2003年09月20日
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世間にはサクセス・ストーリーが溢れています。書店に並ぶビジネス図書の多くがサクセス・ストーリーです。畑村洋太郎先生が提唱されて以来普及してきた「失敗学」の影響で、失敗を取り上げた本もかなり増えているようですが、サクセス・ストーリーが圧倒的に多いのです。ビジネスに関わる人たちの殆どは成功を追い求めますから、成功を取り上げた本が人気になるのは当然のことと受け止めることができます。ところが、同じサクセス・ストーリーを読んでも、読み取った内容を活かせる人とそうでない人とが居るようです。例を上げて論じてみることにします。かなり前のことですが、「ザ・ゴール」という本がベストセラーになりました。また、ロングセラーとなっているのが、トヨタ生産方式について書かれた本です。この二つを取り上げて話を進めることにします。

を説いたもので、一つの生産工場の生産性やコストに当てはめて解り易く小説風に書かれたものです。

多くの人たち、特に工場に関係した仕事を経験した人たちには、書いてあることの殆ど全てが容易に理解されることでしょう。しかし、受け止め方は多様です。
或人は「生産品種が少ないからできることだ。うちのように品種が多い工場では無理だ」と言われます。また別の人は「うちは工場ではないから当てはまらない」と言われます。
「何がうちの生産能力を決めているのか、この考え方で調べてみよう」とか「稼働率を高めても工場の出荷量の増加に貢献しない部分は確かにある。こういう部分は従来のコストダウンの考え方を変えなければいけないな」とか「仕事に一連の流れができている業務なら、生産工場でなくても使えそうだ」とか、前向きに捉える人たちもいます。

同じ本を読んでいても、こうした違いが生まれる根底には何がある
のでしょうか。意識の違い、関心事の違い、自分の仕事に対する熱心さの違い、変革に対する姿勢の違い、といったことが考えられます。

しかし、根本的な違いとして言えることは、本の中に説かれている


考え方を理解してもらうための題材である舞台装置や登場人物の行動にばかり注目して、基本となるべき考え方や原理原則にまで思考を深めることができない人たちは、自分が立つ舞台は違う、舞台の上で自分がやることはそれとは違う、といった捉え方をしてしまうようです。

「ザ・ゴール」というサクセス・ストーリーは、そこで説かれている考え方や原理原則にまで思考を深めて読まなければ、せっかく読んだ意味がない、といえるのです。

トヨタ生産方式について書かれた本でも同じことが言えます。トヨタ生産方式の基本は「ジャスト・イン・タイム」や「カンバン方式」という仕組みではないのです。こうした仕組みはトヨタ生産方式の考え方や原理原則を体現した一つの形なのです。

先日、トヨタ生産方式を指導するコンサルタントの活動を紹介する
ビジネス誌の記事を読みました。彼は「ジャスト・イン・タイム」や「カンバン方式」という仕組みのことも指導したことでしょう。
コンサルタントと並んでラインを見詰めていた工場の幹部が口にしたという一言が印象に残っています。「10年目にして始めて聞く誉め言葉だ」と。

仕組みを教え、そのような体制を作るだけでよいのであれば10年もかかるはずはありません。10年をかけて、コンサルタントが教え、工場の全員が学んだことは、トヨタ生産方式の考え方だったのです。
考え方を、風土として、体質として人と組織に染み込ませるのに10年という歳月を要したのです。

 少々粗っぽいですが、トヨタ生産方式の根底にある基本的な考え方を、筆者は「切れ目のない仕事の流れをつくる」「要求されていることだけをやる。それ以下は論外、それ以上でもいけない」といったところにあると受け止めています。

各種の仕組み、体制、教育などは殆どここから引き出されたものの
ように見えます。振り返って「ザ・ゴール」を考えてみますと、何と!根本の考え方は極めて似通っているではありませんか。



 サクセス・ストーリーには必ず成功をもたらした理由があります。それは考え方であることが多いのです。その考え方をしっかりと読み取っていくことを心掛けたいと思っています。





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最終更新日  2003年09月20日 15時55分35秒
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