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虎・ブラゼル、本塁打キングに並ぶ３２号

　１点を先制された直後の四回は外角の直球を「逆らわずにしっかり強くたたけた」と言う同点の左越え３１号。後半戦チーム最初の一発で、流れを変えた。

　３点リードの八回には中越えの３２号。前半戦の好調さをそのまま維持しているブラゼルは「前半戦は良かったけど、それ以上のものを残せるようにとやっている」とさらなる活躍を誓った。

新井（勝ち越し打）

「必死に食らいついた。これからはどんな内容でもいいから勝っていくことが大事」

城島（六回に横浜の守備陣形を突いて２点適時打）

「（打球が飛んだところに）人がいなかった。普段人がいるところに打ってしまったのに、どこにいたのかな」

藤川球（ソロを許すも九回を締める）

「逆転されなければいい。先頭を切ったから大丈夫」

「非常に良かった。問題ない。あれが本来の姿」

阪神、首位返り咲き！ブラ２発、新井適時打

首位奪取の一発だ！ナインの決意をのせた一打が、浜風を味方に伸びた。歓声が最高潮に達する前に、白球は左翼席に到達。ブラゼルの一撃が、横浜に傾きかけた試合の流れを引き戻し、５月２日以来の首位に立った。

　「コースに逆らわずに、しっかり強く叩けたね。チームにとっても、自分にとっても、とてもいいタイミングでホームランになってよかったよ」

　１点を先制された直後の四回一死、カウント０－１から、外角の直球をジャストミート。左翼線への弾丸ライナーは、一瞬でポール際へ消えていった。３１号の同点ソロ。２４日の球宴第２戦に続く一発も、公式戦では８試合ぶり。この時点で、３２本の巨人・ラミレスに１本差に迫った。さらに八回、試合を決定付ける３２号ソロをバックスクリーンの右へ叩き込み、キング争いでも首位タイに躍り出た。

　後半戦の初戦。試合前に、ロッカーでミーティングが行われた。開幕戦以来の決起集会で、ナインの前に立った沼沢球団本部長と真弓監督が、言葉をそろえた。

　「優勝しよう！！」

　試合前までで、巨人とは０・５ゲーム差。勝てば、その瞬間に首位が見える。指揮官が、「きょうから後半戦が始まるから、もう一度気を引き締めていこう」と、訓辞を続けた一戦。全員の集中力が、背番号６７のバットに込められた。

　そして、六回、一死二塁から新井の左前適時打で勝ち越した。先頭の首位打者・平野が中前打と盗塁で好機を演出。４番が、追い込まれてから３球ファウルで粘ると、外に落ちる変化球に必死にバットを伸ばした。

　さらに、二死一塁から金本が一塁強襲の二塁打。この日２本目の安打で二、三塁の好機を広げると、城島が左前へ２点適時打で、突き放した。

　「そんなに安打を続けられる投手じゃない。四球とかも選んでいかないとね」と、和田打撃コーチも警戒した相手先発のランドルフ。全員の想いをつないで、攻略した。

後半戦快幕！猛虎の夏や！奪首や！ブラ２発や

日本の夏は猛虎の夏！！　阪神はクレイグ・ブラゼル内野手（３０）がキングに並ぶ１試合２発の大暴れで横浜に逆転勝ち。巨人を抜き去り、５月２日以来の首位に立った。球宴を挟んでも、チームの勢いに陰りなし。夏バテ知らずの虎が、５年ぶりのリーグ優勝に突き進む。

　「うまく打てたね。興奮したよ。首位というのは素晴らしい。後半戦の１試合目ということで気持ちを入れすぎないようにした」

　まずは先制された直後の四回だ。一死走者なしからランドルフの外角直球を逆らわずにたたき、浜風に乗せて左翼ポール際へ運んだ。公式戦では８試合ぶりとなる３１号同点ソロ。すぐに試合を振り出しに戻し、六回の勝ち越し劇を誘発した。

　トドメは八回だ。３点リードの一死走者なしから、加藤の低めのフォークを一閃。因縁の左腕からバックスクリーンへ３２号ソロを運んだ。６月２９日の中日戦（甲子園）で３打席連発を放って以来の１試合２発で勝負を決めた。

　１１日の横浜戦（甲子園）で、加藤の頭部をかすめるような内角攻めに激高した。マウンドに、にじりより一触即発の状態になったが「過去は過去で終わったことだよ。嫌なイメージなんてなかったさ」とさらり。この余裕と切り替えが、アーチ量産の原動力になっている。

　２４日の球宴第２戦で（新潟）で放ったアーチに首脳陣は手応えをつかんでいた。前半戦最後の７試合はノーアーチだったが、和田打撃コーチは「（２本目のは）すごいうまく打っていた。（球宴で）バットが振り切れる形で戻ってきてくれた」と話した。お祭り舞台でも進化するところが、Ｂ砲のすごさだ。

