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新訳サジタリウス12
一機には、『ばら撒きヴェック』にはあり得ない大外れに、エミーナ、『小狼アヴェロン』は瞬時に理解した。
カールは今、ほとんど空っぽと呼んでよかった。元々商団が多くあまり定住しないことと、先日の魔獣出現に怖がって逃げた連中が少なくなかった。残ったのも今夜のパーティに集まっていて実質空っぽと言っていい。避難も行われているしな。
しかし、だからと言ってMNが暴れれば家屋は破壊される。それは忍びない……なんてお優しい感情ではあるまい。
大方、この状況下じゃ一応自警団であるこちらがやり辛いとでも考えたか? あいつ自身、こんな障害物ばっかのところで《マーヴェリック》を野に放ったら危なっかしいことは承知のはず。だったらまだ何もない荒れ地の方が安心して戦えるってもんだ。お互いにとってもな。
と、そこで《サジタリウス》の左手が「しっしっ」と払ってみせた。さっさと行けってか?
「馬鹿にしやがって……」
アヴェロンも応じて《マーヴェリック》のカギ爪付き右手で首かっきりを披露して大きく跳躍、城郭に飛び乗ると、通信が入った。
(団長やっと来てくれましたか! すぐ首都に侵入した連中を追い出さないと……)
「必要ない」
(は?)
「あいつらも、ここを破壊するのは不本意みたいだ。ゴルド・ライノス城の警備にちと残すだけでいい。いずれ出てくるから、合流させないようにだけ気ぃつけろ」
(は……はっ!)
あまりに明瞭な発言に即答できなかったようだが、まあいい。言われた通り動いてくれればいいのだ。
城郭から飛び降り、地面に《マーヴェリック》の機体を少しめり込ませた。市外の戦闘はやはり散発的なものであるが、一瞥する限りこちらが不利に見える。所詮一年前に作った自警団だからな。裏取引で手に入れた《エンジェル》をベースにした《マーヴェリック》以外は旧式だし。
しかしながら、あっちも自分と同年代ばかりであることをアヴェロンはわかっていた。例の話は百パーセントではないが本当だったらしい。
ならば、少なくともあのヘレナ・マリュースを叩き潰せば勝利はある。そう確信し、両腕――もはや前足と言っても過言ではない――を大地に降ろして走り出す。
装甲をほとんど削って腕部分を伸ばした改造、鉄伝での同名機《マーヴェリック》と同じ仕様は、ジャクソンに無理やり言ってやらさせたものだ。自警団団長なんてやらされるからにはこれくらいのご褒美はあっていいはずと。
笑ってOKされたものだから「ありゃ」と不思議に思ったが、よく考えてみると父親におもちゃをねだる子供の体になっいたことに気づいてしまう。
嫌なことを思い出した。ちっと《マーヴェリック》を躍動させつつ舌打ちした。今頃反対側から出ているであろう《サジタリウス》を回り込んで襲撃しなければならないというのに何をしているか。
父親という単語は、自分にとってまったく意味のないものだった。何しろ生まれた時からいない。そんなものを、今更手に入れたところで、どうすると……
(がら空きだぞ、アヴェロン)
「……!」
反射的に地面を蹴って大きく跳ねると、さっきまでいた場所に閃光が走った。
「っとお!」
着地様に閃光の先を見ると、だいぶ後方に飛んでいって地面に激突、爆破した。危ない危ない。
「けっ、いきなり不意打ちかよ『ばら撒きヴェック』!」
いつの間にいたのか、正面向こうに硝煙たなびく砲口を突き出した黒塗りの巨人があった。
巨大な薬莢が地面に埋まると同時に、くくくと『ジスタ』から哄笑が響く。
(そうしたいのは山々だがね、その暇もなかったよ。どこかのちびっこ狼ちゃんが、馬鹿正直に駆けてきたんでね)
ちっと舌打ちする。戦闘中に余計なことを考えるものではない。
「ふん、いつまでもそんなでかい口を叩けると……思うなよ!」
掛け声一つと共に、アヴェロンは《マーヴェリック》を突進させる。だがそれは馬鹿正直な突進ではなく、砲撃をかわすためのジグザグ走行。
(くっ!)
負けじと《サジタリウス》もご自慢の大砲を乱射する。轟音が続けざまに響いた。
一発、二発。しかしそのどれも、《マーヴェリック》に命中することはない。
(だああ、畜生!)
