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2008.08.23
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後ろ手にドアを閉め、溜息をつく。ごめん、ミリ。俺だって実家になんて帰りたくないんだ。一瞬だって離れたくない。だけど俺、ミリを早く抱きしめたい。・・だから、だよ?

エントランスを出、実家に向かうため、公園の方に歩き出す。途中、噴水に腰掛ける。心の中で、ヒロトに話しかける。なあ、兄貴、俺、間違ってないよな?大丈夫だよな?ミリと。。
そこで、ケータイが鳴りだす。一瞬ドキッとしたけれど、それはミリからの着信音。

・・もう?早いな。・・ミリも相当、限界だったんだ。

俺は、微笑んで、でも、急いで電話に出る。
「ミリ?」
沈黙・・。いや、泣いてる?しゃくりあげる音。
「どした?泣いてんの?」
どしたもこしたもないよな?俺が泣かしたんだ。ミリは小さな声で、

そんなこと言うミリが、どうしようもなく可愛く愛しく思える。苦笑し、
「どっちのセリフだよ。すぐ戻るから、待ってろ。な?」
急いで戻りながら思う。ミリからの電話。予想より早かったけど、展開的には予定通り。
・・でも、まだ、終わりじゃない。

ドアを開けるとすぐそこにミリが座っていた。
「ただいま」
「お、かえり」
見上げる潤んだ目。完全に泣き声、口はへの字になってるし。
「そんなとこ座って、何してんだよ。ほら」
俺は手を差し出す。だけど、ミリは掴まない。しゃがんでミリを見つめながら聞く。
「なあ、ミリ、・・俺、何か変わったか?」

「俺、確かに他の人とキスしたよ。だけど、それで何か、変わっちゃったか?」
俺の瞳には、ミリへの変わらない想いが溢れているはずだ。これまで通り、いや、お預けを食った分、きっとこれまで以上に熱く強く。緩く首を振るミリ。
「じゃあ、俺のこと、もう一度、ちゃんと受け入れてくれよ」
ミリは、俺を見つめながら、少し首を振り、顔を歪め、、
「・・ごめん、私、なんで・・?」

「それでも一緒にいて欲しいのか?さっきも言ったけど、襲っちゃうかも知れないぞ?」
「・・ケースケは、そんなこと絶対しないもん」
あ~、先手打ったつもりだったのに、返り討ちにあった気分。読まれてる。確かに絶対しないよ。ミリが嫌がるなら。無理矢理ヤるのも荒療治の1つとしてはいいかも、だけど。ってつい思ってしまってから、その鬼畜な考えを頭から追い出す。
「ったく、一生俺にガマンさせたって当たり前って思ってんだろ」
そう言った俺に文句ありげに、でも、黙って唇を尖らせるミリ。
「わかったよ。実家に帰るのやめる。さ、リビングに行こ」
言葉だけで促して、独り言みたいにぼやく。
「でも、もう、何日目だっけ。これ以上、そばにいてもできなくて、ガマンしきれなかったらどうすっかな。どうせ、ミリが一生触らせても、させてもくれないなら、、どっかで誰かと」
ミリが、後ろで足を止めた。俺は振り返って笑う。
「・・冗談だよ?」
「ひどい~っ」
「ごめんごめん。冗談冗談」
あっさりとだけ謝ってリビングに入る。ミリはまだ、怒ってるみたいだったけど、それ以上何も言わなかった。

ミリがパスタ、俺がサラダを作って、久しぶりの一緒の食卓。ぎこちなかった空気も、食卓では、すっかり日常を取り戻し、自然にほどけていく。楽しそうに話すミリ。(てか、聞けば、またあの新谷と飯食ってたし。今度は、お父さんも一緒だったらしいけど。思っきり面白くねえって顔してやった。オトナゲないな、俺。)
ただ、会話を交わすだけで、その笑顔を見るだけで、随分癒される。

