癌12 頑張らない



正直状態の悪化するまでの私はすごく頑張っていた。

気の張りづめでもあったし。

同じような手術をした中では一番元気もよく、活動的にしていた。

だが悪化してからはどうにもこうにも身体が動かない。
あれほど吸いたかった+吸っていたタバコすらも吸いたくなくなっていたというのは自分でもかなりヤバイとは感じていたが。

だるくてだるくて動けないと精神状態もよくなくなってくる。

悪い方へ悪い方へ考えるし、非常に感情的にかつ攻撃的になっていった。

でもその感情をも抑えていたので、余計に参っていったのも事実だ。

そういえば。
緊急でMRI検査を受けていた時。
あれは退屈な検査でして、かといって寝る訳にはゆかない。

1時間弱大きな筒の中にじいっと動かないで入っているのだが、音が響く。

比較的連続的な音で、民俗音楽のベース音にも聞こえなくもない。

日頃カラオケ嫌いで歌を歌うなぞという事が一切ない私が歌い始めた。

童謡や軍歌だったが。

あの筒の中の音も技師さん達には聞こえているのね。

検査が終わった後「色んな歌を知ってますねえ」と言われ赤面した。


落ち込みから自分がどうやって這い出していったのかは今でも覚えていない。

でも見ていたのは弱ってゆき、亡くなってゆく仲間達だった。

もう一つ、ここでこれ以上頑張ったら死ぬとも思った。

最低限の水分やら液体の栄養になりそうな物は摂ったが、後は思うままにしていた。

泣きたい時は泣き、眠い時は寝てひたすらぼーっとしていた。

私には外出許可も外泊許可も先生からは出なかったが、たまに脱走してコーヒーを飲みに行ったり、近所の古書店にも出かけた。

それまでは嫌っていた睡眠導入剤を貰い、まとめて寝るようにもしたし。

数値は中々良くならなかったが、少しずつ精神状態はよくなった。


ここら辺で学んだ事は今でも役立っている。
落ち込んだりした時は「頑張らない」。

仕事はするが部屋では気が済むまでぐずぐずだらだらし、片付けもろくにしない。

だらしない自分も責めない。

その内あまりの散らかりようとだらしなさに気がついて片付けようとしだしたら半分くらいは大丈夫。


これから更年期を迎える私にはますます精神的に参ることも多いだろう。
その為の予行だったと思えば、それも無駄にはなっていないということで。









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