tomorrow

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思い出のクリスマス。


子供の頃、僕は自分が大人になる事は想像が出来なかった。

せいぜい、西暦2000年まで、僕はきっと生きていて、

30歳を越えているだろうから、きっとお金も使い放題で、

楽しい毎日なんだろうなぁー??って事ぐらいだった。

小学生時分の僕は今考えるとマセタ小学生だった様な気がする。

毎日が楽しくて、朝から晩まで、遊んでいた。

流石に僕の親は見かねたのか、小学生3年生ぐらいから、

近所の個人で営んでいる塾へ行かされるのだった。

決して、僕の家は裕福では無かったが、両親は早くから僕が

苦労しない様にと通わせてくれた。

「順一、あなたは長男なんだから、しっかり勉強して、私立の中学へ行っていい学校へ行って、キチンとした会社に入ってちょうだい!!それが、私達に対する親孝行なのよ!」

母はよく僕にそう言っていた。

塾の先生は久美子先生と言って同じ団地に住む人で、

33歳で綺麗な先生だった。

子供は居なく、ご主人と二人暮らしのクリスチャン。

英語とスペイン語た堪能で、その他にお琴と、三味線も教えていて、腕前はレコード会社から、デビューする程だった。

教え子は僕を含めて4人だった!!

とてもアットホームな塾で、先生の家でご飯をご馳走になったり、塾へ行くのが楽しみだった。

久美子先生は、厳しくもあり、優しい先生だった。

「順一君は何で、簡単な問題とか間違えるのかなぁー??」

とよく叱られた。

しかし、その中でも、子供の頃と云うのは実に正直と云うのか、今思うと顔から火が出るような恥かしい事を言って
久美子先生を困らせたりもした。

「先生!!大人になったら、お金が無いよりあった方がいいですよね!!財布が軽けりゃ心も寒いですから!!」

久美子先生は僕に言った。

「そうかしら??私はそうは思わないは!!神は貧しい時も
富める時も私を幸せにしてくれるから、順一君はそう思わない??」

僕は久美子先生に言った。

「先生、神様って何処にいるの??目に見えないのにどうして信じられるの??僕はお金の方が大切だと思うけれど??」

「順一君、人は誰もいつか、この世から無くなるのよ!!
神様はあなたがこの世でいい行ないをして来たかどうかで、
神様の国に行けるか決まるの!!だからお金じゃないのよ」

僕は神様を信じていなかったし、先生の話はよくわからなかった。

                     続く。

久美子先生は、クリスマスが近づくと先生の家でクリスマス会を開いてくれるのだ!!

この日は早い時間から、先生の家に行き、クリスマスツリーの飾りつけをしたり、夕ご飯のカレーを作る手伝いをする。

ヤンチャな僕はいつも大騒ぎ!!同じクラスのお琴を習いに来ている、洋子ちゃんといつものケンカが始まる!!

「洋子ちゃん!!チャンとクリスマスプレゼント持って来た??」

僕はいつも気になる洋子ちゃんをからかった。

夕方になると、久美子先生の教会の友達のアメリカ人の牧師

さんがやって来て、イエス キリストの紙芝居を見せてくれるのだった。

マリア様が家を出て、馬小屋でイエスキリストを産んで、

その後の弟子の話、そして、何故クリスマスを祝うのか?

など、僕は子供心ながら、この時教えてもらった事が後に

大人になって意味がある事だとは、気がつかなかった。


その後僕は私立の中学を受験すると云う事で、久美子先生の塾を辞め、受験用の塾へ通う事になる。

西暦2000年を過ぎ僕は、クリスマスが来ると、先生の事を思い出す!!

本当はクリスマスは、神の誕生を祝うお祭りなのに、

僕の周りでは、そんな話を聞かない。

僕はクリスチャンでは無いけれど、その後旅をするたびに、
久美子先生の話を思い出す。

「順一君、辛い時は聖書をお読みなさい!!」

塾を辞める時、久美子先生はそっと僕に聖書を渡してくれた。

親には内緒だったが、大人になっても、僕の宝物として、大事に本棚にしまってある。

大人になって僕は本当に久美子先生に感謝している。僕は彼女が僕に与えてくれた様に見知らぬ子供達に接する事ができるだろうか??

クリスマスは馬鹿騒ぎする日じゃ無いんだよね!!

心から、愛すべき人達に幸せでありますように♪

と僕は祈るのだった。

メリークリスマス!!

                  終わり。


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