食後もいつも通り、俺は、ソファで台本を読み、ミリはパソコン。

俺は、ミリが一緒に眠れないこと気にしないで済む様に、先に寝ることにする。
「俺、もう寝るわ」
そのままソファに横になると、驚いたようにミリが、
「今日も、ここで寝るの?」
そんなこと言われたら俺だって驚く。
「だって、触っちゃダメなんだろ?まだ」
言いながら、ミリの体に手を伸ばすと、やっぱり磁石の反発のように体を捩って逃げてるし。
俺は笑って、リモコンで電気を消し、
「おやすみ」
と言った。ミリはしばらくそこにいたけれど、結局、寝室に行った。
目を閉じ、今夜のやりとりを思い出してみる。・・上出来だろう、多分。
こんな感じで、ミリを少しずつ・・。でも、あんまり不安にさせ過ぎちゃダメだから、さじ加減が難しいよな、なんて考えつつ。。そして、一瞬眠りに誘われた、と思った次の瞬間、ミリの気配をすぐそばに感じ、目を開けた。
いつからそこにいたんだろう。ソファの前に座って、俺を見つめている。
「ミリ・・?」
呼びかけると、薄闇の中、ミリが、
「何もしないから、、私も、ここで眠っていい?」
俺は、また苦笑して、
「何もしないからって、、ミリさ、我慢するのこっちなんだぞ?」
ミリは、泣きそうに顔をゆがめて、
「だって、さみしいんだもん。そばにいたい。床でいいから、ね?」
「そんなことさせられないよ。和室行く?」
ミリは、それには答えず、ポツリと呟く。
「・・本当に、、他の人と、しちゃう?」
そんなに気にしてたんだ。俺は微笑んで、
「しないよ」
「・・本当に?」
縋るような問いかけに、またイヂメ心で。
「多分」
「っ!」
「冗談だよ」
「笑えないっ」
「ごめん。絶対、しないよ」
「・・ケースケ」
「なに?」
「綺麗な人と、・・キスして、心、揺れた?」
「まさか。・・ちゃんと分かってるだろ?」
微かにうなずいたミリ。俺は聞く。
「それでも、体は受け付けてくれないんだ?」
「・・自分でも、分からないの。体が勝手に」
「いいよ。ミリ。ミリが受け入れられないなら、仕方ないよ。だって」
俺はそこで言葉を切る。さ、一気にカタをつけるか。
「?」
「だって、元々、ミリが、俺を欲しがったわけじゃないもんな。俺がミリを欲しくて欲しくて、それでやっと受け入れてくれたんだもんな」
「そんなことっ」
「・・実際、愛してるって言われたこともあんまりないし、キスだってミリからは一度もない。Hだって、したがってくれたことないし」
「それは、、だって、ケースケが・・」
俺は取り合わず、続ける。
「俺は、俺の心も、俺の体も全部を使ってミリを欲しがってきた。求めてきた。そうせずにはいられなかったから。でも、ミリはそうじゃなかった。キスシーンのことがショックなのは分かる。傷つけて悪いと思ってる。だけど、ずっと拒否されて、俺、段々自信がなくなってきた。・・ミリは、俺のこと、愛してないのかなって。ただ、守ってくれる、ミリを望んでくれる相手がいれば誰でもいいのかなって」
「・・なんでそんなこと・」
「なあ、ミリ。俺が、他の女としてもいい?」
「ヤだ」
「そこは即答なんだ。・・じゃあ、俺のこと、欲しい?」
「・・って?」
「心は、今も全部ミリのものだよ。でも、体は、、宙ぶらりんだろ?」
「・・・」
俺は笑って、
「そこは即答じゃないのか。・・ま、いいや。俺は、ミリを愛してるから、他の女を抱いたりはしない。抱けない。だけど、もうミリが、このまま俺の体受け入れてくれないならなら・・」
「?」
俺は最後の追い討ちをかける。
「俺がこの先、キスするのも抱きしめるのももう、ろくに知りもしない女優さん達だけになるな~。あ、そういえば、今、俺の唇、最後の感触はミリじゃなくて、。。・・ッっ」
感触を思い出すフリをしかけた俺に、突然、ミリは、思いっきり抱きついて、キスしてきた。
それも、くらくらするような、濃厚なキス。
