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2007年02月02日

春に

この気もちはなんだろう
目に見えないエネルギーの流れが
大地からあしのうらを伝わって
ばくの腹へ胸へそうしてのどへ
声にならないさけびとなってこみあげる
この気もちはなんだろう
枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく

いらだちだ　しかもやすらぎがある
あこがれだ　そしていかりがかくれている
心のダムにせきとめられ
よどみ渦まきせめぎあい
いまあふれようとする
この気もちはなんだろう
あの空のあの青に手をひたしたい
まだ会ったことのないすべての人と
会ってみたい話してみたい
あしたとあさってが一度にくるといい
ぼくはもどかしい

そのくせこの草の上でじっとしていたい
大声でだれかを呼びたい
そのくせひとリで黙っていたい
この気もちはなんだろう

国語の学習に谷川俊太郎のこの詩がある。

学習後、暗唱を提案した。是非覚えて口ずさんでほしい詩だったから。

期限は、１週間の今日まで。

今週の月曜日からみんなの挑戦が始まった。最初の時だけ、国語のはじめの時間を少し使った。後は、休み時間や給食後の時間などを使って、一人ひとりテストした。
さすが、６年生。次々合格していく。

水曜日までに、２６人が合格していった。残りは、６人。
木曜日４人が合格した。残りは２人。
「明日が、最後だ。しっかり暗唱しておいで。」と伝えておいた。
二人は、決してさぼっていたわけではない。
しかし、もう４・５回失敗している。もう少しの完璧さが必要なだけだ。

今日、休み時間。二人が来た。
一人は、きっちり覚えてきて合格。しかし、後一人は、細かいところで間違えて不合格。
「もう一度だけチャンスをあげよう。お昼休みに練習しておきなさい。」
根が明るい子で、「ハーイ」と元気だった。
大丈夫だな・・・・と思った。

５時間目の理科の最初に挑戦させた。（ちょっと考えがひらめいて）

教室の前に堂々と立つ。
ボクは、教科書を持って審査する。（ホントはボクも覚えてしまっているのだが、審査員らしくするために）

「春に・・・」
始まった。
教室に、緊張が走る。
ボクは持っている教科書越しに、こちらを向いている全員の表情を見た。
誰も喋ってない。それどころか、暗唱を挑戦する一人のクラスメートの背中を祈るように見ている。

半分まで、すらすら来た！
「あの空の・・・」
いつも、「あの青・・・」の「あの」が抜けてしまう。
「・・・・あの青に手をひたしたい」

行った！

後ろの子どもたちもよく知っている。声のないガッツポーズをしている。
見渡すと、みんな口を動かして、応援するかのように口ずさんでいる。

第二の難関「あしたとあさってが」の行が抜けてしまうのだ。

「あしたとあさってが・・・・」
やった！

しかし、まだ安心はできない・・・・
女の子たちは、もう両手を会わせて祈るような仕草だ。

「大声でだれかを・・・」

もう、ここまでくれば大丈夫。
暗唱している子も、確信したようだ。急に早口になる。

「この気持ちは何だろう」
最後の一行を言い終わった。
ボクは何も言わず、じっと彼の目を見つめた・・・・・
彼も、クラスの子もみんなボクの一言を待っている。

「合格！」

彼も喜んだ。クラス中に拍手が鳴り響いた。歓声もすごかった。

後で、一言
「Ｏくんの合格は、彼一人の合格じゃない。このクラス全員が合格したと言うことだ。
おめでとう六年一組。きみたちは、すばらしい！」

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