2002/08/31
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 よく分からないことがある。大分以前から「埴谷雄高」という名前は私にとって特別なものだった、らしい。らしいというのは、そう思い始めた理由に特に思い当たらない。ただ漠然と「埴谷雄高というのはむつかしい人らしい」という印象を持っていたのだろう、その印象の入手元がよく分からない。色で言えば黒、イメージで言えば巨大モノリス( モノリスペーパークラフトの作り方 )、そういえばどんな顔してる人か知らない。
 これの前作「影絵の世界」があることを知りながらこちらを先に読んだのは、特に意味はない。平野謙や本多秋五など、この間読んだところの、藤枝静男「落第免状」に出てくる面子と似ているなあと思っていたら、やっぱり藤枝静男の名前も、最大級の賛辞とともに出てきた。



「近代文学」にはそれぞれ相応の応援者がいたけれども、全身全霊をもっての「最大級」の応援者は、藤枝静男のほかにいなかったといえる。


「近代文学賞」のために年間五万円を出しただけの藤枝静男(それはもちろん大変立派なことだが)に、赤字覚悟で雑誌を発行し続けてくれた幾つかの出版社の人達を差し置いて「最大級」とするのはちょっと不思議だが、『「近代文学」の存続』というこの章自体どうも浮き上がっている。出版社にかけた迷惑も楽しい思い出として語られている。後に多大な利益を出版社側に与えたとはいえ、「現代日本文学辞典」制作時の話において「僅か一箇月でのその完成をまったく信用しなかった河出孝雄を心底から驚愕させたのは、約束の日から僅か一日遅れた三月十六日に全原稿が実際に届けられたことである」とは、それが「一日前」なら胸を張って語ってもいいが、どうも厚かましい。
 もっとも、その厚かましさでもって「近代文学」を継続出来たからこそ輩出出来た作家達も多いのだけれど。
 ちなみに原稿料について。

実際は、まず第一に、ごく僅かな期間を除けばすべて無原稿料であった寄稿者達による献身的で積極的な支持について書かなければなるまい。

本作『「近代文学」の存続』より




藤枝静男「落第免状」内『わが「近代文学」』(掲載誌は「近代文学」廃刊号)より



 全寄稿者が無原稿料で雑誌が続くとは思えないし、藤枝静男のもらっている料も少なすぎるが、とにかくそういう時代もあった、という空気は感じる。最終章「戦後の病歴」に出てくる、家で飼っている大量の小鳥について書いてるところなど、可愛いおじいちゃんになっており、「死霊」のイメージを垣間見られるのは本著では最初の一章くらいか。
 若き日の石川淳が酒飲んで暴れる場面や、安部公房の処女作に対する当時の反応も書かれていて面白い。

埴谷雄高「影絵の時代」(河出書房 この本は現在お取り扱いできません)
埴谷雄高全集〈9〉影絵の時代(講談社)





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Last updated  2002/08/31 12:56:27 PM
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