加納尚明のつぶやき日記

加納尚明のつぶやき日記

公私融合へのパラダイムシフト(12.30UP





書籍『NPOが北海道を変えた。』(インテリジェント・リンク社発行)
に寄稿したメッセージです。


     ~~~ 公私融合へのパラダイムシフト ~~~ 


「公私混同」とは、「公的なものを私的に利用すること」。では、「公私融合」とは、いったいどんな意味だと思われるだろうか?また「協働」という言葉を聞いたときに、誰と誰の協働を一番にイメージするであろうか?
私は、市民活動を始めて約5年になる。年数は長くはないが、多くの人との出会いやさまざまな活動をとおして、新しいNPO時代に向けてとても強く想っていることがある。それが「公私融合」である。

活動を進めていくには、「お金」が必要である。この「お金」をどのようにして継続的に確保していくかは、NPO共通の悩みである。会費、寄付金、助成金、事業収入など収入はいくつかの項目に分類される。この中で自らお金を生み出すのは「事業収入」である。そして事業収入は大きく二つに分類される。一つは「行政からの委託事業」、もう一つは「自主事業」である。行政からの委託事業は、確かに団体にとっては有り難い収入であるが、その拠出者は、国民であり、税金である。極力、税金が投入されなくても事業を実現できるように考えていく必要があるので、「行政からの委託事業」による収入をただ当てにするだけではいけない。
そこで、「自主事業」による収入を確保、拡大していく必要があるのだが、そうたやすいことではない。多くのNPOが悩んでいるだろう。その解決のキーワードが「企業との協働」であり、「公私融合」なのだ。

多くの人は、“企業=営利を追求=NPOとは相容れない”と思っているのではないだろうか?私は会社員である。営業職という仕事柄もあり、多くの企業の経営者やビジネスマンと出会い、仕事を共にしている。決して、企業とNPOが相容れないとは思わない。「企業は人なり」という言葉があるように、企業もNPOと同じように「人」によって成り立っている。企業にいてもNPOにいても本来、人は「善」であり、社会の役に立ちたいのである。ただ、企業にいると社会の役に立つ姿が描けなかったり、関わり方がわからなかったりするだけなのだ。一方、企業は、経済活動をしている訳だから「お金」を得る術には長けている。

「現代社会は、行政セクター、企業セクター、NPOセクターに区分けできる。行政も企業も行わないが、しかし社会には必要とされていることがあり、それを行うためにNPOセクターが存在する」という考え方がある。私は、これからの社会は、行政セクターはよりミニマムな存在を目指し、企業セクターとNPOセクターは、それぞれが独自に活動を進めるだけではなく、協働による新たな価値の創出を推し進める必要があると考えている。
そして、この企業とNPOとの協働への取り組みは、日本中で始まっている。北海道でも札幌通運株式会社の「はこび愛ネット」事業やNPO法人ボラナビ倶楽部の「ごちボラ」事業、旭友ストアーの「がんばれNPO!ポイントあげちゃうぞ」事業などが始まっている。社会に受け入れられるために、これら寄付型の協働事業の形態は分かりやすい。

今後、さらに企業とNPOとの協働を推し進めていくには、寄付型の協働事業以外に、業務提携型の事業形態を創り出していく必要がある。企業とNPOのそれぞれの強みを活かして一つのサービス(価値)を協働で提供・運営していく方法である。企業同士が業務提携をして、お互いを補完し合うのと同じ発想である。このお互いがお互いを補うことができることによって、パートナーシップとしての信頼関係が構築できるのである。

では、いったいどのようにすれば企業とNPOの事業を創り出していけるのか?この答えはほんとうに難しい。その答えは、新しい社会の姿を創る人の生き方から生まれるものと考えている。その生き方こそ「公私融合」なのである。仕事は仕事、プライベートはプライベートと分けて考えることをせず、仕事をしながらプライベートすなわち一個人としても社会の一員としての貢献感や充実感を味わえるように仕事に取り組むという発想である。簡単に言えば、『自分の会社や仕事でやっていることに対して、ルールを変えたり、発想を変えたりすることによって、NPOといっしょにできることがあるのではないか?という考え方をもって仕事をしよう!』ということである。常にその発想(パラダイム)を持っていれば、きっと具体的な個々の成果として答えがでてくる。それはNPOとの協働が進んでいる企業には必ず、その発想を持った活き活きとした人がいることで証明されている。私が共同代表を務めているNPO法人札幌チャレンジドでも、いくつかの企業と業務提携型の協働事業に取り組んでいるが、NPOへの理解や柔軟性に富む企業側の人の存在がある。皆、企業の利益と社会貢献の両立を目指して、活き活きと仕事をしている。

日本では圧倒的多数の人が企業セクター(経済活動セクター)で働いている。だから企業に勤めるあなたが「公私融合」すれば、きっとすばらしい社会が創れるのだ。当然だが、行政セクターに勤めるあなたにとっても同じである。行政マンであるとともに市民でもある訳だから。
一人ひとりが自分スタイルの「公私融合」へパラダイムシフトを実現したときに、北海道は、新しいNPO時代を開拓し、未来に向かって活き活きと輝くであろう。





© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: