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・・・ここを訪れてくれてありがとう・・・ 少し悲しいストーリーだけど 今は静かにこの物語を終わらせ海の底に眠らせよう ・・・そしてもしも・・・ ・・・もしも君の心の中に「奇跡」が起こり・・・・・・僕の望みが現実になる事があれば・・・ もう一度この物語を深海から引き上げ ・・・その続きを作り始める事が出来るかもしれない・・・ 君の選んだ覚悟は間違ってない ・・・だから明るく真直ぐに・・・・・・迷わず・・・・・・選んだ道を歩んで行って欲しい・・・ ・・・君があの日・・・・・・勇気を出して【さざ波】を起こしてくれた事を・・・・・・その狂おしい笑顔と優しさを与えてくれたことを・・・・・・とても・・・・・・とても感謝してる・・・ ・・・いつも・・・ ・・・どんな時でも・・・・・・何処にいても・・・ ・・・君の幸せを静かに想ってる・・・ ・・・いつまでも・・・・・・いつまでも・・・ ・・・・ありがとう・・・ ・・・でも・・・・・・もしも・・・ ・・・本当に辛い思いをする様な事があれば・・・ ・・・誰よりも一番に教えて欲しい・・・ ・・・そのときは・・・・・・君と・・・ ・・・君の体内に宿る・・・ ・・・新たな生命も・・・ ・・・全てを全力で守り抜くから・・・
Feb 12, 2009
・・・紅の日差しが・・・空と海の境い目に沈みきると砂浜に長く伸びた4本の足影もその闇の中に形を溶かし・・・同化した ・・・月は出ていなかった・・・ ・・・そう・・・・・・初めて触れた【さざ波】の時と同じ夜空・・・ ただ寄せ返す波の音だけは静けさを失うことは無く延々と耳に流れ込んで来た ・・・その音に耳を傾けながら・・・両脇に松葉杖を挟さみカカシのように立ち尽くし 変わりようの無い現実を確かめる ・・・これでいい・・・ ・・・正しい事を・・・・・・正しい事をしているのだ・・・ この頼りないひと滴の道徳心と狂おしく・・・愛しい静寂の海と過ごした僅かな思い出と引き換えに ・・・もう見つめる事も・・・・・・触れる事も・・・・・・望む事さえできない・・・ ゆらゆらと・・・さ迷い続ける無力さと・・・空しさを抱え ・・・これから訪れる・・・・・・長い・・・長い年月を生きてゆく・・・ ・・・静寂の海の・・・無邪気で優しく真直ぐな笑顔を思わせる表情と・・・その輝きと透明さが永遠に続く事だけを願いながら・・・ ・・・・包まれた闇の中・・・・今はもう無意味となった選ばれなかった方の【覚悟】が ・・・もしも選ばれた時に伝えたかった・・・ ・・・ずっと心の奥に秘めていた言葉を・・・ 誰にも聞こえないように打ち寄せる波の音に紛らせ ・・・静かにつぶやく・・・ 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 そして欠けた足先に手を伸ばし・・・優しく巻かれた緑の包帯を・・・ ・・・一枚・・・・・・一枚・・・ ・・・丁寧に剥がし始める・・・ ・・・最後の最後まで心に張り付いた・・・・・・僅かな望みを取り除く様に・・・ FinSPECIAL THANKS: Yumenohashi & milky1017
Jan 25, 2009
・・・小さな【さざ波】の音が1つ聞こえ・・・途絶えていた意識を呼び覚ます 開いた眼(まなこ)が捕らえた光景は軽く力を入れただけで・・・乾いた音を立て2つに折れてしまいそうに痩せた三日月とそこから搾り出しされる僅かな月光で・・・砂浜との境をぼんやりとさせた波の無い海辺・・・ 横たわる身体をそのままに砂浜の景観を目で追うと 小さな突起を纏った青い巻貝が ・・・忘れようも無い・・・・・・短くも・・・切ない・・・確かな言葉を囁き終え・・・ その囁きの口をこちらに向けて佇み ・・・その傍らには・・・ 輝きを失い・・・乾き果て・・・それでもなお・・・必至に爪にしがみついている波の滴と その全てを優しく包みながらもまるで何処か遠くで作られた蝋細工の様な ・・・自らの動きを止めた足の小指が並んでいた・・・ その光景を目にするとようやく自らが下した行動の記憶が頭の中で動き出した ・・・そして欠けた足先に神経を集中させる・・・ 不思議な事に【覚悟】を下した足先からは全く痛みが感じられず それどころか包み込むような温かささえ感じ取れた 戸惑いを抱えながら・・・静かに半身を起こし痛みを忘れた足先に・・・ゆっくりと視線を移す ・・・そこには・・・ ・・・静寂の海が・・・・・・その愛くるしい笑顔を思わせる表情をそのままに・・・・・・欠けた足を静かに浸していた・・・ 解き放たれた想いをその海中に溶かし限りない慰めを与える様に ・・・浸み込む優しさは・・・欠けた足先を伝い・・・体内を巡り冷たい鼓動を温め尊い安らぎを与えながら ・・・出会えたことの感謝と・・・・・・生きている限りない喜びを感じさせた・・・ ・・・このまま静寂の海に身を沈めてしまいたい・・・ 耐え難い程の衝動と戦い・・・押さえ込むと静寂の海に浸る・・・欠けた足先を引き上げる・・・ するとその足には・・・何層もの海草が・・・・・・まるで緑の包帯を思わせる様に・・・・・・しっとりと巻きついていた・・・ ゆっくりと片足を持ち上げ平行を保ちながら立ち上がると 波の滴が収まる・・・動きを止めた小指を拾い上げ 青い光沢を纏った巻貝の中に ・・・そっと詰め込み・・・ ・・・口元に近づけ・・・ ・・・感謝と・・・・・・別れと・・・・・・そして・・・ ・・・静寂の海の幸せを願う言葉を囁き・・・・・・そっと海辺へ投げ入れる・・・ それを海中に納めた静寂の海は狂おしい表情を一切変える事無く優しく見守る様に・・・さざ波一つ立てず・・・静かにその景観を保っていた・・・ お互いに身じろぎもせず次の行動を起こせぬまま・・・見つめ合う時間だけが緩やかに流れ・・・ やがて月が完全にその存在を消すと周囲に闇が降臨し・・・その愛しい表情も闇に溶けると静けさだけが静寂の海の存在を確認させた その静寂を感じながらゆっくりと海に背を向け緑の足先を引きずりながら入り江の出口に歩を進め始める ・・・・・・・・・・・ ・・・静寂の中・・・ ・・・欠けた足先を引きずる砂の音だけが・・・・・・変わり様の無い現実を認めさせる・・・ ・・・すると・・・ その音に反応するかの様に ・・・ゆっくりと・・・大きな引き潮の音が背後から聞こえ始めた ・・・一緒に過ごした・・・・・・儚くも切ない・・・・・・狂おしいひと時を彩る・・・ ・・・全ての思い出を持ち去る様に・・・
Jan 19, 2009
半分海に沈みかけた紅の日差しが無防備に立ち尽くす身体と・・・4本の足を照らしその影を砂浜に長く引き伸ばす 視線の先には波間を赤く照らされた、ありふれた海がそれ以外何もする事がないかの様に沖で波を作り・・・浜辺へと寄せ・・・そして引き返し続ける ・・・もう何億年も変わらず・・・・・・一度も休んだ事など無かったかの様に・・・ その波を見つめ・・・その音を聞き・・・その潮の香りを感じながら ・・・昨夜・・・ ・・・月光に照らされた静寂の入り江での・・・過ぎ去った記憶を脳裏に蘇えらせる ・・・・・・・・・・ 波の無い海辺に佇み・・・震える手で袋の中に手を収め選ばれた【覚悟】を引き出すとその滑らかな取っ手にそっと手を添え淡く輝く小指に視線を移し静かに距離を近づける ・・・すると・・・波の滴は・・・左右を分かつ皹から海水にも似た透明な液体を滲ませた それはとても冷たく小指を浸し徐々に勢いを増し・・・溢れ出し月光できらめく砂浜に・・・淡い染みを広げ始めた 全てを把握し・・・懇願するかのように 見つめる事しか出来ない眼(まなこ)からは幾筋もの流れが頬を伝い出し直視する事が出来ない静寂の海に今一度瞼を閉じ 冷たくなった鼓動を抱えながら最後の想いを浮かばせる ・・・そう・・・ ・・・静寂の海は選んだのだ・・・・・・今ままでの暮らしを・・・・・・これからも変わらず続けてゆくことを・・・ もう一つの差し出した【覚悟】は選ばずに どんなにあがき・・・喚き・・・叫ぼうが決して変わることの無いこの現実を受け入れる事しか出来ない自分の無力さと・・・むき出しにされた空しさが・・・永遠に完治できない病の様に・・・ゆっくりとその身を蝕んでいった・・・ ・・・どうか・・・・・・夢なら今すぐ覚めて欲しい・・・ すがるような刹那の祈りを胸にそっと瞼を開けてみる そこには残酷なほどいつもと変わらない狂おしく・・・真直ぐな笑顔を思わせる静寂の海が一片の後悔も感じさせないままに優しく・・・静かに佇んでいた しかしその景観を前に憎しみや憎悪などは一欠片も生まれる事は無くもはやその残酷ささえも愛しく思える感情は身体の自由を奪われ深海へと沈んでゆくように・・・深く・・・切なく・・・・・・愛しさに溺れてしまった自分をさらけ出した・・・ 足先に目線を戻し・・・選ばれた【覚悟】のその滑らかな取っての先に光る ・・・山なりの刃先が並ぶ部分を・・・ 溶けてしまいそうな程悲しく輝き・・・濡れる波の滴が収まる小指の付け根に這わせ ・・・大きく息を吸い・・・ ・・・両手に力を込め・・・ ・・・一気にその【覚悟】を引きおろす・・・ ・・・全ての想いを断ち切るように・・・
Jan 18, 2009
雲の切れ間から僅かに注ぐ月光が入り江の入り口をぼんやりと浮き上がらせていた あと少し歩を進めれば・・・海を見渡せるその入り口の手前で背を向けて座り込みじっと耳を澄ませていた ・・・・全く聞こえない波の音は・・・・静寂の海がそこで待っている事を教えていた あの時差し出したふたつの【覚悟】のうち・・・どちらかの【覚悟】を選択して・・・ わずかな望みと・・・それを覆す絶望の想像がそれぞれに大きく膨れ上がりやがて渦潮のように脳内をかき回し始め今にも引き返したい衝動が全身を襲う ・・・選択された【覚悟】と・・・・・・そしてその先に待つ結末に・・・歩を進める事が出来ない切なさは歳をとり過ぎ臆病さが深く染み込んだ心を情け容赦なく痛めつけた 冷たくなった足先にはあの日以来・・・一度も自らの輝きを発する事なく存在を隠し・・・無関心を装うように元に戻らぬ皹を抱えた波の滴がじっと小指の爪に収まっていた やがて流れる雲は・・・主役の座を月に譲り温かな月光が辺り一面に注ぎ始めると ・・・ちいさな波音がひとつ・・・ 静寂を破り・・・耳に流れ込んできた・・・初めて触れてしまった・・・・・・あの【さざ波】と同じ音が・・・ するとその音によって・・・まるで眠りから覚めるように波の滴は青白く淡い輝きを取り戻し訴えかける様に小さく震えだした ・・・この先に待つ結末を・・・・・・一緒に見守ってくれるかのように・・・ ゆっくりと立ち上がり滴に足先を委ね誘(いざな)われるがままに歩を進め月光を受け、輪郭をはっきりとさせた入り江の入り口に立ち ・・・そして視線を定める・・・ ・・・静寂の海はそこにいた・・・ 驚く程いつもと変わらぬ愛くるしい素直な笑顔を思わせる表情で まるで先刻の出来事は夢だったかのように自制に耐え難い【さざ波】をその身に潜め優しく・・・静かに存在していた 淡い希望が少しずつ広がり砂を引きずるようにゆっくりと歩を進め静寂の海との距離を縮ませる ・・・そして・・・ようやく鮮明に映った海辺に ・・・それは打ち上げられていた・・・ 青い巻貝と・・・天草(てんぐさ)の袋がひとつ・・・ 静かに近寄り・・・その大きさを確かめる ・・・両手に余るくらいの大きさ・・・ ・・・選択された【覚悟】・・・ それを確認するとその横に・・・寄り添うように佇む青い巻貝を拾い上げ・・・そっと耳に這わす 流れ込んできた囁きは ・・・短く・・・・・・消え入りそうな・・・・・・しかし聞き間違えようの無い・・・・・・確かな言葉・・・ ・・・その言葉が全てを物語っていた・・・ 返す言葉は要らなかった海水を含み・・・重さの増した袋を拾い上げ視線を波の滴へと向ける ・・・選ばれた【覚悟】に決意を秘めながら・・・
Jan 12, 2009
月明かりを受け・・・きらめく砂浜に膝を抱えた姿勢で座り込み滴を隠すように足先を砂に沈ませ身じろぎもせず・・・真直ぐに視線を保ち時間だげが緩やかに流れ続ける・・・ ・・・目線の先には・・・切ないくらいに・・・いつもと変わらぬ愛くるしい表情を思わせる静寂の海が月光を纏い・・・淡く浮かび上がり愛おしさに応えてくれる【さざ波】をその内に秘め静かに佇んでいた 流れを止めない残酷な時間は切なさと苦悩の高まりを助長させ・・・潤み始めた眼(まなこ)を気づかれないようそっと瞼で隠すと包み込む静寂の中に浸りながら 取り戻してしまった記憶によって優しく温かかった思い出を切り裂かれ・・・嬲(なぶ)られ・・・さまよい・・・朽ち果てた末に導き出した想いをゆっくりと脳裏へ浮かばせる ・・・このまま・・・ この関係を続けていく事もできる静寂の海がそれを望むなら ・・・けれども・・・ それは静寂の海が長い暮らしの中で培った白イルカとの生活と・・・それを祝福し信頼してその海で暮らしている全ての生き物達を欺むき続けてゆかねばならずやがてその暮らしは・・・静寂の海自身を苦しめ・・・後ろめたさは罪悪感へと変わり果てその狂わしく愛くるしい表情は姿を消し去り清らかな海水は透明さと輝きを失い・・・濁り始め・・・・・・遂には・・・ 何もそこに住む事が出来ない ・・・・ただの塩水へと変わり果ててしまうだろう・・・ 望めるなら終わらせたくはないこの尊い喜びを感じさせる幸せな時間を・・・ ・・・でも・・・ その先に待つ悲しい結末へは、決して導いてはいけない事は ・・・それだけは解っていた・・・・・・そう気づいてしまった・・・ 冷たく乾いた想いが全身を駆け抜けると再び瞼を開け・・・視線を戻す 静寂の海は少しおどけた表情に思えたがかわらぬ景観を称え・・・じっと待ち続けていた それを確認し深く・・・長いため息を一つ吐くと用意していた・・・天草(てんぐさ)で編んだ2つの袋を持ち上げ静寂の海辺へと歩みだす・・・ 一つは片手に収まる程の小ささ一つは両手に余るくらいの大きさ 海辺へ近づき・・・その温かく優しい青白き海へ身を委ねたい衝動を唇を噛み締めながらねじ伏せ 2つの袋を静寂の海へ投げ入れる ・・・そして最後に・・・ 導き出した想いを綴り・・・2つの袋の中身を書き足した小さな紙切れを 青い巻貝の中に入れ・・・口元を近づけ初めてこちらから約束の日を告げ ・・・投げ入れた2つの【覚悟】に対する願いをそっと囁き・・・ ・・・そして静かに海辺に投げ入れる・・・ ・・・すると一時後・・・静寂の海は・・・その全てを海中に収めまるで海亀が産卵を終えて沖へ帰るように静かに・・・ゆっくりと・・・大きな引き潮を起こしやがて沖より寄せ返す波によって何の感情も伺えないありふれた夜の海へと変貌を遂げた ・・・全てを受け入れ・・・把握したかのように・・・
Dec 21, 2008
