9章


例の鍛冶屋のおやじの声で目が覚めた。
出来上がった防具はすごくゴテゴテの鎧と兜だが、惹きこまれるような光沢を持っていた。
「坊主。お前宋風族の末裔か?」
は?なんだそのソウフウゾクって。
「ぃ・・・ぃえ・・・わかりませんけど。」
そうするとおやじはなにやら複雑な表情で言った。
「坊主が寝てる間に見させてもらったがその刀は遥か東の果ての島国で栄えた宋風族の長、風斬爽仁(かぜきりそうじん)の刀だ。ほら、この本にのぅってらぁ」
確かにのっていたまったく同じだ。しかし。。。
「しかしなぁ・・・宝玉がはめられていないんだ。」
たしかに写真には小さい宝玉・・・モノクロなので色はわからないが・・・
それが4つほどはめられていた。
「この本によるとなぁ・・・この宝玉には風を操る力だなんだかいてあるが・・・・」
しかしその宝玉は僕の剣には一つも付いていない。だがはめるための穴はあるみたいだ。
「石を見つけたらここにもってこい。つけてやらぁ。」
おやじはそういった。
今気づいたが・・・おやじはコンピューターにしては感情があるようだ。
「ぉめぇ俺のことを最近ここにきたカクカクした話し方のやつ等と一緒にするなよ。俺は昔からここに住んでんだ。」
・・・よくわからない。ここに住んでいた?いや。それはおかしすぎる。
ここはゲームの中の世界だ。
・・・しかし・・考えてもしょうがない。僕はお礼を言って鍛冶屋をでた。


野宿の途中零が急に鳴きだした
「クゥゥゥ・・・・」
元気がなさそうな声だ。
そういえば・・・・今日になって何もやってなかったな。
皮袋の中を覗き込んでみたがなにもない。。。
「しょうがない。何か探すか。」
そういうと零はうれしそうに鳴いた。
夜になった林には生き物の気配がする・・・
しかし気配を感じ取ったときにはもうそこにいない。
一匹の大きなねずみ・・・大きいといっても50cmほどだが、
そいつは寝ていてこっちに気づいていない。戦利品の中にあった樫の杖で
ねずみの頭を強打するあっけなく気絶した。
「これでいいか?零」
そういうと零はうれしそうに鳴いた。
野宿していた場所に戻るとねずみをナイフでさばいた。
三分の一ほどを俺が食べ、のこりを零にやった。
俺は焚き火でよく火を通して食べた。
なんというか・・・クセはあるが食べれないほどまずくは無い。
腹が膨れたところで零が眠りについたので焚き火が消えないよう薪をくべて
俺も眠りについた。

朝日がまぶしい
俺が目覚めると既に零は起きていた。
今日は林の奥にあるであろうミノタウロスの集落に行ってみようとおもう。
あわよくば話が通じるやつがいるかもしれない。
林の中は零が歩きにくそうだったので乗らずに零に並んで歩いた。
15分ほどいくと木でできた立て札があった。
はじめてみる文字と矢印が記されていたので矢印の方向に進んでみる。
立て札の示す方向に少し進むと道が広くなった。
遠くの木の陰に藁でできた建物のようなものがある。
少し警戒しつつ建物のほうに向かい木陰から覗くと
家らしきものが4つほどあった。
奥には木でできた建物がある。
手前側の藁でできたものにはミノタウロスがすんでいるようだ。
なぜかせわしなく行き来している。
このままここに飛び込んだら招かれざる客である。
俺は回りこんで木造の建物に足を運んだ。


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