「どうしたヴェック、腕が落ちたか!?」
MNのコクピット内でアヴェロンは、《サジタリウス》のあまりの低能ぶりを嘲笑う。
いい気分だった。あれほど鉄伝で自分を打ちのめし、最後の時は偉そうに講釈かました野郎が今はのろまなキャタピラ動かして逃げている。それだけでアドレナリンだかヘモグロビンだかか溢れ出てくる。
もっとも、悪いのがヴェックの腕でないことくらいわかるが。
(ええい、こんなグラグラしてて照準なんかつけれるか!)
だろうな、と内心頷く。《サジタリウス》に限らず十メートル近いMNが動けば必然揺れは大きい。かくいうこっちもなまじ高機動故揺れは相当ひどい。
「知るかよそんなの! 『ばら撒きヴェック』の名が泣くぜ!」
(くっそう……見てやがれ!)
そう叫ぶと、城壁に沿うように《サジタリウス》を後進させていった。こっちのジグザグ走行を制限しようってのか? 甘いな。
「うらぁ!」
(ええっ!?)
ガジャン、とレンガ造りの壁が割れる音がした。
以前の三角飛びよろしく、城壁に飛びつく。がしかしそれを台にして跳ねたりはしない。
クローを壁に突き立てて、壁の上を走る。
(んな、ゲームじゃねえんだぞ!)
「これくらいは遊びでもできる!」
まあ実を言うと重力がきて辛いものがあるが問題ない。一応大砲用の銃眼は踏まないように気をつけて、ガシガシ踏みしめ距離を詰める。一方あいつはこっちへ撃ってこず闇雲に後進するのみ。やはり、ここを破壊するのは躊躇うか。
なんだかどっちが自警団かわからなくなってきたが、この際利用させてもらう。火力と装甲に差がありすぎるからな。
(くっそ、汚ねえ真似しやがって!)
「貴様にだけにゃ言われたくねえよ! うらあぁ!」
近づくと、雄叫び一つかまして壁を四本足で蹴り、《サジタリウス》に飛びかかる。勝った、とアヴェロンが確信すると、
(バァカ)
と小馬鹿にした笑いが『ジスタ』から伝わった。
それに合わせるように、空中に舞った《マーヴェリック》に対し、漆黒の砲撃手はグイと十五.五センチ砲を持ち上げてその鼻先へ突き付けた。
「っ!? しまっ……!」
罠、なんて理解する暇もない。とっさに機体をひねる。目の前で閃光が爆ぜた。
ギリギリ、それこそあと数刻秒に満たない時間遅れていたら命中していたという場所に砲弾はすり抜けていった。
「づうぅ……だぁっ!」
ひねったことによって自身の運動エネルギーを殺され、《マーヴェリック》は地面に激突し大きく滑った。なんとか起きあがって体勢を立て直す。
引っかけられた、のは誰でもわかる。あの野郎、普通にやったら回避されるから、わざわざ壁づたいに走ってこっちが壁を走るよう示唆させ、飛びかかってきたところを狙うつもりだったな最初から。
「腐っても……タコだったかな。リアルでもさすがは『ばら撒きヴェック』かっておい!」
マジックミラー越しに見た《サジタリウス》に、うちの《ゴーレム》二機が突進してきた。
(団長、援護します!)
(こんの化け物! 団長をやらせるか!)
「よせ、離れろ! お前らの勝てる相手じゃ……!」
なんて止める暇もない。ズザザザザと旋回した《サジタリウス》は《ゴーレム》の一機頭部に大砲を向ける。至近距離で回避できるはずもなく、砲弾があっさりと頭部を貫いた。
(ド畜生ぉぉぉぉぉぉ!)
もう一機の《ゴーレム》が叫び声を上げながら右斜め後方から襲いかかる。死角を取った。あれでは旋回も砲身を後ろへ向けるのも間に合わない。
いける――と、普通の奴なら確信するはずだが。
(つっ……とぉっ!)