人生を終わらせるような激しい頭痛と内臓の全てを吐き出したい感覚にしかたなく目を覚ます・・・ ベッドの横には・・・付き合いの長さからファーストネームで呼んでいる空になった「ジョン」のボトルが2本こちらに口を向けて嘲り笑い・・・その周りには自ら命を絶ったかのように砕け散ったグラスの破片が・・・窓辺から差し込む沈みかけた紅い日差しを受けて微光しばらまかれた血痕を思わせた 何があったのだろう・・・? 虚ろな眼(まなこ)で冷たい足先に視線を移すと輝きを隠し・・・左右を分かつ一本の皹を持った波の滴が何の表情も伺えないまま、無機質に収まっていた かける言葉も無く・・・じっと見つめていると突然あの忘れられない光景が無作法に頭の中に上がりこみ暴れ出す・・・ ・・・昨夜・・・ 確かに静寂の海はそこに存在していた月光を身に纏い、青白く浮き上がりいつものように優しくかわいい表情を称えて・・・ ・・・しかし・・・波の無い中に・・・何かが動いていた・・・それは白い滑らかな姿態を上下させ時折跳ね上がり、背びれや尾びれを海面に見せもう長い間、そこが自分の居場所かのように なんの疑いも無く回遊する・・・ ・・・・そして静寂の海も・・・・それがあたりまえの営みのように動きに合わせ・・・幾重ものさざ波を起こし自分にしか見せないと思われた狂おしい表情までもその無邪気に泳ぐ白いイルカに注ぎ・・・優しく寄り添っていた 動く事も、叫ぶ事も出来ずただ呆然と見つめる事しかできないなか・・・突如として・・・忘れていた大事な記憶が荒波のように脳裏に押し寄せた・・・ ・・・・そうだった・・・・ ・・・・最初から知っていたんだ・・・・ 静寂の海は、もう長い間この暮らしを続けていた事を・・・知っていたから、最初の【さざ波】に触れた時思わず後ずさりして・・・自制したはずだった ・・・・なのに・・・・いままでの生き方を覆すようなあまりにも素直で、明るい表情と控えめさと積極さを合わせ持つ狂おしいほど切ないしぐさと甘い囁きに愛おしさが信じられないほど深く・・・深く・・・浸透し溢れ出る喜びと幸福の切実さが・・・深海に沈めた玉手箱のように真実の記憶をずっと眠らせてしまっていた 夕闇に包まれた部屋の中引き上げられ、えぐり出された現実に戸惑いと恐怖・・・空しさと後悔が交差し嗚咽の高まりに萎縮し始める身体と戦いながら 祈りにも似た想いで傷ついた波の滴に両手を這わせ慟哭を抱えながら答えを探し出す・・・ ・・・・明日の約束の日を前に・・・・
Dec 20, 2008
青い巻貝を耳に這わせ幾度と無く寝返りを繰り返えす・・・ベッドへ注ぎ込まれた月明かりはその乱れた四角い布に陰影を作り幾重にも打ち寄せる波のような模様を浮き上がらせた 足の小指には月光を受け、安心しきった様子で眠るように爪に収まっている波の滴。 それを確認すると青い巻貝を握り締め、部屋を抜け出すといつものように裸足のまま月明かりに照らされた入り江へと続く道に足を向ける 月光を身に纏いくったくのない、素直な笑顔を思わせるそんな静寂の海を心に抱きながら入り江の入り口にさしかかろうとした時・・・ 小指に小さな痛みを覚え足を止める 戸惑いながら視線を落とすと・・・ そこには何かを訴えたがるように悲しげに震えながら、小さく輝く波の滴が・・・そしてその輝きは左右わずかに違って見えた 不安に駆られながら目を凝らすと・・・ 滴の真ん中には一本左右を分かつ皹が入っていた 動揺の高まりは鼓動の速さを加速させ痛む小指を抱えつつも足早に入り江の入り口に近寄よる そこには月光を纏った静寂の海が・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ 全身の血が急速に冷たくなる・・・両足が凍ったように次の一歩をねじ伏せ呼吸の苦しさと、冷たい汗の滲みを感じさせながら そこに写し出される光景をただ見つめるしかなかった・・・ 自制できず・・・約束とは違う日にここを訪れてしまった後悔に打ちのめされながら・・・
Dec 19, 2008
