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【カーラ2 】
人間界の街の一角で 、
カーラは人波を避けるように道端に立ち止まると、
そっとリカムに寄り添った。
彼のがっしりした胸と腕が、
カーラのほっそりとした、
しかし決して弱々しくは無い身体を、
しっかり包み込んだ。
そこに、浮き立つような心の動きがあったからではない。
魔法国王の一人娘である、王女姫カーラと、
その第一側近として、彼女が生まれた日からお側に仕え、
生涯を捧げることを誓った
忠実な魔騎士、リカム。
それは互いの立場として、当前の行為であった。
「リカム。少し歩き疲れました。」
「はい。では、何処かに――」
結界を張るのに良い場所は無いかと、
辺りに目をやる彼を制し、
カーラは疲れと不安からくる、やや硬い声で言った。
「いいえ、その必要ありません。休んでいる間に、
あの方を見過ごしてしまうかも知れない」
「分かりました。では、どうぞ、私に寄りかかってお休みください」
「ありがとう。そうするわ」
長いため息をつきながら、カーラは身体をリカムに預け、
信頼しきった表情で彼を見上げた。
リカムは複雑な思いを打ち消して、
そのやわらかに匂い立つ身体を支えた。
風があたりを吹きぬけて、二人の汗ばんだシャツを乾かしていく。
このまま、いつまでもこうしていたいと、
リカムは願うのだった。
(つづく) 【次へ】
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