ドォン、と爆音が、《サジタリウス》の真下で響き周囲を包んだ。《サジタリウス》より一回り小さい《ゴーレム》は爆風で大きく吹き飛ばされ、宙を舞う。
「あの大砲馬鹿……自分も巻き込まれること承知で!?」
軍艦の大砲というのは普通、自艦の砲撃に耐えられるよう作られる、なんてのをどっかで聞いたことある。直撃に耐えられるなら、爆風に耐えられるのは当然だろう。
しかしそんなの軍艦の場合で、《サジタリウス》がどうだかわかるまい。いくら危なかったとはいえ、命知らずにもほどがある。
――いや、いつものことか、あの程度は。
鉄伝の最中、あいつはいつも追われていた。多対一なんて当たり前、四方八方から取り囲まれたこともあるはず。
その中を、あんなクソ遅い機体で生き延びてきたのだから、多少危ない橋を渡るくらい日常茶飯事なはず。
まあ、今コクピットの中で後悔してるかは知らんが。
「だああ……くっ、やるんじゃなかった……!」
グラグラ揺れる視界の中、一機――ヴェックは呻いていた。
鉄伝での癖というか、慣れでつい真下に砲弾をぶち込むという暴挙に出てしまった。この間の真上より危険度は圧倒的に高い。《サジタリウス》が粉々になる可能性だってあったのに、思考制御の馬鹿。
なこと後悔してる余裕はない。後退を再開する。さっきの戦術が失敗した以上、城壁から離れた方がいい。下手に近づいても奴に走れる『面』を作るだけだ。
あのまま突進されていたらまずかったが、《マーヴェリック》は先ほどのようにがむしゃらに駆けてきてはいなかった。
「あの野郎……忌々しい奴だ」
接近戦重視の《マーヴェリック》。それがこの《サジタリウス》に対して一定の距離を保つわけがない。普通ならば。
悟ったのだろう、今の衝突だけで。
この戦いが、距離で決まるものではないと。
鉄伝における《サジタリウス》は、砲撃機と言えどガトリングガンと多弾頭ミサイルと一応接近戦用にも使える武器はあった。名の通り『ばら撒く』だけの代物だが。
だがこの《サジタリウス》には十五.五センチ砲一門、しかも連射もそんな効かない。砲身も長いし、懐に近づかれたらひとたまりもない。ある程度距離を保ち、遠距離から砲撃しなければ。
――と、普通は考える。
だがこの場合、事情は少し異なる。《マーヴェリック》は完全な接近戦専用機、近づかねばその自慢のクローも使えない。だから飛びかかってくる。
それが狙い目だ。近づくということはこちらの砲口に自ら突っ込んでくれるということ。接近してきたところを自慢の一発を食らわせれば勝ち。あの紙切れ並みの装甲では、直撃しなくてもアウトだろう。
いつものように高機動で回避しながら、というわけにはいかない。十メートル近い巨人をそんなピョンピョン跳ねさせたら、中にいるアヴェロンにかかるGは相当なもののはず。さっきの自分もそうだった。どうしても動きは鈍るはず。そんなアヴェロンを仕留めるなど容易い。
「つまり……」
一方、アヴェロンもほぼ同じにして真逆の結論にたどり着いていた。
「ムカつく野郎だ、あいつ……」
ただ逃げるのではなく、《サジタリウス》は着かず離れず距離を保っている。その様で、この戦いが距離で決まるものではないことを何となく悟った。
鉄伝における《マーヴェリック》は、接近戦のみしかできなくとも自慢の高機動ですぐ自分のリーチに潜り込み敵を仕留めていた。
だがこの《マーヴェリック》にはそれほどのハイスピードは見込めない。巨大で重く、何より中の俺が大変なことになってしまう。それでいて装甲は紙だから、かするだけでもまずい。内懐に入ってクローを叩きつけなければ。
――と、普通は考える。
だがこの場合、それはちと違う。《サジタリウス》は完全な砲撃、遠距離戦専用機。遠距離であればあるほど一方的にこちらをボコることができる。だから離れる。
そこがチャンスだ。離れるということは、ご自慢の大砲が命中する時間を伸ばしてくれるということ。あの大砲にとっては至近距離だろうが、伊達に何年もやり合っていない。砲口が向けられれば撃たれるタイミングくらいわかる。近すぎるとやばいが、ある程度離れていれば余裕だ。
さらに、こちらにGがかかるように、あいつにも大砲を撃った時の衝撃はかかるはず。連射にかかる時間も、照準を合わせるのもいつもに比べて遅い。遅すぎる。
そして、MNの操縦にはかなりの体力が必須。数日前乗ったばかりのもやしがそんな強い衝撃を伴ったMNを長時間動かせるわけがない。すぐに息切れするのがオチだ。砲弾が命中しないように気をつけ、動かなくなったところを料理すればいい。
「つまり……」
遠距離戦専用機は遠距離戦が有利、
接近戦専用機は接近戦が有利。
そんな理屈誰が決めた。
「この勝負、接近戦に持ち込めば勝てる!」
「このケンカ、遠距離戦にすりゃ勝てる!」
「……って、わけにもいかねえよなあ」
兜を脱ぎ、薄く笑ったアヴェロンは、さっき自分が発したセリフを忘れたかのように機体を突撃させた。
(なっ……!)
