2005.01.28
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保育園の帰りに、息子が「おんぶー」と言い出した。
「ママはおけがしてるからダメ」
と言っても、２歳児、聞きやしない。
「おんぶ！おんぶ！おんぶ！……」の大騒ぎに根負けして、
「ちょっとだけだよ」
と、よっこらしょ、と、やっとこ背負った。
『おんぶおばけ』という有名な怪談。
夜道を歩いていると、赤ん坊に、「おんぶしてくれー」と声をかけられる。
おんぶしてやると、歩いているうちに背中の赤ん坊が、
あの変な話、親になってみて意味が分かった。
子供って、おんぶしていると、どんどんどんどん重くなるのだ。
ホントに石臼になっちゃったんじゃないかと思って揺すると、
スヤスヤ寝ていたりする。
……あの昔話、ぜったい親が考えたにちがいない。
「ねーねー、ままー、おともだち、いっぱいいたー」
「よかったねー」
「ねーねー、ままー、おもちゃであそんだー」
「そおー、楽しかった？」
「ねーねー、ままー」
「なーに」……
あーあ、重いよう、痛いよう。
「ねーねー、ままー、みてー、おつきさまー」
「あ、ほんとだねー」
「ねーねー、ままー、おつきさま、ついてくるよー」
「ほんとだねー」
ふっと、ふしぎな気持ちになっる。
私、なんだって会社の帰りに子供背負って夜道を歩いてるんだろうなぁ。
この子はいったいだれだろう。
わたしはいったいだれで、なにしているんだろう。
いつかこの子が育って、少年になったり、男の人になったりしたとき、
いま確かにここにいる、この重くてやわらかくてあったかい赤ん坊は、
どこへ行っちゃうんだろう。
いま歩いているお寺の前の細い道も、人生のなかでいまいる位置も、
なにもかもが、ぜんぶ夢のなかのことのように思えてきた。
ああ、そうだ、人生なんて、ぜんぶぜんぶ、夢みたいだ。
未来は手をふれることができないし、過去はその瞬間消えていく。
嘆くこともないし、有頂天になることもない。
人生なんて、それほどのものでもない。
ただもう、二度と逢えないそのときそのときを、大事に大事に。
身のまわりのすべてを、大事に大事に。
お寺の屋根の向こう、少しにじんだ丸い月がぽっかり浮かんでいた。
月はほんとに、ゆうらゆらと、ついてきた。
選ぶ瞬間を夢見ている、と言ったほうが近いのかもしれない。
私もそうだった。しかし今、知った。はっきりと言葉にして知ったのだ。
決して運命的な意味ではなくて、道はいつも決まっている。
毎日の呼吸が、まなざしが、繰り返す日々が自然と決めてしまうのだ。
そして人によってはこうやって、気づくとまるで当然のことのように
見知らぬ土地の屋根の水たまりの中で真冬に、カツ丼と共に
夜空を見上げて寝ころがざるをえなくなる。
ああ月がとてもきれい。」
（よしもとばなな『満月』）
「ママはおけがしてるからダメ」
と言っても、２歳児、聞きやしない。
「おんぶ！おんぶ！おんぶ！……」の大騒ぎに根負けして、
「ちょっとだけだよ」
と、よっこらしょ、と、やっとこ背負った。
『おんぶおばけ』という有名な怪談。
夜道を歩いていると、赤ん坊に、「おんぶしてくれー」と声をかけられる。
おんぶしてやると、歩いているうちに背中の赤ん坊が、
あの変な話、親になってみて意味が分かった。
子供って、おんぶしていると、どんどんどんどん重くなるのだ。
ホントに石臼になっちゃったんじゃないかと思って揺すると、
スヤスヤ寝ていたりする。
……あの昔話、ぜったい親が考えたにちがいない。
「ねーねー、ままー、おともだち、いっぱいいたー」
「よかったねー」
「ねーねー、ままー、おもちゃであそんだー」
「そおー、楽しかった？」
「ねーねー、ままー」
「なーに」……
あーあ、重いよう、痛いよう。
「ねーねー、ままー、みてー、おつきさまー」
「あ、ほんとだねー」
「ねーねー、ままー、おつきさま、ついてくるよー」
「ほんとだねー」
ふっと、ふしぎな気持ちになっる。
私、なんだって会社の帰りに子供背負って夜道を歩いてるんだろうなぁ。
この子はいったいだれだろう。
