くんちゃんの・・・

くんちゃんの・・・



 先日、山間の温泉沿いの川辺に 蛍を見に出かけた。
‘ちょっと早いかな?!’との…予想に反して蛍は群をなして飛び交っていた。ほのかな明かりはキラキラキラキラ水面に反射して…とても幻想的!!感動・感激!!した。

 この川辺に蛍を見に来たのは 3年ぶりだろうか…。実は我が家にとって、いや私にとってここの蛍にはことのほか思い入れがあるのだ。

 最初に連れてきて貰ったのが、ちょうど手術の翌年…。あの頃の私はまだ‘再発・転移’への恐怖が生々しくて…心もうんと脆かった…。
 はかなく短い一生の最後を締めくくるように…あたかも自分の存在感を誇示するように一生懸命光り続ける蛍に、何となく自分自身をダブらせてしまっていた…。
『綺麗だね~♪』と言ったあとは言葉にならなかった。
『来年もこうして家族で蛍を見に来ることが出来るだろうか…』
そう思うと、こらえていた涙が溢れた。自分の存在はまるで蛍のよう…なんて、本気で考えていたりした。そう思うと、一年という年月は気が遠くなるほど長く感じられた。

 そして、2年目…。
『綺麗だね~♪』と言ったあと
去年と同じようにみんなでここにいる…
『ああ、私は生きている』と実感し 涙が溢れた。でも、それは去年の涙とは確かに違う…。‘一年生かされたコト’天に素直に感謝する自分がいる。
 一日一日を大事に積み重ねていけば、その延長に来年があると思えるようになっていた…。ちょっとだけ前を向いて歩けそうな気がした。

 そして、、、5年目。
『綺麗ね~♪』と言ったあと 様々な思いが頭を駆けめぐった。
 初めて連れてきて貰ったあの日、今日の日は想像も付かなかった。私には5年後だとか10年後、ましてや老後なんて言葉は考えられないことだった。

 でも、今の自分は違う…  

10年たっても20年たっても、
この人の隣で こうして横顔の向こうに飛び交う蛍を見て、
一緒に『綺麗だね~♪』と言い続けていたいと思った…。
大切なものを見失わないように・大切なことを忘れないように生きていきたい…
(平成14年5月末日)


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