<夢発信> az☆我が道を行く

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父とコンビニ




4/28(水)

父とコンビニ

昨日買ったチョコレートを食べていたら、父が買ってきてくれたチョコを思い出した。

一時帰国後、台湾への再出発を待っていた日々。
ちょうどその日は父の仕事が休みだったので、昼、父と二人で家にいた。
父が、コンビニに行くが何か買ってほしいものはあるかと訊く。
私がチョコが食べたいと言うと、どんなものがいいかとまた訊く。
適当でもよかったのだが、板チョコが食べたかったので、大体こんなものが食べたいのだと説明した。

数十分後、帰って来た父は、真っ先に袋の中から私のチョコを出し、これでよかったかと訊いた。

きっと、コンビニの中でしばらく迷っていたことだろう。
小さな商店が好きな父。
レストランよりも古びた小さな食堂が好きな父。
新しいものに馴染みにくい父がコンビニから出て来たのを目撃した時は、本当に驚いたものだ。
そんな父が、娘のためにどんなチョコがいいのかと悩んでいる姿を、容易に想像できた。
真っ先に確かめたのは、これでよかったかと不安だったからかもしれない。
チョコ一つ。
娘の希望通りのものを買いたかったのだろう。

不器用な父である。
幼少の頃、私は母ばかり追いかけていた。
私には無口な父が何を考えているのか分からなかったのだが、父からしたら一番目の子どもが自分になつかなかったのはショックであったろう。
帰宅すると真っ先に私たちの寝室に行き、寝顔を確認する父の愛情が、その頃の私にはさっぱり理解できなかった。

20歳を過ぎ、大人と言われるようになった今。
少しは父の気持ちも察せるようになってきた。
父はただ、言葉が足りないだけなのだと。
自分からどう話しかけていいのか分からないのだと。
だから不器用な背中を子どもに向けて、一人で三味線を弾いているのだ。

父は今日も、2人の子どもが出て行ったあの家のあの場所で、背中を向けて三味線を弾いているのだろうか。
甘いチョコをかみしめながら、しばし懐かしさに浸った……。




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