わたしはいったいだれで、なにしているんだろう。
いつかこの子が育って、少年になったり、男の人になったりしたとき、
いま確かにここにいる、この重くてやわらかくてあったかい赤ん坊は、
どこへ行っちゃうんだろう。
いま歩いているお寺の前の細い道も、人生のなかでいまいる位置も、
なにもかもが、ぜんぶ夢のなかのことのように思えてきた。
ああ、そうだ、人生なんて、ぜんぶぜんぶ、夢みたいだ。
未来は手をふれることができないし、過去はその瞬間消えていく。
嘆くこともないし、有頂天になることもない。
人生なんて、それほどのものでもない。
ただもう、二度と逢えないそのときそのときを、大事に大事に。
身のまわりのすべてを、大事に大事に。
お寺の屋根の向こう、少しにじんだ丸い月がぽっかり浮かんでいた。
月はほんとに、ゆうらゆらと、ついてきた。
選ぶ瞬間を夢見ている、と言ったほうが近いのかもしれない。
私もそうだった。しかし今、知った。はっきりと言葉にして知ったのだ。
決して運命的な意味ではなくて、道はいつも決まっている。
毎日の呼吸が、まなざしが、繰り返す日々が自然と決めてしまうのだ。
そして人によってはこうやって、気づくとまるで当然のことのように
見知らぬ土地の屋根の水たまりの中で真冬に、カツ丼と共に
夜空を見上げて寝ころがざるをえなくなる。
ああ月がとてもきれい。」
（よしもとばなな『満月』）
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Re:おんぶおばけとお月様(01/28)
きいろたんぽぽのほし
さん
子供を育てていると，ふと，とても不思議な気持ちになることがあります。
赤ちゃんだった頃のこの子には，もう会うことはない。
今の小さい子供であるこの子にも，会うことはなくなる。
今はこんなに大変で辛いけど，いつかとても愛おしい時として
思い出す時が来るのかなあ。
子育てからは，その時，その時を大切にするということを教えられます。 (2005.01.29 06:25:25)
赤ちゃんだった頃のこの子には，もう会うことはない。
今の小さい子供であるこの子にも，会うことはなくなる。
今はこんなに大変で辛いけど，いつかとても愛おしい時として
思い出す時が来るのかなあ。
子育てからは，その時，その時を大切にするということを教えられます。 (2005.01.29 06:25:25)
Re:おんぶおばけとお月様(01/28)
evikun
さん
ある一定の期間、子育ては重力との戦いだ！
補足：その期間とは？「妊娠したときから、子育てしていて、子どもが自分で傘をもって歩いてくれるようになるまで」（定義者：evikun） (2005.01.29 11:26:08)
補足：その期間とは？「妊娠したときから、子育てしていて、子どもが自分で傘をもって歩いてくれるようになるまで」（定義者：evikun） (2005.01.29 11:26:08)
Re:おんぶおばけとお月様(01/28)
花見好き
さん
同じ思いを感じます。
今このかわいらしい温かい子供たちは、
何年か後にどこにいってしまうのだろう？って。
明日は、また今日とは違う１日なんだ。だから
今このときを大事にしなくちゃいけないんだって。
いつもステキな日記読ませてもらっています♪ (2005.01.30 08:03:33)
今このかわいらしい温かい子供たちは、
何年か後にどこにいってしまうのだろう？って。
明日は、また今日とは違う１日なんだ。だから
今このときを大事にしなくちゃいけないんだって。
いつもステキな日記読ませてもらっています♪ (2005.01.30 08:03:33)
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沢木遥
「幸せ力」は一日ごとに磨かれる。日々起こること、出会いを、大切に味わいながら、とびきりの人生をつくっていきましょう。
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