すげーっ、ミリっ。やればできるんじゃんっ。、、久々のミリの感触。・・下半身にまでキいちゃうよ。エロ心に支配されそうになりながらも、心底、本当に心の底まで、ほっとする。あ゛~~っ、よかった。ミリが俺の中に戻ってきてくれて。
こうしてミリの中にあるはずの俺への愛情、俺の仕事への気遣いから、素直に出せなかった嫉妬心を、しっかりと刺激することが、俺のこと、「受け入れる」というよりも、「奪い返す」気持ちにさせることが、元通りになるための、近道だって思ったんだ。
危険な賭け、だったけど。一歩間違えば、完全に嫌われたかも。
でも、ま、、結果オーライ。いつものことだ。
心の奥底で、ホっとしている間にも、濃厚さを増すミリのキス。
抱きしめてぇ~っ。
だけど、俺は、拳を握り締め、我慢する。唇を離し、
「他の人とのキスのことなんて、私が忘れさせるもんっ」
顔をすぐそばに近づけたまま、俺の頬に手を添えて言うミリに、俺は笑って、
「・・そんなの最初から、覚えてないよ」
ミリは、不満そうに、
「・・なんで、、抱きしめてくれないの?」
俺は、わざと両腕をミリから遠く離して、
「腕も体もスネてんだよ。あんなに拒絶されたから」
「もうっ」
俺は、ミリの乱れた髪を耳にかけてやりながら、エロい目で見て言ってやる。最後の仕上げ。
「ミリ、俺をもっと欲しがれよ。体ごと、ミリに、求められたい。愛されてるって感じたい。俺のこと、芝居に、仕事に、キスの相手に取られたくないと思うなら、自分で取り返せよ。そして、もう二度と離さないって言え」
「・・イヂワル」
可愛く睨んでそういってから、ミリはまた我慢できないように、俺にキスをする。
「誰にも、何にも、渡さないよ、ケースケのこと」
「分かってる。俺は、最初から最後まで、ミリだけのもんだもんな?・・・ほら、体も欲しがってやって。体にも、求められてること分からせてやってくれよ」
そういってやると、ミリは恥かしそうに微笑んでから、体ごと俺の上に覆いかぶさり、唇に頬に耳に首に肩に胸に、そしてもっとその先に、俺の服をそっと脱がせては、指を、唇をずらしていく。いい子だ、ミリ。俺はそっと頭を撫ぜ、恥ずかしそうな、でも、必死で初々しいその動きに、身を任せる。
「ねぇ、もう、、これ以上、どうしたらいいのか、・・分かんない、、。ねぇ、して?」
ミリが、限界まで頑張って囁く。俺は、やっと我慢を解き、心のままに全身でミリを求める。
たちまち可愛い声をあげ始めるミリ。
俺は堪らず、下になったまま、ミリの下着をずらし、中に入って突き上げた。
「ぁあんっ、ケ、、スケ」
体を反らそうとするミリの腰を強く引き寄せる。それでも逃れようとするミリが俺を刺激する。しっかりと腰を抱えてやると、自然に、でも、ぎこちなく、動き出すミリ。切ない吐息とともに。ああっっ、たまんね、ヤバイ。俺は、ミリの中に入ったまま上になり、主導権を奪い返す。深く深くミリの奥に入る。久々の、そして、あまりの快感に、歯を食いしばって。だけどそのガマンもほんの束の間だった。ミリが、俺の背中に手を回し、しがみついて・・。そして、俺も後を追う様に・・。

ミリは、息を切らしたまま、俺に抱きついて、もう一度キスをした。
「ケースケ。愛してる。。」
最高の、言葉まで添えて。
「俺も愛してるよ、ミリ」
腕の中、あっという間に眠ってしまうミリを、愛しさのあまり抱き寄せる。可愛い寝顔。ずっと寝不足だったんだもんな。やっと腕の中に戻ってきたミリ。守るべきミリの寝顔を取り戻せた安堵の中、俺も、急速に眠りに落ちていく。

ミリ、

俺、きっと、一生忘れられないよ、

ミリからの、first kiss。


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最終更新日  2008.08.23 00:32:36
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