2004/12/31
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カテゴリ: 国内小説感想
 作者らしき坊さんが娘婿にいる、ガン患者の「お母さん」が霊魂になるまでの物語。入院中の時間の経過の感じ方、記憶の抜け落ち方の描写が、淡々としている分余計に恐ろしかった。魂の重さが体からなくなる時のエネルギーを、同時多発テロで崩れる前の世界貿易センタービルを八十キロ上空まで飛ばすほどの、と、荒唐無稽ながら理論だてて説明し、つまりそれだけのエネルギーがあれば、死後、親しいものらの前にちょいと現れてみるくらい出来るんじゃないかと、イエスの復活もひょっとしてそのようなものだったんじゃないかと推論するくだりが面白い。



「そないにベラボーな力を、私が使えるんですか?」
「え」
 一瞬驚いたうふに見えたが、慈雲さんは真顔で答えた。
「そりゃそうですよ。今年になってからですけど、アメリカで、右へ行こうと思っただけで右へ動く義足が開発されたんです。大脳皮質の十八カ所に電極をとりつけたんですが、つまり、思っただけで人間はそういう方向にエネルギーを使えるってことでしょ。現に使ってるわけで、そうした能力のごく一部が再現されただけですから」
「せやけど、そんとき私は、死んでますんやろ?」
「そらそうや」
 富雄が妙な相の手を入れた。


 近くに寺もないので昔のように除夜の鐘を衝きに行ってお菓子を貰ったりということもない。昨日からようやく暖房をつけた。ただ一日経つだけ、年が変わるだけなのに、妙に意識している、今年は。俳句にまみれたせいで季節感に敏感になりすぎたか。かといって晦日や新年を詠む対称とするのは、月並みすぎて抵抗がある。終わり。


新潮社 2003年





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Last updated  2004/12/31 02:38:08 PM
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