青い巻貝に口もとを近づけ・・・語りかけ・・・波の無い・・・静寂の海に投げ入れる ほどなく小さなさざ波がひとつ起こり波打ち際に青い巻貝を押し戻す それを拾い上げ・・・耳に這わせ・・・囁きを聞き・・・また口元に近づけ・・・ 温かな月光に照らされた入り江で繰り返されるやりとり陸での出来事を巻貝に伝え海での出来事を巻貝から聞き取り それはやがてお互いを求め合う囁きに変わり疎ましい衣類を脱ぎ捨て、静寂の海に身体を預けるとさざ波はそれに応えるかのように幾重にも重なり全身に纏わり続け遂には官能の上り詰めるままに体内からの迸りを感じ安らいだ身体をさざ波に委ねる・・・ そしてその一部始終を見守るかのように小指の滴は青白く静かに輝いていた もう何日ここを訪れ、愛おしさを確かめ合ったのだろうか?次に約束された日を巻貝に囁かれる度に期待と高揚を胸に、待ち続ける日々が続いた ただひとつ・・・ 永遠とも思われる魅惑の時間は、短針が10を示すと、大きな引き潮が起き始めその優しく静かだった海の様相は飲み込まれありふれた夜の海へと変貌を遂げた 同時に小指に収まっている波の滴もまるで眠ってしまったかの様に自らの輝きを消していた ただ青い巻貝だけは次の約束の言葉をその身体に宿し、砂浜でじっと待っていた。 ふと、何か大切な事を忘れてしまっている感覚を持ちながら巻貝を拾い上げ、そっと耳に這わすと流れ込む甘美な囁きに、一時の疑問は打ち消され愛おしい感情に酔いながら歩き出す・・・ ささやかな幸福を噛み締めながら・・・
Dec 12, 2008
淡く滑らかな朝日がゆっくりと砂浜と叢の境に打ち上げられた無防備な身体を静かに暖めているのを感じる。 静かに目蓋を開け、目線を海へ向ける そこには昨夜、切なさと官能を共有したあの青白く優しい海の面影は消え去りただ機械のように寄せ返し続ける波の姿があるだけ・・・ 足元には薄青いガラスに戻った滴がそこがもう自分の居場所かのよう小指に収まりやさしい朝光を受け、小さく輝いていた。 温まりつつある身体に五感が戻ると何かが手に収まっている感覚を感じそっと広げた手を覗き込む・・・ いくつもの小さな突起を身に纏った青い巻貝がひとつ。それはガラス細工のように滑らかな光沢を称え洗練された受話器のように、手に収まっていた。 引き寄せられるように耳に這わせると、聞き覚えのある、小さく優しい声が耳から注ぎ込まれ甘く愛しい想いを呼び覚まし・・・気付くと巻貝を壊し兼ねない程強く充血した耳に押し当てていた。 耳から剥がした巻貝をまるで宝物を貰った子供のようにそっと両手に包み込む 脱力感が残る体をゆっくり起こし裸足で砂地を噛み締めながら海に背を向けゆらゆら家路へと歩き出す・・・ 次の約束を伝えてくれた、綺麗な巻貝を眺めながら・・・
Dec 5, 2008
どの位の時間が過ぎたのか・・・潮の香りを感じ、2度目の目覚めを感じると目に入ってきたのは見覚えのある小さな入り江。 あの日出合ってしまった【さざ波】の住みか。 足元を見ると、かすかに砂に埋もれた足の小指からいたずらな子供のように顔を出した滴が青白く光っている。満月は既に新月へと形を移し海はその僅かな月光で薄化粧を纏い、淡く浮き出ている。ふと何か・・・違和感を感じ、神経を絞り込む。静寂が辺りを包み込んでいるのを感じ・・・・・・・・静寂・・・・夜目になれた眼(まなこ)で海を凝視すると・・・ 打ち寄せる波が全く無い事に気づく。それはまるで湖のように・・・眠っているかのように・・・ そして何かを待ち望むかのように・・・ 不安と好奇心が入り交ざる中滴に誘(いざな)われるがままに海辺に歩を進め微光する小指をそっと海に浸す・・・ほどなくあの日触れてしまった【さざ波】の初々しく優しい・・・包み込むような甘美を小指が覚えそれは真綿に水が浸み込んでいくように全身を浸す。もはや僅かに残された自制心は剥ぎ取られ何かを求めるように沖へと歩を進め始めていた・・・ 気がつくと胸の辺りまで浸かりながらも飽くなき欲求を満たそうと、更なる深みへ足を運ぼうとした時青白き波が目の前に姿を現し瞬く間に火照った肉体を飲み込んだ。 しかし恐怖や不安よりも官能が上回り優しくも激しい波の波動に全身を愛撫されついには肉体から搾り出される快楽を感じながら果てていく自分を波に委ねた・・・ 薄れゆく意識と戦いながら・・・今度は目線をそらさずに淡く輝く滴に真意の返事を呟く。 すると青白さは薄桃色の輝きに変わり照れ笑いしているかのように震えだした・・・ 愛しい思いを胸に・・・波に委ねた体はそのままに・・・意識だけが遠くへ逃へげて行った・・・
