2012.11.20
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あの 「夜枕合戦」 に抱腹絶倒した日から7年、

やっぱり、この人のエッセイ以上に面白い本は見つかりません。

そして、やっぱり、今度も・・・



■やぼう 「なんらかの事情」岸本佐知子より

 前々から思っていたのだが、ひらがなの「め」と「ぬ」はよく似ている。ちょっと似すぎではないかと思う。

似ても似つかない発音をする二つの文字が、こんな瑣末な末端の部分のみの差異で大丈夫なのかと心配になる。

 そのことについて、当の「め」および「ぬ」はどのように感じているのだろう。

<中略>


 そして五十音図内にひしめくそうした和音や不協和音を一歩離れたところから静観しているのが「ん」である。

「ん」はいかなる派閥争いにも与せず、"一筆書き族"からの誘いも「遠いから」と断りつづけ、最後尾で世捨て人のごとき暮らしを営んでいる。

その孤高の姿に憧れる者も少なくない。だが「ん」にまったく娑婆っ気がないわけではない。

いや、むしろ「ん」こそは五十音界制覇の野心を誰よりも熱く胸に秘めている者なのである。

 かつて彼には宿敵「ゑ」がいた。隣の「わ」行でひときわ異彩を放っていたうえ、形状的にも「ん」に似たところがある「ゑ」は目ざわりな存在だった。

おまけによく見ると「る」が自分を踏みつけているようにも見え、それが「ん」の自尊心をいたく傷つけた。

だがその憎い「ゑ」もいまは亡い。くだらない小競り合いや馴れ合いに明け暮れる他の字どもはもとより敵ではない。

意外と気にするのは「み」あたりだが、これもまあ最終音という自分の切札をもってすれば恐れるに値しない。

何といってもこれは、しりとりを一瞬にして終わらせるほどの特別の魔力なのだ。

 「ん」の最終野望、それはあの王様気取りの「あ」を出し抜いて、いつか自分が五十音の先頭に立つことだ。

その日を夢見て、彼は最後尾で虎視眈々と機会をうかがっている。


いや~笑わせて頂きました。「遠いから」・・・ここでもう笑い転げた。





「ん」の為に付け加えると、

谷川俊太郎さんが、最近出た「すき好きノート」とゆー本で、

好きな文字は「ん」と書いています。

ぼくはひらがなの「ん」が好きで『「ん」まで歩く』という本まで出している。

五十音の最後にひとつだけぶら下がってる感じがいいんだな。


でも、谷川さんがこのエッセイを読んだら、ちょっと「ん」のことが嫌いになるだろうか?





「好きな文字は?」って、もし訊かれたら、何と答えますか?

ワタシは、「は行」が脱力したかんじの音が並んでいて好もしいんですが、

ひとつだけ選ぶとしたら・・・

「ほ」かな。

ほっほほほほ ほっほほほほ〜!ゲホゲホ










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Last updated  2012.11.21 06:56:07
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Re:「ん」のやぼう  
なんにゃ さん
読~み~た~い~!
一匹オオカミ「ん」の野望!
愚すんさんは確かに「ほ」が似合うと思います
ワタクシが好きなのは「か」
「カ」タカナじゃねーかよ(笑)と言われ、あわてて一本足したアタフタ感を愛します
「あいうえお泣かす方法考えたった」も読んでみて!
検索したらすぐ出てきますから
しかし…このエッセイは傑作…くくく (2012.11.20 23:02:57)

可憐な「か」、かわいいの「か」  
愚すん  さん
なんにゃさん
>読~み~た~い~!
>一匹オオカミ「ん」の野望!
>愚すんさんは確かに「ほ」が似合うと思います
>ワタクシが好きなのは「か」
>「カ」タカナじゃねーかよ(笑)と言われ、あわてて一本足したアタフタ感を愛します
>「あいうえお泣かす方法考えたった」も読んでみて!
>検索したらすぐ出てきますから
>しかし…このエッセイは傑作…くくく

岸本さんのエッセイは、自分のドジや見聞きしたことをネタにするシリーズも面白いのですが、やっぱり圧倒的に笑えるのは、文字や言葉をネタにどんどん飛躍していくシリーズです。
ここで紹介したもの以外にも、「しりこだま」と聞くと「尻谺」、「諭旨免職」と聞くと「油脂免職」と脳内変換されてしまうとか、「国はこれを不足として」と聞くと、つい日本列島の姿を連想してうんぬんといった話などがあります。岸本さんは、この手の言葉を聞くと、"モヤモヤしてくる"んだそうです。他言語に置き換えるとゆー翻訳者ならではの感性なんでしょうかね。
ところで、「ほ」が似合うってことは、やっぱり、のほほ~んとしてるからでしょうね。よ~し、これからは、本気出してホットな日記書くぞ~!(ってウソ)
(2012.11.21 11:22:43)

Re:「ん」のやぼう  
ふぁふぃふ さん
おもしゅろうございますねぇ
おもしろかったので私も面白いコメで返したい…と考えて 時ばかり過ぎてしまい 諦めました。(;_;)
ぐすんさんはたしかに、ほ がお似合いです。
でもってお誕生日 722!
ぞろ目仲間ですね~)^o^(
(2012.11.23 23:50:23)

小沢信男全句集の書名は「んの字」  
先日「ん」の出てくる川柳を作りました。
↓のページに掲載されています。気が向いたらご覧いただければと思います。
http://minatukiajisai.blog.fc2.com/

(2012.11.24 10:09:15)

Re:「ん」のやぼう  
わかった! さん
細いの「ほ」か…
じゃあわたしは、恰幅がいいの「か」…?
ヒドイ… (2012.11.24 14:56:35)

5万分の1の確率?  
愚すん  さん
ふぁふぃふさん
>おもしゅろうございますねぇ
>おもしろかったので私も面白いコメで返したい…と考えて 時ばかり過ぎてしまい 諦めました。(;_;)
>ぐすんさんはたしかに、ほ がお似合いです。
>でもってお誕生日 722!
>ぞろ目仲間ですね~)^o^(

そうなんですよ。ワタシも誕生日が22日でぞろ目です。ふぁふぃふさんは、4人兄妹全員がぞろ目の誕生日なんですよね。この確率ってどれくらいなんだろう・・・。

えーと、誕生日がぞろ目になるってゆー日は11か22日しかないから、確率は約1/15ですね。さて、ここからが難しい。
2人がそろってぞろ目ってゆーのは、えーと、今調べたら、これは独立した事象だから、足し算じゃなくて掛け算になるんだそうです。だから、1/225ですかね。
えっ!ってゆーことはですよ。ご兄妹4人がそろってぞろ目ってゆー確率は、1/50625ですか!

この計算合ってるのかなあ~?自信がないまま、なんとなくびっくり(笑)。 (2012.11.25 16:46:29)

ミシェル・ンデゲオチェロとゆー女性ミュージシャンがいます  
愚すん  さん
とりがらさん
>先日「ん」の出てくる川柳を作りました。
>↓のページに掲載されています。気が向いたらご覧いただければと思います。

>憂いあり恋のしりとり んが出た
「うこん」とゆー言葉がシバリになってる川柳なんですね。「ん」に必然があってうまいなあ~。それにキュート!
(2012.11.25 17:32:36)

呆けるの「ほ」 ( ̄。 ̄)  
愚すん  さん
わかった!さん
>細いの「ほ」か…
>じゃあわたしは、恰幅がいいの「か」…?
>ヒドイ…

佳人の「か」、華麗なひとの「か」、いずれアヤメかカキツバタの「か」
(2012.11.25 17:49:23)

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