
神谷美恵子著「生きがいについて」(みすず書房)作者は、精神科医。温かさと知性と努力の人と
紹介されている。「生きがい」とは、「世に生きているだけのねうち、生きるしあわせ、利益、効
験。」と辞書にある。欧州では、生きがいにあたる言葉はない。「生きるに価する」「生きている
価値または意味」がある。如何にも日本語の「曖昧さ」を示している。
生きる喜びが最も体験されるのは、出産直後の歓喜は、女性の生きがい発見の瞬間だという。更に
赤子の示す生の喜悦は動物のもつ本能の迸りでもある。官能の陶酔はどうだろうか。生命力の発現
としても刹那でしかない。それは生きがいではないだろう。本当に生きているという感情は、生の
流れはあまり滑らかであるよりか、寧ろ生きることに夢中で努力している時であり、生きるのが苦
しく辛い時にこそより強く感じるものがあるのではないか。ある中年の婦人がやむにやまれぬ向学
心で大学の籍を得た時に、「これでやっと望み通り好きな仏文学を一筋に学べるようになり、何か
体の内からうれしさが湧き上がってくるようです。」といったと言う。
苦しみの中に生きがいを覚えるという心の姿は、尊いだろう。それは宗教家だけのものではないは
ずだ。それは、その目標が達成されるかどうかは、真の問題ではないだろう。
マルローの「ほんとうの人間」(authentic person)とは、人類の一員である面が多い人だという。
強者という「不当利得」を得ているものは、弱者に対して、その利得を返還せねばならない義務
があるだろう。
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