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2006.07.09
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カテゴリ: 小説
【見えた 見えない どうでもいいよ】
「ほら、見てみ。天の川」
今日何回目かな、その台詞。ショージキね、聞き飽きたよ。
「あぁ、うん」
無理に答える必要ないのに答える。答えてあげる。
「心底どうでもよさそうだな」
うん、まぁ。星なんてホントどうでもいい。
「ご名答。わかってんじゃん。冴えてるね、たまには」
肩をすくめるこの動作もいつもと同じ。

言ってない。私はそんなこと言っちゃあいません。
「頼んだわけじゃない。恩着せがましいなぁもう」
何だかちょっと辛くなって、今日何度目かの川を見た。
「・・・・・・・・・はぁ。何で俺こんなとこいるんだよ」
「バカだから」
「はいはいそうですねぇ!」
・・・いつもと違うじゃん。それは駄目だね、頂けない。
いつもだったらもーちょっと突っかかってくんじゃん。
って、何で私はそんなこと覚えてんだ。しかも気にして。あーあ、やっぱり部屋でのんびり・・・
「なぁ、あれかな彦星って」
急に言われても。見えない知らない見たくもない知りたくもない。

「あれだよ、ほら。・・・見えた?」
「見えない」
「あー、ったく、ほら、もっとこっち来い。ここなら見えっから」
言って彼は私の肩を抱き寄せた。・・・だから、それは、いつもと違う。
「・・・ほら、見えるだろ?」

今はただ、この場所と時間を。


【戦えよ星のため】
「誰かっ!」
少女は叫んだ。怖くて、大きな声を張り上げて叫んだ。でもそこは商店街。夜じゃ犬もいなかった。
「逃げんなよー、楽しィことしよーぜェー?」
追うのはあからさまに変な男。しかしガタイはよくてけっこう強そう。そしてちょっとだけかっこいい。
「助けて――!」
ひときわ大きく声をあげると、一つの声が割り込んできた。
「待てぇーい!」
いかにも格好悪い。いつの時代のヒーローだよと言いたくなるような叫び声と共にその影はいた。
「なっ、誰だ!」
変な男は声の方向を見た。そこは街灯の上。高くそびえる街灯の上だった。
「はっはっはっはっ、私は星の戦士スターマン! お嬢さん、ご安心を。私が来たからには――」
つるっと。そんなような音がしたかと思うと、彼・・・スターマンは街灯から滑り落ちた。
「あ」
誰の声か、呆然とした声が聞こえたと思うと、次にずどーんって感じの。人間から出たとすると非常に危険な音がした。
「・・・・・・・・・」
沈黙。数秒の沈黙が流れる。少女も男も呆然として口を開いたまま、その状況を見ていた。
「ふ、く、はは・・・はははははぁ!」
妙な笑い声と共に彼は立ち上がった。脳の回路がどこかぶち切れたんじゃないかと心配させるぐらいに笑っていた。
「星の戦士はこのぐらいではビクともしな・・・痛っ、足ひねったかも」
街灯に照らされる戦士は非常に格好悪かった。夜店で売ってるようなお面をかぶって、自作っぽいマントとスーツを着ていた。
左足首に手を添え、苦悶の表情を浮かべる彼は、見ていてどこか痛々しかった。
「・・・えと、大丈夫か」
男に心配されるスターマン。ここまで来ると情けない。ショ○カーに心配される仮面○イダーみたいなもんだ。
「ぬうぅ、これしきで私は負けんぞ!」
言うと彼は男に攻撃を仕掛ける。仕掛けるがスピードがない。力強さもない。知性もない何もない。
「・・・うわあ」
出来の悪い子供を見るような目で男はそんな言葉を呟いた。スターマン、敵になめられているじゃないかどういうことだ。
「どりゃあああ!」
声だけは立派。ええもう何よりも立派です。ただ動きがそれに見合ってないが。
「えい・・・」
男は実に気のない声を出しながら、テキトーに手を出して攻撃を受け流した。
「ぬおおっ、貴様それはアズゲビルノロム星の武術ではないかっ!」
100年、200年・・・いや10世紀生きてても聞くことがないような星(?)の名前を挙げる。これだけは断言できる。彼のそれはそんなものじゃなくてただ手を出しただけだと。
「・・・はぁ。何だかやる気がなくなった」
男はがっくりとうなだれる。何とも言えない喪失感とか虚無感とか、とにかくむなしさの類を彼は感じたに違いなかった。
「むぅっ、貴様、敵に背を向けるとは何事だ!」
スターマンは戦意とかその他諸々をなくして家路につく彼に指を突きつけた。・・・あ、手袋つけてる。
「あー、それと君、ごめんね。もうしねぇわ。またどっかで会えたら嬉しいね」
男はそれを無視して、一度だけ振り向いて少女に言うと帰っていった。
「・・・・・・えと、無視?」
誰もいない場所に人差し指を突き立てるスターマン。救いようがないぐらい格好悪かった。戦士の名が泣いている。
「あのー、私も帰りますね」
軽くぺこりと頭を下げると、少女もまた帰っていった。
「・・・・・あー・・・、あれ?」
そして彼以外誰もいなくなり、暗闇と静寂が彼を慰めた。
「・・俺も、帰ろう・・・」
呟くと彼は仮面をはずして脇に抱えた。寂しげな彼の背中を、星だけが見つめていた。
頑張れスターマン。いつか報われるその日まで。


