沢木遥の「幸せ力をつける練習日記」

沢木遥の「幸せ力をつける練習日記」

2004.09.12
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「寝る前に1編、短編小説を読みなさい」

理由は忘れたが、文学を理解するなら寝る前の短編がいいんだそうな。

それで、いまだに私は時々、寝る前に短い小説を読む。
昨日は「プラナリア」(山本文緒)のなかの「囚われ人のジレンマ」を読んだ。

主人公美都が、25歳の誕生日に、7年交際する心理学専攻の大学院生である彼に
プロポーズされる。しかし、なんだか煮えきらず、はっきりした返事ができない。
できれば、彼と結婚なんかしたくない。その理由は……。

山本文緒という人は、こういう、女性の心に渦巻くモヤモヤを書くのがじつに巧みだと思う。


今回読んでみて、もしかして、「結婚」というものがあるせいで、現代のわたしたちは、
純愛ができないのかもと思った。

現代社会では、「結婚」の意味するものは実に重い。
愛する人と一緒に暮らす装置であるだけでなく、
親からの独立であり、経済連合体の設立であり、生活共同体の樹立であり、
共通の遺伝子の存続の形式であり……。

物語では、主人公が、そういったさまざまな、いわば結婚にまつわる責任について
逡巡し、もがくさまが描かれる。

彼女を最も悩ませるのが、彼と身体の関係がないことではなく(むしろそれを主人公は
好ましいと思っている)、彼が大学院生で、収入がないということ。
「自分がこんな状態でよくプロポーズできるよ」と、学生時代ジェンター論を

彼女は厳しい父親の庇護のもと、一人暮らしは許されず、家から出るには結婚するしかないという状況。

彼女にとって、結婚は、親からの文字通りの独立と、経済的独立をさすものなのだ。

頼りにしている先輩に、

「指輪もらってうれしくない相手と結婚したらいけないでしょう」

とズバッといわれて、一瞬自分の気持ちを言い当たられたように思いながら、


行きずりの男とのセックスはできるのに、彼とのセックスはしたくない、
というところに、心にのしかかる重さが見て取れる。

ラスト近く、彼は、実家が不動産をいくつか持っており、家賃収入から
学費などが出ているということが明かされる。

「結局私たちは互いに主導権を握ることを押し付けあっている子どもだ」

うーん。結婚とは、愛と経済が綱引きして、
その果てにどう妥協点をみつけるかってことなのかな。

そしてしばしばその綱引きは、「囚われ人のジレンマ」に似た事態に陥って。

なーんてことを考えながら寝たら、久々、25歳、独身のころに戻る夢をみた。
あー、あのころの自分に、教えてやりたいことがいっぱいあるなあ。





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Last updated  2004.09.12 22:42:57
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