2003/12/12
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カテゴリ: 国内小説感想
 これまで読んだ忍法帖とは違い、明るい雰囲気で、そもそも主人公一行は忍者ではない。陽気で女好きの七人の香具師で、忍者ではない。忍者ではないのにやはり尋常のものではない。


 日本で香具師という職業が、いつ、どのように発生したか、よくわからない。蒼空を天井とし、大道を店とする巷の商人、みずからの足に乗るキャラバン、漂白する野の放浪者ともいうべき彼らに、信頼すべき文献などあるわけがない。
 事典によると、「贋買を主要商品として市に売る生業者。売薬、香具、モグサなどを効能以上の能弁を以て売り、かたがた雑芸を余興とし、サクラを使用して贋物を売る大道商人」などとある。


 ようするに寅さん。そっちの香具師。他にあるか知らんが。いろいろ役に立ちそうな知識も読みながら自然と覚える。


 この連中が箱根の山中で奥方連をしとめたのが「エンコヅケル」という奴、岩槻の旅籠で宿の娘をいただいたのが「ヨツにカマる」という奴、売卜者に化けて女の過去未来あることないことでたらめを吹きたてて不安におとし、ついに自由にしてしまう「ロクマ」、女だけいる家に行商にいって誘惑する「ヤサバイ」、ばくちにひきずりこみ、のぼせあがった女にはたから金を貸してやって、あとで貞操とひきかえにする「モミ」


 時は戦国、秀吉の天下獲りいよいよ大詰め北条小田原攻めの頃、香具師らがたまたま出逢った北条方の小大名の姫とその取り巻きの風魔忍者に、打ちのめされ、一人は姫に顔を踏まれ、「あの姫を絶対ヨツにかまってやる」と、それだけが動機で七人結束し、風魔の屋敷で忍者修行をしたり、風魔の棟梁小太郎に見込まれたり、風魔の女七人をたらしこんだり、姫を守って風魔と戦ったり、そういう、舞台・実在の人物ともによく知られているので馴染みやすいお話。物語の大半が男女がくんずほぐれつ(しかし書き方はとてもサラっとしたもの)しあってる話なのに、あまりの巨根の為に女と交われない、一人の香具師の死に様が、一つも救いがなくて、笑えるので哀しい。水で責められ、階下にいる仲間を助けるために、巨大な臼で穴を塞ぎ、臼の穴を自らの男根で塞ぎ溺死する。一人の末期を知ったとてあまり大筋に意味はない。他に見所は多くある。ただ、全体的に陽気で、主人公達の背負うものが軽いこの忍法帖は、硬派なファンの人にとっては、違和感のある一冊かもしれない。
 ただ、そんな雰囲気でも当然のごとく、登場人物たちはほとんど死ぬ。





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Last updated  2004/10/29 01:08:42 AM
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