ガムザッティの感動おすそわけブログ

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gamzatti @ Re[1]:「ムー」「ムー一族」(05/28) ひよこさんへ 訂正ありがとうございました…
ひよこ@ Re:「ムー」「ムー一族」(05/28) ジュリーのポスターに向かってジュリーっ…

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gamzatti

gamzatti

2007.01.05
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カテゴリ: 演劇
シアターコクーン NODA・MAP 第12回公演)

「ロープ」というタイトルは、プロレスのリングに使われるロープであり、
「ここの中で起きたことに演出されストーリーがあるはず」という空間の意味で、
もっといえばフィクションとノンフィクションとの境目であり、
それはやがて「たとえそれが『現実』であっても、
区切られることによって『非現実』と思いこめる空間」へと転移していく。

9.11も、イラク戦争も、四角いテレビの中ではハリウッド映画と変らないように見える。
しかし、その四角い空間の中では本物の血が流れ、


それを煽っているのは、四角いロープの外の人間。
実況するマスコミであり、視聴者であり、そして・・・。

史実をもとにした虐殺の現場を、
宮沢りえが透き通った声で淡々と、そして興奮ぎみに実況する、その声が胸に響く。
そして、考えずにはいられない。

私たちは何を見たいの?
何のために?
何がおもしろくて?

野田秀樹は、30年ほど前「夢の遊民社」という劇団で大ブレークしてから、
ずっと演劇界の一翼を担ってきた人です。
スピード感あふれ、少年のファンタジーと遊び心満載の手法は、


そうした「遊眠社」的演劇が好きな人にとって、
この「ロープ」には、少々違和感を覚えたかもしれません。

ギラギラしたナイフを懐深く隠し持っているとはいえ、
それは入れ子の中の、そのまた入れ子の入れ子に組み込んで、
表面は過剰なまでの、ギャグとサービス精神。


しかし今回は、随所に野田特有の笑いはあるものの、
全体を覆うのは悲壮感です。
どうした? 軽妙洒脱で人を食ったような野田ラビリンスは、一体どこへ?

これは、事件なのです。
野田秀樹が、本気で真正面から社会に物申すようになった。
遊んでいる場合じゃない、と。
遊んで眠っているうちに、この世は滅びるよ、と。

すべてのフィクションは、フィクションを通じて現実(真実)を知るためにあったはずなのに、
私たちは生身の人間の周りに起きていることすら、マンガの中のヒトコマみたいにしか
感じられなくなってはいないか?

ラストシーン、
藤原竜也が「どうか、どうか・・・」と呟くとき、
それは、野田秀樹の祈りにも似た絶叫に聞こえます。

どうか、どうか、この世が続きますように、と。
そのために、たとえ「純情」といわれようが、「青臭い」といわれようが、
自分にできることはすべてやるよ、と。

出演者は野田秀樹以下、藤原竜也、宮沢りえ、渡辺えり子、宇梶剛士、中村まこと、などなど、
実力者ぞろいで、セリフの通りのすばらしいことといったら、近来にない出来です。
間のとり方、絶妙な掛け合い、トーンの変化の落差に酔いしれます。

私がもっとも心打たれたのは、宮沢りえ。
「タマシイ」という主要な役のほか、一場面に限って子を産んだばかりの母の役もやりましたが、
笠をかぶっていて顔が見えないのに、全身が素晴らしい演技をしていました。
対する藤原竜也が叫ぶ。
「女の言葉はわからなかった。女の言葉はわからなかったが・・・」。
人間の心と心が通うための表現を、役者が体現した感があります。





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Last updated  2007.01.05 08:50:00
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