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アイラは話を続けた「私はどうしても、他人に自分の本音を話せない」「それで、その精神科の先生が言うには、本音なんて出さなくていいのですよ。カリメロって知ってますか?」「ああ。殻をかぶったヒヨコのアニメね。昔やってたね。」「うん。カリメロになりなさいって言うのよ」「どうゆうこと?」「だから、人前ではずっと殻をかぶって生きなさいって言うんだよね。それで、家に帰ったら、その殻をとってもいいって。」「殻ね。自分を偽って生きろって事?」「うん。だけどアイラはまだ、殻をかぶるのが苦手でね。それを一番理解してくれたのが今の彼でね…。会った時は本当に好きになれそうだったな~」アイラは少し涙ぐんだ。いつもは面倒なアイラの長話も今はとても安らぐ。それから3時間以上も、その彼の最近の暴力行為について聞かされた。僕はずっと、自分が卵の殻をかぶっている姿について考えながら、あいづちを打っていた。(2007)
June 19, 2007
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8年前に日本を離れたリンダ=リンダ11歳年上のソプラノ歌手。突然帰国した彼女は、3倍くらいに太っていた。顔も言葉もすっかり日本人じゃなかった。心と体の傷から流れたおびただしい量の血が、付着した僕の部屋を見てリンダ=リンダは叫んだ。「あなた、いったい何があったの?」僕は、毎日自殺未遂を繰り返している事を話した。「あなた、そんなに、その子が好きなら、格好つけなさいよ。誰よりもプライドの高いあなたなら、その子の幸せを祈って、黙って去りなさい。そして、その子の最高の思い出になってあげればいいじゃない。」あまりにもシンプルな助言は複雑な事を考えすぎて、何も考えられなくなった僕の脳に響いた。「そうだね。すごくわかりやすい。わかった。そうする。」僕は子供のように素直になった。リンダ=リンダは日本の音楽事情にうとかったので、ブルハもヒロトも知らない。だけど、リンダリンダを聞かせてあげたら、即席で、ものすごいハイレベルなハモりを入れてきた。ハイレベルすぎて、僕はいっしょに歌えなかったけどブロードウェイの劇場で、最前列にいるみたいだった。歌が終わってリンダ=リンダが言った。「さっきの言葉ね。8年前、夫に捨てられて泣いている私にまだ少年だったあなたが言ってくれた言葉なんだよ?だから私は泣くのをやめて、日本を離れたんだよ。思い出した?」そんな事があった事はまったく思い出せなかった。だけど、僕がプライドだけは誰よりも高いという事だけは思い出した。とりあえず、涙も血も止まったと思う(1986)
June 10, 2007
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僕とヒロは大きな街で生まれたので、今も大きな街にいる。実は、いろいろ積み重なってヒロの心の奥には深い傷がある。たぶん僕が一番よく知っていると思う。別に無理して明るくしているわけじゃないのだけどヒロはいつも笑顔でいる。僕はその笑顔が大好きなのだ。この街では人と人の心が簡単に触れ合ったりしない。誰もが心に巨大な壁を持っている。みんな寂しいのに みんな我慢している。それはわかっている。僕とヒロはキスもできないのだけど今日、僕は勇気を出してヒロの手をとった。ヒロは驚きもせず握り返してきた。がんばれ俺がついてると伝えるつもりだったのにがんばれヒロがついてると伝わってきた。実は、いろいろ積み重なって僕の心の奥には深い傷がある。たぶんヒロが一番よく知っていると思う。だけど無理してでも僕とヒロはいつも笑顔でいる。僕らは大きな街で生まれたので、お互いの心をこうやって大きな街で治療しあうのだと思う。(1986)
June 9, 2007
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幻想のような きらびやかな夜をあびて僕の悲しみは より深くなっていく酔っ払った学生たちの 馬鹿騒ぎに巻き込まれてわけのわからない怒りが こみあげる寒空にただタバコをふかして もう夜中も3時近くそれでも この街は静まらない 眠らないそして ここにいるから まだ僕はダイジョウブ(1991)
December 26, 2005
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パンはまるで現実だいつもパサパサと乾いているジャムはまるで夢だせめて甘いジャムがあれば生きていけるのにジャムは いつも瓶の中(1986)
September 3, 2005
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もしもぼくが空だったら こんなにも君を苦しめることもないだろうに笑いたくても笑うこともできずおびえたくても おびえられなくていつもショーケースの中で君はルリルリラ テュリルリラ1985
June 6, 2005
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1984
June 3, 2005
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May 25, 2005
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