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2005年12月25日
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カテゴリ: 戦争映画
1960 東宝 監督:松林宗恵 特撮:円谷英二
出演者:夏木陽介、藤田進、佐藤充、鶴田浩二、三船敏郎ほか
118分 カラー

 東宝初のカラーワイド戦争映画で、円谷特撮が評判を呼んだ大作。ハワイ真珠湾攻撃にも参加した第二航空戦隊旗艦の空母飛龍を中心に、ハワイ真珠湾攻撃、マレー沖海戦、ミッドウェー海戦で飛龍が撃沈されるまでを描いている。今の特撮技術から見れば、はるかに劣るとはいえ、戦前の「ハワイ・マレー沖海戦 (1942)」から続く伝統的な円谷特撮の真骨頂が発揮された、当時としては最高峰の技術である。撮影所に3,000坪あまりのプールを用意したハワイ真珠湾攻撃、ミッドウェイ海戦シーンのスケールの大きさ、精巧なミニチュアを用いた航空機や艦船の飛行・航行シーンは迫力十分だ。若干のぎこちなさは、時代を考えてみればそれはそれで微笑ましい。ただ、こうした特撮を見るにつれ、本物の艦船を用いた撮影ができない、敗戦国日本を痛切に感じざるをえないのも事実なのである。
 東宝の全力を傾けた大作だけあって、出演者も豪華である。山本五十六大将役に戦記映画には欠かせない藤田進をはじめ、山口多聞少将に三船敏郎、友成大尉に鶴田浩二と大御所が揃う。しかし、これだけの役者を揃え、特撮技術を駆使しているのだが、全体のストーリー展開はいささか心許ない。ハワイ開戦からミッドウェイまでという幅広い戦域を対象にしていることや、今から見ると脚本や編集技術に稚拙さが残るのは否めない。特撮技術におんぶしすぎた甘えとも言えるかも知れない。それは、エンディングの展開にも現れ、締まりのない映画になってしまっている。主人公役の北見中尉という設定があるにも関わらず、焦点が絞り切れていない故に、唐突な場面が多い。
 基本的には雷撃機搭乗員の北見中尉を中心にした作品であるため、航空戦が中心に描かれているが、艦船の描写も侮れない。実物大セットは空母赤城の艦橋と甲板が製作されており、濃緑色迷彩の零戦や艦攻、艦爆機が用意されている。ただ、現在では真珠湾攻撃の零戦は灰緑色というのが通説なので、その辺りは違和感がある。ミニチュア機は空母からの発進と空中編隊飛行及び空爆シーンがメインとなる。ハワイ攻撃時の谷間の通過シーンは「ハワイ・マレー沖海戦」の映像の復活である。
 艦船シーンはハワイ真珠湾のシーンが秀逸であるが、「ハワイ・マレー沖海戦」に比べると、カラー画像のせいなのか、いささか粗が見えてしまう。秀逸なのは残念ながら空母赤城、蒼龍、飛龍の撃沈シーン。洋上に浮かぶ大破した空母の姿はミニチュアである事を忘れて感慨に浸ってしまう。
 唯一の実機は、生き残った北見中尉が南方へ転属するシーンで登場する。それまで三座の艦攻に乗っていたはずなのに、複座なので何故だろうと思ったら、なんと濃緑迷彩塗装のAT-6テキサンなのであった。コックピット後方にレーダー?機器にようなものが取り付いている。この場面で操縦士が「内地の見納めに旋回します」と言うと北見中尉が「いやその必要はない」と目もくれずに南方に飛んでいく姿は泣かせる。戦勝に酔っていた北見が戦争のむごたらしさの現実を噛みしめている場面である。
 確かに、本作は大作なのだが、音楽・映像・構成ともに当時の日本映画の限界は感じてしまう。ミッドウェーでの大敗と作戦失敗の悔しさを噛みしめつつ、ダブルで衝撃を受けるのであった。