Nov 21, 2008
肌寒さを覚え、静かに眠りから覚めた。いつの間にか寝ていたようだ。 部屋は静寂を保ち、ぼんやりとした淡い明るさを感じる。「今夜は満月かな・・・」と目線だけを窓辺に向ける。 カーテンは閉まっていた。 覚めきれていない意識の中、部屋の輪郭を目で追うと、淡い光は、冷たい足先から感じ取れた。悲しげで・・・小さく・・・消え入りそうなのに確かな意思を感じさせる青白き滴の輝きを・・・ 頭の中で、昨日聞き取ってしまった言葉が蘇える。体はそのままに、輝きに目線を合わせる事も無く語りかけるように静かに返事を呟く。 そして口に出したその言葉を自分の耳で聞いた途端滴はフラッシュの如く強い光を放なち・・・一瞬後、部屋は深い闇に包まれた。動悸を感じながら手探りで足の小指に手を這わす。そこに滴の存在は感じられず滑らかな爪の感覚だけが残っていた。 途端に切なさと後悔が同時に押し寄せ寒気となり体を震わせた。貪るように小指をさすりながら、声にならない呻き声を発し海の底に沈んでゆくような感覚が呼吸をも支配し・・・もがきながら目を開けると・・・ 乱れたシーツに胎児のような格好で目覚めを覚えた。部屋は静寂を保ち、ぼんやりとした淡い明るさを感じ・・・ 満月の光が部屋に差し込んでいた。 濡れた眼(まなこ)で足先に目線を向けると滴は何も無かったかの様に小指の爪に収まっており月の光を受け取りながら、淡い輝きを放っていた。冷たい足先に手を伸ばし、そっと小指をなでると・・・滴の部分だけが、仄かに温かさを感じさせた。 安堵と驚きを抱えながら、2度目の睡魔に身を委ねる。 聞き取ってしまった言葉を噛み締めながら・・・
Nov 19, 2008
さざ波から抜け出した足に残った・・・一滴だけ流れ落ちない波の滴。小指の爪にそっと寄り添い・・・それは翌朝には薄青いガラスとなって半分爪に沈んでいた。不思議と痛みはや違和感は感じない。困惑を抱えつつ見つめていると、それは小刻みに震えていた。そして小刻みに輝いていた。静かに・・・・小さく・・・・まるでこちらを見て、何かを伝えたがる子供のように。堅い体を前のめりに屈め、やっとの事で小指に耳を這わせ・・・ わずかに聞き取った言葉・・・ そして身を起こし、何も無かったかの様にソックスに手を伸ばし、そっと足を差し入れる。何も無かったかのように。 早まる鼓動を気づかれないように・・・
Nov 17, 2008
月の出ていない夜にかわいい・・・とても小さな波が打ち寄せた。思いもしないタイミングに静寂が少し揺らいだ。不覚にも動揺し、その波に触れてしまった。それはとても温かく足にからまり、優しく包み込み・・・ほんの短い時間なのに、とても長い時間触れている感覚。 そして引き返す波が想いのほか強く海中へと誘う事に驚く。思わす後ずさりし・・・そして立ちすくむ。 もう近寄っちゃいけないと自制に勤める。 望まなければ2度とその波は打ち寄せないだろう。足に残ったわずかな波の滴を見つめながら「これでいいんだ」 と自分に言い聞かせる。 これでいい・・・ 溺れる勇気はまだ無いのだから・・・・
Nov 14, 2008
誰かが言ってた優しすぎるのは相手を傷つけると歳を積むと自分に甘くなると高貴なゾウに、成れるだろうか・・・人と触れ合うことを恐れずいられるだろうか・・・・今一度天使は舞い降りるのだろうか・・・それまでは・・・孤高に生きよう林の中のゾウのように。
Nov 12, 2008
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