2007.06.02
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カテゴリ: MEIGEN集




といっても、ベテランの先輩とコンビでやっていくので大したことはない。
多分。

そして‥
その先輩42歳を、「この人本当に恐ろしい人だなぁ」と思った、
表題の一言が今週の名言である。




コンビで向かった、その仕事の交渉の席。
相手は、我社が最も恐れる販売代理店の巨星だ。
偉い人、若いやり手、新人君というキャスティングで先方は向かい側に座る。




「どうして出来ないんですか。社内にも社外にもうまく言ってくださいよ」



若いやり手は予想通りどんどん押してくる。
高校も大学も超一流と聞いたことがある。


・・当初、この販売代理店は、Bという企画をやりたかった。
しかし、企画Bでは倫理規定上、我社も、我社の関係会社もうなずかない。
だから、まず企画Bから毒を抜いた企画Aを持ち込んできたのだ。
我社がうなずき、話を進める段階で先方がB企画への変更を求めてきている、
そして、話せば話すほど、どんどん毒の含有率が増していく・・
大まかにはそういう状況だった。


「あなたたち営業でしょ。そのくらいまとめるのが当たり前でしょ
・・多かれ少なかれそういうことでメシ食ってるじゃないですか」



営業というのはそこまでやらなければならないのか・・。


「いやいや。この話というのはね、
最初にボタンのかけ違えからスタートしているんですよ。
だから、まずはそれを丁寧にかけ直さなきゃいけないんですよ」


先輩は、にこにこしながら厳しい口調で言い返す。






「あっ」


話のところどころで、相手の虚をつく。



・・・



「なんでC案(Bにさらに毒を強めたもの)じゃいけないんですか
B案とどう違うと言うんですか。
営業として上手く話して、通してくださいよ」


「だからね、今は、A案とB案のボタンの掛け違えを、内部的にも対外的にもなおす
作業をしているんですよ。それでC案を約束なんて、出来ませんよね」

「えっ、何でですか・・」

この際、話を白紙に戻してしまおう、とは言わない。
先輩は、同じ説明を、徐々に語気を強めながら繰り返す。
結局、お互いに持ち帰って検討ということになった。


* *


「あいつ、頭はいいけどダメだなぁ」


帰り道、先輩は笑顔を崩さず話す。


「詰め将棋で言うと、こっちがもう最後の駒を握っていて、
『これ以上話を進めると、アンタ詰んじゃいますよ』っていうことが、
あれだけ言ってまだ分からないんだよなぁ。
こっちはそれを笑いながら言うか、怒りながら分からせるかっていうことだけだな。

・・・詐欺師としては、こっちの方が上だからね」



先輩の笑った猫のような細い眼は、
夕日を受けて不気味に光っていたのだった。


この春転勤してきたこの先輩は、営業一筋。
マーケティングの本を月に4冊は読むという。


ひさしぶりに、僕は今、「すごい」と思える人を、見ている。







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Last updated  2007.06.02 14:40:38
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営業一筋はすごい!  
 今晩は。フランク・鰤杜です。
 営業一筋はすごい。きったはったでやってますからね。僕みたいな人間が勤まる訳がありません。ということで、二年で首になりましたね。でも、少し怖かったですね。最後の駒を握りたがってましたから。
 2ヶ月前に取締役から呼ばれて戻って来いといわれましたが、断りました。
 アディオス (2007.06.02 20:34:37)

Re:営業一筋はすごい!(06/02)  
kirin74  さん
フランク・鰤杜さん、こんばんは。
自然に双方が収まる場所というのが、一番いいと思うのです。
僕は結局どこに収まることでしょう。。
アディオス
(2007.06.02 23:28:36)

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