興奮度★★★
沈痛度★★★★
爽快度★★
感涙度★★★



 昭和16年12月8日、第二航空戦隊旗艦空母飛龍の北見中尉は、友成大尉操縦の艦攻偵察員としてハワイ真珠湾攻撃に参加する。見事なまでの奇襲攻撃は大成功をおさめ、北見中尉の艦攻も見事魚雷を命中させた。
 正月に休暇で帰省した北見中尉の実家では、町中の人々が集まり武勇伝を聞きたがり、すっかり英雄となっていた。母親一人の北見は幼馴染みの啓子と結婚することを意識する。
 その後、北見は南方作戦に従事し、ポートダーウィン空襲、英蘭連合艦隊攻撃、インド洋作戦など華々しい戦果を上げる。そして、北見は今度内地に帰ったら結婚しようと決意する。友成大尉も戦友の松浦中尉も祝福してくれる。
 内地に帰った北見は啓子と祝言を上げることとなる。しかし、祝言の朝、司令部より直ちに帰隊せよとの電報が届く。北見は啓子に母親を頼むと言い残し、本隊に帰る。いよいよアメリカ空母艦隊との決戦であるミッドウェー海戦が開始されるのだ。
 空母飛龍の艦長は加来大佐、第二航戦司令官は山口少将である。作戦は第一次攻撃隊でミッドウェー島の米軍基地を叩き、それに呼応して出てきたアメリカ空母を第二次攻撃隊が叩くというものだった。各艦の第一次攻撃隊が出撃する。友成大尉、北見中尉の艦攻も出撃するも敵戦闘機、敵高射砲の反撃が強く、思ったほどの効果があげられなかった。友成大尉は艦隊あてに「第二次攻撃の要アリ」と打電する。第二次攻撃隊は艦船攻撃用の爆弾装備であったため、赤城の艦隊司令長官南雲中将は対応を悩む。しかし、効果不十分では夜半の陸軍上陸に支障が出ること、索敵機から敵艦隊発見の情報がないことから、魚雷を陸用爆弾に換装させることを命令する。その間に敵機が来襲するも敵陸上基地からのものと判断され、戦闘機によってほとんどが撃退される。いよいよ換装が完了しようかという頃になって、利根の索敵機から敵艦隊発見の打電が入る。山口少将は陸用爆弾のままでも敵空母艦隊へ攻撃をかけるべきと進言するも、艦隊司令部は再び魚雷への換装を命じる。
 換装が完了し、攻撃を開始しようとするが、すでに艦隊上空には敵攻撃機が飛来していた。またたく間に空母赤城、加賀、蒼龍が被弾し戦闘不能に陥る。飛龍は幸い被弾することはなかったが、もはや日本軍の戦力は1/4となっていた。
 ただ1艦残った飛龍は全機をもって敵空母攻撃を敢行する。登場編成に変更があり、北見中尉は友成大尉とは別の機に搭乗する。敵空母に攻撃をかけた飛龍攻撃隊は見事空母一隻を撃沈するも、友成大尉は被弾し敵空母艦橋に突入していた。また、戦闘機隊の松浦中尉も被弾し、北見の誘導でかろうじて飛龍に帰還する。
 その頃、蒼龍、加賀は沈没し、赤城も自沈させられた。だが、残った飛龍も先の攻撃で損害を出し、飛行できるのは艦攻2,艦爆1、戦闘機2の計5機となった。山口少将はついに最後の覚悟攻撃を決意。北見中尉がその任務につくことになる。しかし、発艦直前に敵機が来襲。ついに飛龍も被弾炎上し、総員退艦命令が発せられる。北見中尉は負傷した松浦を探しに行くが燃えさかる火の手に遮られて近づけない。駆逐艦風雲収容された北見は、ついに魚雷で自沈処分される飛龍を目撃する。艦橋には山口少将と艦長を残し、機関室に閉じこめられた機関員や逃げ遅れた負傷者達を乗せたまま飛龍は海に沈んでいく。戦勝に酔っていた北見は戦争の現実をまざまざと思い知らされるのだった。
 内地に戻った北見らは箝口令のため、手紙も外出も許されなかった。内地のラジオではミッドウェー海戦での大勝利を報じている。北見の実家ではそれを聞き、母親と啓子が無事を案じている。しかし、連絡することも許されず、北見ら生き残りの兵は南方最前線への配置転換を命ぜられる。その移動の際に「内地の見納めに旋回します」という操縦士に北見は「いや、その必要はない」と機を南方に向けるのであった。



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最終更新日  2005年12月25日 09時50分47秒
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