カフェ・ヒラカワ店主軽薄

カフェ・ヒラカワ店主軽薄

2007.01.22
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カテゴリ: ヒラカワの日常
このところ、毎日毎日、上野茂都ばかり聞いている。
俺にしては大変に珍しいことである。
しかし、一度聞いたら頭の中に音が棲みついてしまった。

歩いているときも、
バスに揺られているときも、
仕事をしているときも、
飯を食っているときも、
一服しているときも、
糞しているときも、

気がつくと
それぞれの ワルツを 踊ろうよと
鼻で、歌っているのである。

それが「煮込みワルツ」である。
三味線と、チェロと、鳴り物と、喇叭とピアノの
アンサンプルが、なつかしい音を奏る。(たぶん)
歌声は、ひとりの酔っ払いが街道辻を
歌いながら通っていく風情である。
なによりも、歌詞が泣かせる。
最近読んだ、どんな現代詩よりも、
味わい深くて、後味がよい。


 つみれの花の咲くころに
 うづらうづらと まどろめば
 ちくわの友の夢を見る
 空にがんもどきの 群れ遠く
 ふやけてはんぺん 雲になれ

 ながれてしらたき 風になれ
 輝いてぎんなん 星になれ

すがれた場末の一角にある
いつもはストリップ小屋の即席ライブハウスで
観客は多くても二十名。
暖房が無いので、みんなコートの襟をたてたまま
壊れかけたいすに沈み込んで聞いている。
そとはつむじ風が舞っていて
舞台の上には疲れた中年の楽団のジンタ。
どこの誰だか誰も知らない観客の中で
俺もひとりの匿名の客となって、
一度も聞いたことのないような
それでいてなつかしいような
音の世界の中で
煮込んだおでんの具のように
体が半分溶け出している。

そんな気分なのである。





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最終更新日  2007.01.22 23:55:38
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