【願い事】
七夕の夜。笹に願い事を書いた短冊をつるすと願い事が叶うという。
信憑性のない話ではあるが、情緒的ではある。だから俺は好きだ。
みんなと一緒に願い事書いたり、その願い事を見せ合ったり。
そんなちっぽけな娯楽がたまらなく嬉しかったり楽しかったりするのだ。
・・・それはさておき、願い事だ。
今年の願いは何にしようか。・・・たしか去年は『部活が楽しくなりますように』で一昨年は『これからいいことがありますように(具体的には懸賞が当たったり限プレ当選したり)』。
一昨年の願いは特徴的だったな。俺自身いかがなもんかと思ったが、兄に従わされたのだ。
じゃあ今年は何にするか。幸い兄からの邪魔はない。友人も皆願い事を考えている。願いを書くなら今のうちだ。
「トシ君、願い事何すんの?」
背後から唐突に声をかけられて慌てて体で短冊を隠した。・・・何も書いていなかったが、これは条件反射だ。
「・・・、ミキ、急に声かけんなよ」
依然机に突っ伏したまま、顔だけ彼女に向けて喋る。
「あははっ、ごめんごめん。でもどうせまだ何も書いてなかったでしょ?」
・・・何とでも言うがいい。早けりゃいいってもんじゃない。じっくり考えるのがいいんだ。
と考えて少し気になった。
「・・そう言うミキは早いんだな。何書いたんだよ」
「3年前のトシ君の願い事をお借りしましたー。あれ感動しちゃってさー」
3年前と言えば・・・『いつまでも幸せでいられますように』だったか。
しかし願い事ごときで感動とは。大体こういうのは願い事の定番だろうに。
「・・特にあのときはリョウ君が・・・さ」
それを聞いて体を起こす。悲しそうなミキの目を見るのが少しだけ辛く感じた。
「あぁ・・・うん。だから俺もあの願い書いたんだしな」
あの頃。3年前の夏。期末テストが終わり夏休みも目前だった頃に、彼・・・高瀬亮一は息を引き取った。
前々からそんな通告はされてたらしく、病院で安静にしてればあと半年は生きられたと医者は言っていた。
しかしリョウはその選択をしなかった。命が削られていくことを解っていて、あえて俺たちと過ごすことを選んだ結果がそれだった。
今はもう話すことも、姿を見ることも叶わないけどこう思う。
きっと、あいつは悔いのない生き方が出来た。俺たちに多くの感情と大切なことを与えてくれた。きっとそれを誇ってくれると思う。
そんな気持ちを忘れないように。みんなが忘れられないように。この願いだけは何よりも大切だから叶えて欲しいと思って、俺はあの願いを短冊に記した。
「・・うん。また別れの時期だから、もう一回忘れないようにって」
そして俺たちは今、高校3年。17歳、18歳の夏を迎えた。あの頃と同じ、期末を終えた夏休み直前の今。
忘れられないこと。今この願いを掲げずに、いつこの願いをするのか。
俺はゆっくりとペンを動かす。一文字ずつ、自分の中にもう一度刻み込むように。

