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自由に楽しく生きよう



 最初は週に三日、一日五時間ずつ働いていたが、好評で次第に需要がが増え、事業拡大の必要に迫られた。さて、どうしたらいいか?

 上野の答えは簡単。「おやめなさい」。はたして週に六日、一日八時間ちまきを巻く生活に変えたいのか。もし営利事業なら事業拡大の機会を逃す手はない。しかし、ワーカーズ・コレクティブという働き方をしているのは、後の週三日の自由を確保したいからではなかった。仕事を手段としてではなく、自分たちの楽しみや生きがいとして、仕事もやり他のこともやりたいと考えて始めたのだから、仕事を増やすことはない、と。

 リチャード・カールソンが何かの本で、大学で勉強したいというカウンセラーに助言していたのを思い出した。そのカウンセラーは人気があって、一日にたくさんのクライエントの相談にのっていた。僕が以前精神科に勤務していた時、多い日で七人とか八人のカウンセリングをしていた。一日が終わると、お願いだから誰も僕に話しかけないで、といいたくなるほど疲労困憊した。

 このカウンセラーは自営だからカールソンの助言を実行できたのだと思うが、大学で学ぶ時間を作るためにどうしたか。カウンセリング料を二倍にしたのである。実際問題どうだろう、はたして僕がカウンセリング料を二倍にしたら、どれくらい残ってもらえるだろう…あくまで計算上のことだが、もしも半分の人が残れば収入は同じで時間は確保できるわけである。

 僕は精神科に勤務していたのでこのようなことはできず、自分が本当にしたいことと常勤の仕事を天秤にかけ、とうとうある日辞める決心をした。

 神谷美恵子の日記を読むと、若き神谷の悩みは医学と文学を両立できるかということだったことがわかる。「文学と両天びんの自分の不純な心をやましくも思う」。「文学はあくまでもネーベン(副次的)えあらねばならぬ。それは、このあまりにもrigoureux(厳格な)道を和らげてくれるものともなろう。しかし文学をして私の主使命を妨げしめてはならぬ」

 上野はこのあたり神谷のような悲壮感なしにいってのける。人生をたった一つの収入源に結びつけそのために自分の能力や生き方を特化する人を「専門家」というが、生きることに専門家なんかいるわけないのだから、専門家にならない生き方を選ぶのも「あり」だ、と。

 複数の収入源を持ち誰からも雇われない自営業、より正確には個人事業主、フリーランス(マルチ・インカムのセルフエンプロイド)として生きるのも「あり」だ、という。

 フルタイムの正社員であることがすべての人のスタンダードな生き方だと考えられていた時代はもう終わろうとしている…

 今の僕のように生きることもオーケーなんだ、と思えた。若い頃に学んだ学問だけにしがみつくことはないだろうし、そこから発展して違う分野を究めようとしてきているわけである。収入源は複数あっても全体としての収入が少ないのが問題なのではあるが…お金はないが、時間持ちというのも悪くはない(若い時は皆そうだった)。とはいうものの、時間も最近あまりなくなってきたのだが、好きでやっているのだから満足している。



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