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淡く滑らかな朝日がゆっくりと
砂浜と叢の境に打ち上げられた
無防備な身体を静かに暖めているのを感じる。
静かに目蓋を開け、目線を海へ向ける
そこには昨夜、切なさと官能を共有した
あの青白く優しい海の面影は消え去り
ただ機械のように
寄せ返し続ける波の姿があるだけ・・・
足元には薄青いガラスに戻った滴が
そこがもう自分の居場所かのよう小指に収まり
やさしい朝光を受け、小さく輝いていた。
温まりつつある身体に五感が戻ると
何かが手に収まっている感覚を感じ
そっと広げた手を覗き込む・・・
いくつもの小さな突起を身に纏った青い巻貝がひとつ。
それはガラス細工のように滑らかな光沢を称え
洗練された受話器のように、手に収まっていた。
引き寄せられるように耳に這わせると、
聞き覚えのある、小さく優しい声が耳から注ぎ込まれ
甘く愛しい想いを呼び覚まし・・・
気付くと巻貝を壊し兼ねない程強く
充血した耳に押し当てていた。
耳から剥がした巻貝を
まるで宝物を貰った子供のように
そっと両手に包み込む
脱力感が残る体をゆっくり起こし
裸足で砂地を噛み締めながら海に背を向け
ゆらゆら家路へと歩き出す・・・
次の約束を伝えてくれた、 綺麗な巻貝を眺めながら・・・