そしてできあがった笹には、多くの願いが掲げられていた。
多くの、たった一つの願い事。
「いつまでも 幸せでいられますように」





どうも、久遠です。

いかがでしたでしょうか。豪華(?)三本立て。
七夕・・・まぁちょっと過ぎましたけど・・・ということで、星に関する感じでやってみました。
ショートショートに最近ハマってきましたね。ちょっと多めにやってます。
・・・いや、基本的に思いついたのをここに書いてるんですが。
上の三本で合計1時間半。つまり一本30分で書いてる計算です。見えた見えないに関しては10分程度ですが。
何も思いついてない状態からこれだけ書けりゃ上等ですよ。自分で自分を褒めてやりたい(by有森裕子)ですね。
じゃぁまぁちょっと自己観察?など。

【見えた 見えない どうでもいいよ】
どこかの誰かさんみたいな小説になりましたね。ええ。よく見ますこういう文体。
ちょっと練り具合が足りない。もうちょい時間かければいい仕上がりになったろうに・・・。
まぁでもこれぐらいで・・・満足とは行かないけど、65点ぐらいはあげられますかね。
ショートラヴコメって感じですか。場所は想像にお任せします。俺の脳内ではオンナノコの家の屋根上です。

【戦えよ星のため】
ギャグを目指して突っ走った作品。結果。・・・ギャグは向かない。と思う。
あんまり笑えないかもねー。でもいいのやっぱ自己満足。
台詞と説明文(?)が大体50%ずつになるように、台詞→文→台詞→文という形にしてみました。
これもまぁ一発書きにしてはいいんじゃない? 点数は・・・45点。
つるっと。のあたりが好きだな。もうちょっと練ればいい感じにできるかも。

【願い事】
今回一番力を入れた。軽く実体験入ってたり。・・・、時期は違うけどね。
名前は思いつかなかったので適当であります。トシは俺の名前から取ってたりなかったり。
けっこう深く入り込んで書けたんで、自分としてはかなりいい出来になったと思います。80点。
他の2作品と同じく、時間が少ないのでもうちょっとなところも少なくないですが。
短冊に願い事ー、とかって最近できないらしいですね。川に流すのもダメ、燃やすのもダメと来たらどうにもこうにも。放っとけってか?
飾るだけならいいけど処理に困るのが七夕・・・。そのうちなくなったりしねぇだろうな・・・。
風習とかそういうのは好きです。けど、どっかの村とかの生け贄とか(あるのか知らんが)はダメです。即刻廃止にすべき。・・・まぁ俺がここで何言ってもしょうがないけど。


さて。そろそろ眠いのでお開きとしますかね。
空が晴れればまだ・・・というか、これから段々とよく見えてくると思います。天の川。
星を見るのは七夕だけの楽しみではありませんからね。
暑い日の夜、涼むついでにベランダとか縁側とか・・・なかったら屋根の上とかでのんびり見てみてはいかがでしょうか。
気持ちは安らいで、色々嫌なことも飛ぶと思います。屋根の上から見る場合は、安らぎすぎて落ちないように。
ではでは。ここまで読んで頂けましたらこれ幸い。

夏の空に、思いを馳せる。





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Last updated  2006.07.10 02:21:18
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 セツ@ 休日出勤オツカレサマですっw! お久しぶりですwお兄様w お兄様があの…
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