰安婦報道取り消し」が炎上し、福島原発事故の吉田調書を入手・公開したスクープが大バッシングを浴びる。そして「池上コラム掲載拒否」騒動が勃発。ネット世論に加え、時の安倍政権も「朝日新聞バッシング」に加担し、とどめを刺された。著者は「吉田調書報道」の担当デスクとして、スクープの栄誉から「捏造の当事者」にまっさかさまに転落する。吉田調書報道は、けっして捏造などではなかった。しかし会社は「記事取り消し」を決め、捏造だとするバッシングをむしろ追認してしまう。そして、待っていたのは「現場の記者の処分」。このときに「朝日新聞は死んだ」と、著者は書く。戦後、日本の政治報道やオピニオンを先導し続けてきた朝日新聞政治その最後の栄光と滅びゆく日々が、登場人物すべて実名で生々しく描かれる。山本藤光
2022年05月29日
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