Heart of Life
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実は、このミトコンドリア、調べれば調べるほど不思議な生き物だということがわかってきます……「えっ生き物ですって?」……そう、どうやらそのようです。ミトコンドリアは、細胞の中にある細胞内小器官のひとつではあるのですが、それ自体がひとつの生命体だと言った方がよいほどの特徴をいくつも備えているのです。まずひとつ……ミトコンドリアは、核遺伝子情報とは異なるミトコンドリア独自の遺伝子を内蔵しているということ……細胞には遺伝子を内蔵している核があることは誰でも知っていますが、実は、ミトコンドリアには螺旋状ではない、円環構造をした別の遺伝子があるのです。そして次に、そのミトコンドリア遺伝子は、母方の遺伝系列のみを引くということ……ミトコンドリア・イブと呼ばれる人類の母探しを行うことが可能である背景には、こうしたミトコンドリア特有の母方のみの遺伝子の流れがあるおかげなのです。けれどもミトコンドリアがエネルギーを生み出す源であることを考慮すると、自らの母方系譜への肯定的な意識傾向、あるいは否定的な意識傾向が、ミトコンドリアの活性度を左右し、ひいては、この世界を生き抜いてゆくためのバイタリティの強度を決めてゆくといった可能性が大いにあるのではないかと思えてきます。さらに、もともとミトコンドリアというは酸素をたくさんエネルギーに換える好気性細菌が、別の元核細胞の中に入り込んで、共生を始め、そのまま居着いてしまったということのようです。これはおよそ10億年ほど昔に起こった出来事だと推定されていますが、今もわたしたちの無数の細胞の中で、ふたつの別々だった生命体同士がひしと抱き合い、ひとつに溶け合ったまま、生命の織物を織りなしてきたと考えると、実に感慨深いものがありますね。
September 24, 2004
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