アルハンブラ宮殿と居酒屋


5月12日21時53分現在の私はアルハンブラ宮殿を観たい.
 なに青臭いことを,と思われるだろうか?
ペルシャに通ずる文様が私の心を魅了する.

 学生時代,その文様に心奪われ朝から独りで見続けていたことがある.気が付けば夕刻,あたりは薄暗い.
 独りアルハンブラを後にしたときにはすっかり夕暮れとなっていた.

 とぼとぼと心細く歩いていると左手にぽつんと一件の居酒屋.
小さな店ではあるがスペイン人特有の明るさを思わせる.
オレンジ色に輝くランプが漏れていた.

 当時の私には夕暮れ時に独りで居酒屋に入る勇気はない.第一,いくらスペインといえども身の安全の保証はない.
 できることならワインとドライマティーニくらいひっかけたかったな・・・と,その店を後に宿へと急いだ.

 可能なら今この時間にアルハンブラの文様に触れ,時を越え日常を忘れて..... 
 あのとき悔しい思いをしたあの居酒屋でちびちび酒に浸りたい.




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