Larry Collinsの小説を原作とし、ノルマンディ上陸作戦50周年を記念して製作されたと思われるテレビムービー。監督はインド生まれで英米のテレビムービーを多く手がける人物だが、本作がどのような経緯で制作されたのかは謎が多い。178分という長尺ものはいかにも英国テレビムービーらしいが、上映は 1994年にアメリカで行われている。日本ではかつてVHSとして販売されたのみ。 ストーリーはノルマンディ上陸作戦時を舞台にしてはいるが、実はその裏で行われていた、連合軍上陸地点を巡るスパイ情報戦がメインである。史実でも、連合軍はパットン将軍を架空部隊の司令官に仕立て上げ、ノルマンディー上陸を秘匿するために、パ・ド・カレー上陸情報を流してドイツ軍を騙した(フォーティチュード作戦)わけだが、本作もそのカレー上陸偽情報をいかにドイツ軍に信じ込ませるかといったスパイ情報戦が描かれている。カレーの軍事施設破壊工作も実際に行われており、本作で描かれている英国情報部員のスパイ活動と破壊工作が、果たしてどこまで史実なのかはわからないが、物語としてはなかなか面白いものである。 約3時間という長編にもかかわらず、適当な量のエピソードを挿入することにより、さほど中ダレすることなく楽しむことが出来る。というのも、本作は単に時系列にスパイ戦を描くだけでなく、サスペンスドラマ的な謎解きが多く設定されているからである。登場人物も適切な量に抑えられており、謎解き物にありがちな複雑な人間関係でストーリーを見失うことはない。最後の最後まで二重スパイ、裏切りなど真相が見えてこないのはハラハラする。ただし、スパイの結末は決してハッピーエンドではなく、かなり重い内容であることは覚悟する必要がある。
VHS版で視聴したためか映像はやや不鮮明で、1994年制作とは思えないレベル。ロケはイギリス、フランスあたりで行ったと思われるが、大がかりなセットを用いたようには見えない。登場する兵器類としてドイツ軍戦闘機に扮したものと連合軍戦闘機・連絡機に扮した機体が実際に飛行している。ドイツ軍戦闘機の2機編隊飛行場面では、スピナー下の吸気口の形状が独特で尾輪が出たままになっている機体が出てくるが・・・良くわからない。ホーカーテンペストかタイフーンのいずれかのような気もするのだが。続いて英国上空の偵察に来るドイツ軍機は明らかにホーカーテンペストMK.II(シーフュリー)。一方、英軍機としては、迎撃にあがるスピットファイアMk.IIが2機のほか、連絡機として上翼単葉の機体が登場する。なんとこれはFieseler Fi 156 Storch(シュトルヒ)なのだ。いずれにしても、他の映画ではあまり見かけない機体も登場し、どこからの借用物なのかが気になる。