意表を突かれたのか、《サジタリウス》の挙動が遅い。狙いをつけるのもままならず、大きく外してこちらの接近を許した。
「うおりゃあ!」
すれ違いざま、左わき腹に自慢のクローを打ち込んだ。(ぐわっ!)とヴェックの呻きと共に、《サジタリウス》の巨体が大きくグラついた。
あの重量にアンバランスなボディじゃ、倒れれば自力で起き上がれまい。終わった――そう判断する間もなく、あいつは対策を取った。
(ぐぉっ!)と叫ぶとともに、さっきのように砲弾を真下に撃ち、あろうことかその爆風で体勢を立て直した。
「おいおい、よくそんな自分の身を削るような真似ができるな……命が惜しくないのかね」
(はあ、はあ……それはお前だろ! 何馬鹿正直に直進してきやがる、死ぬ気かよお……!)
「死ぬなんてあり得ないね」
(あ?)
「だって、お前殺す気ないだろ」
口ごもったのが、『ジスタ』越しからも伝わってきた。こいつに一杯食わせるのはなかなかの悦楽だな。
ちょっとやり合えば、いや、最初からわかっていたことだ。ヴェックにこちらを殺すなどない。もしその気があるのなら、そもそもカールの外に出ようなんて言いやしまい。
「呆れたぜ。こんな温い奴が『ばら撒きヴェック』かよ。いくら鉄伝最強でも所詮はガキ、か。戦いってもんを知らねえ」
(貴様にだけはガキと言われる筋はないわちびっ子!)
「ち!? お、俺はこれでも十八だぞおい!」
(え、俺より年上!?)
「年下だと思ってたのかよ!」
って俺らはこんな状況下でなにくだらない会話してるんだ、そうイラついていると、《サジタリウス》の砲身がずっと向けられた。全然こちらとは関係ない方角へ。
「ん……ぬおっ!?」
あわてて砲身に飛びつく。砲身はその切っ先をずらして弾を発射し、自警団の《ゴーレム》スレスレに着弾する。
幸い命中は避けられたが、アヴェロンは憤慨した。
「て、てめえどういうつもりだ! 一対一の決闘じゃ……」
(そういうわけにもいかないんでしょ、自警団団長さん)
「……っ!」
(長期戦に持ち込むべきなのに、危険を冒して接近戦を挑んだのは、早く俺を倒して援軍に行きたいからだろ? 当然だな、それがあんたの『立場』だ)
今度はこっちが羞恥を感じる番だった。見透かされていたか。
『ジスタ』から漏れ聞こえる叫びがなくても、ちょっと見ればこちらの不利は明白だった。親衛隊は秩序だった動きを取り戻し、ただでさえ数と質において差があるこちらを圧倒しつつある。できるものなら加勢に行きたい。
そう、ギャラリーは邪魔者ではない。
これは、最初から二人だけの戦い――などではないのだ。
「ちいっ……」
距離を取って一旦体勢を立て直す。今自分は毒虫でも噛み潰したような顔をしているに違いない。
「ふん……短期決戦がお望みか」
(お互い、そうした方が都合がいい。だろ?……エミーナ)
「っ……ああ、そうだな、カズキ」
――遊びは終わりってことか。
馬鹿なのは自覚しているエミーナだったが、アヴェロンではなくエミーナと呼んだ意味くらいはわかる。
ここは鉄伝のバトルフィールドではない。お互い立場もあるし、守らなきゃならないものもある。親衛隊隊員として、自警団団長として戦わなきゃならないってことか。
じりじりと互いに距離を詰める。カズキは砲口をこちらへぴったり合わせるがなかなか撃ってこない。装填に時間がかかるから、一旦撃てばそこで一気に詰められるからだ。ったく、やり辛い。
そこで、《サジタリウス》の砲口がすっと下がった。来る。
「つぅ!」
咄嗟に横へ飛ぶと、砲弾が発射されたがその着弾地点はさっきまで《マーヴェリック》がいた場所の一歩手前。
地面にめり込んだ砲弾は、土を豪快に吹き飛ばして爆発した。
「ぐが、づぉ!」
爆風で加速した土が《マーヴェリック》に叩きつけられて揺らす。ただの土とはいえ、装甲をほとんど排している機体にはかなり厳しい一撃だった。
「野郎、味な真似を……」
直撃ではなく、ちょっと外してもこの《マーヴェリック》には致命傷か。大砲屋にしては思い切ったことを。
「だけど、視界を遮ったのはまずかったな!」
叫び声と共に、《マーヴェリック》を《サジタリウス》の背に抱きついた。
(んな……いつの間に!?)
