ガムザッティの感動おすそわけブログ

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gamzatti @ Re[1]:「ムー」「ムー一族」(05/28) ひよこさんへ 訂正ありがとうございました…
ひよこ@ Re:「ムー」「ムー一族」(05/28) ジュリーのポスターに向かってジュリーっ…

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gamzatti

gamzatti

2008.02.08
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マルシア、今井清隆、鈴木ほのか、福井貴一、ANZA、そして三矢直生。

何を想像します?

ファンテーヌ、ジャン・バルジャン、コゼット、アンジョルラス、エポニーヌ
(以上帝劇の「レ・ミゼラブル」、
そしてジェローデル(宝塚の「ベルサイユのばら)」)。

すごいメンバーでしょ?
それで何をやるかというと、新作ミュージカルです!

タイトルは…「 妊娠させて! 」…まじストレート。


みなさんはどんなストーリーを思い浮かべますか?

子どもがほしい女性の話。そういう想像はつきますよね。

どうして子どもがほしいのかな?
「子どもさえ作っちゃえば、あの人と結婚できるんじゃないのか?」とか、
そういうドロドロ愛の展開も考えられます。

でも、
これは違うの。もっと純粋に、
「私は子どものいる人生を送りたい」と思う、すべての人のための物語。

子宮内膜症で苦しみながら、それを隠して結婚し、何とか子どもがほしい女性。
どんなに仕事をバリバリやっても、子どもがいなければ女性としては「負け組」と焦る女性。
ゲイだけど、子どもだけはほしいと思っている女性。


ニーズや実態に追いついていけない法律、
その中で翻弄される「不妊」に悩む人々を描きます。

こんなに重いテーマなのに、
専門用語の嵐なのに、
時々笑いが出ます。笑えます、わかります、滑稽だけどしみじみ共感します。


「自分が渦中にいるので、辛すぎて観る気がしない」という人も。
でも
この舞台で作者が言いたいのは「十人十色」でいいということ。
決して「不妊問題はこう解決すべき」と言っているわけではないし、
ましてや茶化したり、差別したり、くだらないと考えているのではありません。

こんなに悩んでいる人がいるのに、
それを知らないでいる人がたくさんいる。
たとえ直面している夫婦であっても、夫と妻で考え方が違うし、
それを話し合おうとなかなかできない。

根本を話し合わぬまま、
お互いを思いあい、気遣い、現状を追認することで結論を先送りする優しさが
抜き差しならないところまで二人を追い込んでいく。
「妻をくいものにするな!」
愛している二人だからこそ、
こんなに問題はこじれてしまうのです。

最後に妻(マルシア)が夫(今井清隆)にいいます。
「私たちには厳しさが足りなかった」
ようやくめぐりあい、ようやくできた結婚だったから、
つまらないことで言い合いになったり、
やっぱりこの人と結婚したのは間違いだったなどと
考えたくもなく、考えられるのもイヤで、
それできちんと向き合うことをしてこなかった。
もっと言い合えばよかった。
本音をぶつければよかった、と。

このお話は「データはそれほど確実で重要なことなのか?」もテーマの一つ。
精子バンクではデータによって精子の「優劣」が競われ、値段も違う。
じゃあ、データにたがわぬ子どもが生まれ、育つという確証が、どこにあるの?

セリフ(歌詞)の中でうなってしまったのは
「10%の女」という言葉。

「好きな人と出あえる確率、50%、
「その人とつきあって恋愛できる確率、33%、
「その人と結婚できる確率、10%、
「結婚して子どもが持てる確率、90%!
 でも、私は10%の女」…と鈴木ほのかが歌います。

「10%」というプラカードを掲げた若い男女に囲まれ、迫られ、
「10%」のプラカードに覆いかぶさられ、
追い払っても、はねのけても、その「10%」が追ってくる。
ここの演出は、とっても鮮烈でした。

子どもが先天的な病気をもって生れてくると、
親はまず「この病気で生れてくる確率は●%」あるいは「1000人に1人」みたいないわれ方をする。
そして思うのです。
「確率が何パーセントだったとしても、私のところに生れたら100%、生れなければ0%なのよ!」と。
このシーンを見ながら、そんなことを思い浮かべていました。

社会問題を劇にすると、説明とアジテーションに終わることが多いです。
ミュージカルの実力派たちを揃え、
絶妙の間合いと感情豊かな歌声で登場人物の心の機微を表現したこのミュージカルは
エンターテインメントとしてきちんと成立しているところが素晴らしいと思いました。

マルシアはアリアは抑え気味ながら、やはり声に艶と表情があふれている。
どこまでも聞こえるピアニッシモの長音も健在。
意外にもこれが初主演とのこと。
そして、「日本人役」も初めてだったとか。
鈴木ほのかがバリバリのキャリアウーマンを知的ではつらつに美しく演じる(好演!)のと対照的で、
いつも人の後を追いかけていく、ちょっとしょぼくれた女性の役でした。
こういうキャラクターを主人公に据えた自体、
かなり冒険的、斬新な脚本だったのではないかと思います。

普通に暮らす、普通の女性が、
今、穏やかな微笑みの下で「子どもがほしいのにできない」ことに悩んでいる。

鈴木ほのかが楽日のカーテンコールで
「身近にいるこういう人たちに、やさしくしてあげてくださいね」と言った言葉が忘れられない。

男性の古城十忍が男性の忠の仁と組んで、
男性にもこの問題をわかってもらおうと作ったオリジナル・ミュージカル。
東京・池袋の東京芸術劇場・中ホールで昨日が千秋楽でした。
DVDも出る予定なので、
ぜひご覧になってください。
(もちろん舞台はナマが一番だけど、このテーマだと家でDVDもいいかも)

笑って、泣いて、心が騒いで、
最後に、霧が晴れるような気持ちになれるミュージカルです。





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Last updated  2008.02.08 12:11:16
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