　「優勝しよう」

　余計な言葉はいらない。シンプルなメッセージにチームのムードは最高潮。一丸ムードをブラゼルがバットで表現し、圧巻の逆転勝ちだ。貯金を今季最多タイの「１３」に戻した。

　本塁打争いトップに並んだブラゼルだが、その眼中にキングはない。

　「個人タイトルより、優勝がしたいんだ。自分の心に残るし、ファンの中にも残る」

　指揮官も選手もファンも思いは一致。目指すところは優勝しかない。最高のリスタートを切った虎が、最高のエンディングに向けて突き進む。

阪神・新井、執念Ｖ打！城島も続いたァ

しぶとく中前に弾んだ白球が、横浜の緊張の糸を切った。一塁上の４番が、軽く両手をたたくと、大きくゲームが動いた。新井の決勝打に、城島のダメ押し打。六回、流れるような猛攻で勝負を決めた。
　新井は首位奪取の歓喜に包まれたお立ち台で「誰かにまた、コメントが面白くないといわれるかもしれないけど」と先発に復帰したばかりの金本を思いきり意識した後、力を込めた。

　「必死に食らいついていきました」

　１－１の六回一死二塁。粘った後の９球目、チェンジアップに、体勢を崩しながら食らいついた。バットの芯に乗った白球が左前へ。平野が勝ち越しのホームを踏んだ。さらに二死後、金本の一塁強襲の二塁打で二、三塁。城島の初球攻撃が、中前へ抜けて２点を追加した。

　「あ～っショートゴロだ！！　と思ったら、普段守っているところにショートがいなかったね」

　三塁寄りに守っていた遊撃の右を抜ける適時打に“ジョー節”は全開。

　「数々の遊ゴロ、三ゴロを打ってきたのが無駄じゃなかったね」

　冗談混じりの笑顔に、勝利の味が漂った。

　序盤は均衡状態。三回一死二塁の最初の好機は、平野、マートンと惜しい当たりが相手野手のグラブに収まった。それだけに真弓監督は「ちょっと嫌な雰囲気だったけど、新井のヒットで点が取れて、つないで城島で追加点がとれてよかった」と試合を決した集中打を喜んだ。我慢して勝ち越し、突き放した。

　後半戦初戦を鮮やかな逆転勝ち。城島は「勝つ試合はこういう試合。理想というか、強いチームはみんなそうだけど、タイガースもそういうふうになってきた」と首を縦に振った。確かな手応えをつかんで、後半のスタートダッシュを切った。

　新井は「１戦１戦、どんな内容でも勝っていくことがすべて。最後の最後に、ゴールテープを１番に切りたいです」と満員のファンの前で、ナインの気持ちを代弁した。猛虎の核となる２人が、最後のスパートまで引っ張り続ける。

絶好調！阪神・平野が勝ち越し劇の口火打

六回の勝ち越し劇の口火を切ったのは、打撃絶好調の平野だった。中前にはじき返し、二盗。新井のタイムリーで生還した。続く七回にも左前打を放って４打数２安打。打率を・３５１５に上げたが、３安打の和田（中日）が・３５２２として、７毛差で首位打者から陥落した。もっとも、当人は気にする気配もなし。「明日も勝って、全部勝つという気持ちです」と目の前の勝敗に徹していた。

虎将、つながり重視「６番金本」ハマった

後半戦スタートと同時に、セ界の首位へ躍り出た。チームを象徴するような、今季２８度目の逆転勝ち。真弓監督は「うまく滑り出せたんで、よかった」と目を細めた。

　「本塁打だけじゃ、なかなか点を取れない。つないで点を取れれば、いいゲームになる」

ブラゼルの２発の印象が強いが、勝利を決めたのは六回。つないで奪い取った、３点だった。

　金本のクリーンアップ復帰が注目された後半戦。指揮官がスタメン表に書き込んだのは、前半戦の最後と同じ並び「６番・左翼、金本」だった。そして右肩痛から復調気配の主砲は、二回に右前打を放つと、六回二死一塁ではランドルフの１４０キロを強くたたき、一塁手のグラブを弾き飛ばす右翼線二塁打。城島の２点打につなげた。

　「この状態（並び）が一番いいかなと思ったんで。何か他に（打順を）変えるとこあるか？」

　つながりを最重視して動かさなかった打順は見事、ハマった。試合後、力強く言い切った不敵な笑みに、指揮官としての信念が垣間見えた。

　前半戦の課題に挙げていたセットアッパーにも光を灯した。完投できそうなペースで好投していたスタンリッジを下げ、八回から久保田をマウンドへ。復活を期す豪腕が無失点で切り抜け、藤川へつないだ。「どうしても藤川の前が安定感が欠けていたが、最近久保田がよくなっているし、勝ちパターンができつつある」。Ｖに不可欠な“方程式”構築へ、メドをつけた。

　セ界の頂点に立っても「あした、あさっての試合を取っていくことしか、考えていない」と冷静に足下を見つめたが、ファンへは「これからがんばって面白いシーズンにしたいと思います」と熱く宣言。面白くする手応えは、十二分にある。

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