2002/08/22
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 著者の青春自伝。


また自分は志賀さんの倫理観とか正直とかからはなんにも影響を受けていないとも断言した。志賀さんに惹かれたのは、描写力であり、志賀さんの描写力が自分の中にスッと灰ってくる。非常に短い言葉で力強く書いて、生気がある。その表現力に惹かれたのだと。その点で志賀直哉の人格とか倫理観に惹かれて志賀さんのもとへ行った他の門下生とは一線を画する。

解説より


 安心した。いわゆる「志賀直哉を師と仰ぐ」作家群の小説は、読まぬうちからなんだかうんざりして読む気がなくなり読まないままにしておく。そうしてきた。「自然」「リアリズム」「真摯」などのキーワードにはちっとも興味を惹かれない。「城の崎にて」しか知らない志賀直哉を読む理由がないからその影響を受けた人にも食指は動かない。
 志賀直哉と藤枝静男とのほぼ師弟関係と言っていいような間柄のことを全く知らずに藤枝静男の作品に触れ、好きになり、そのことを後で知った時、不安になった。志賀直哉に影響を受けたものの一人である藤枝静男がこれほど良いのなら、他の人達もそうなのではないか、多くの良い物に触れる機会を偏見で自ら潰してきたのではないか、と。そうは思っても志賀直哉にも他の人にも手は伸びないでいた。言い方は悪いがそれで良かった。不安がる必要はなかった、と言える。志賀直哉の描写力のみに影響を受けたという作家の言葉は信用出来る。好きな作家の人間性に影響を受けて自らも作品を書き出した人の物などは信用出来ない。偏見の多い人間だな、私も。
 若い頃は、自分は興味のないジャンルだがそこでは評価の高いものなどに積極的に手を出した。未知の世界が開かれるなどという大袈裟なことでもなく、自分の知らないものの中に数多くの良いものがあるのをを知らないまま済ますのが怖かった、勿体ないと思った、焦ったからだ。歳をとるとそうでもない。多くの人が絶賛していたり、知り合いに勧められたりして、それに少し興味を持っても、偶然気が向かない限り手を取ることは少ない。出会えなかったものには、ご縁がなかったということで、とあっさり諦められる。決して良いことではないだろうが、その姿勢を変えたいとも思わない。「千巻の書は読むためのものだが、万巻の書は貯め込むことだけを目的にした」云々のことがどこかに書いてあった。万巻は決して辿り着けない境地ではないが、辿り着きたいとも思わない。死ぬまでに好きなものを出来るだけ読めたらそれでいい。
 作品の話をしていない。

藤枝静男「或る年の冬 或る年の夏」(講談社文芸文庫 この本は現在お取り扱いできません)





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Last updated  2002/08/22 02:26:51 AM
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