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産み落とされた卵は
花畑の真ん中で
来るべき時を待っていた
そよ風だけが
白い殻を撫でていくけれど一向に様子の分からない外は
何処か騒々しくて
揺れる地面
転がる卵
人々の金切り声
空気の匂いが変わった
来るべき時を待っていた卵は
その時が随分と遠ざかってしまった事を
卵ながらに悟っていた
花畑の真ん中で待っているはずだった
花畑の真ん中で生まれるはずだった
花畑の真ん中で生きていくはずだった
劣化していく殻は
強制的にその時を知らせる微かに開いた穴から漏れる光は
目を焼く程に眩しい
恐る恐る出した頭
一面オレンジ色の荒野が初めての外だった
予想外じゃない
十分な時間はあった
十分過ぎる程の時間があった
此処で生きていく