「こいつの足の速さは、お前が一番知ってるはずだがねぇ!」
土煙の合間に《マーヴェリック》を直進させ回り込んだ。近過ぎたのが災い、あいつはあいつ自身の視覚すら奪ってしまったのだ。
抱きつかれたからにはもう大砲は使えない。あとはこいつの装填装置を潰すだけだ。
(――なら!)
鼓膜を震わせるカズキの声がすると、《サジタリウス》の巨躯が左に傾いた。
「なんだ、こんなもんで俺が離れると……!」
ボォン、と耳をつんざく爆音がその先の言葉を遮ったかと思えば、視界が左に飛んだ。まるで高速で走る車がカーブしたように、《マーヴェリック》は投げ飛ばされた。
「ぐはぁ!」
大きく宙を舞い、地面に落下させられたエミーナはわけがわからなかったが、薬莢が落ちる音と一回転した《サジタリウス》の姿にようやく合点がいった。
「右足上げて……反動で一回転したのか?」
できなくはない。むしろ、《サジタリウス》のあの造形なら普段の砲撃でそうなっていて当然。どっしり地面に構えてこその安定した砲撃、それを逆手に取ったプレイ。よくあんなこと思いつきやがる。
もっとも、コクピットの中は地獄だろうが。
「だああ、くそっ、兜が取れた……」
一回転の拍子に兜部分のジョイントがいかれたらしい。コクピットとの接合ができなくなり、面倒なので放り投げた。
地面撃ちはまずい、と確信した。さっきのように後ろを取られれば一巻の終わりだ。ある程度接近されるならまだしも、やはり近接戦は避けなければ。あれ、なんか言ってること違くね?
とにかく、弾けるように起き上がったあいつと距離を開く。このままじゃ近過ぎる。
「はあ、はあ……ったく、手こずらせやがって」
息切れをしてきた。もうそろそろ限界かと、土ぼこりが絶えない暗闇の戦場を後進する。
(おやおや、そろそろ限界かい? 息が荒いようだけど)
「……馬鹿言え、まだ寝るには早いぜおチビちゃん」
怒らせようとした台詞に返事が返ってこない。虚勢と悟られたか。馬鹿のくせにこういうのはわかるんだな。
ガチャンと音がした。装填が完了したか。砲を改めて《マーヴェリック》に向ける。だが撃たない。撃てない。ただの砲撃で仕留めれる相手じゃない。
正面から突進、はない。一旦すり抜け横か後方から、これもない。《マーヴェリック》の巨体と速度でそんな挙動したらグラグラ言って平衡感覚すら失うだろう。衝撃緩和装置(ショック・アブソーバー)なんて期待できないからな。
なら、どうするか……荒くなった息と、目に入って邪魔な汗の匂いが充満したコクピットの中悩ませていると、《マーヴェリック》が突撃してきた。
「んなっ!?」
戦術ゼロのがむしゃらな突っ込み。予想外ではあるがこんなもの余裕で対処できる。土ぼこりが地面にベールを撒く中、見えないスコープで照準を構えまさにトリガーを引こうとする。
まさに狼を思わせる風貌で駆けるケダモノ。鋼鉄にそぐわぬ加速を生み出す。四本脚の一本がその爪をベールに沈め、間髪を入れず掻き出した。
その爪に巨大なくず鉄を挟んで。
「!!?」
土煙が沈殿し見えない真下にあったくず鉄――破壊された《ゴーレム》の残骸。それをすくいあげて投げつけてきた。
「づぅおっ!」
パイロットは脱出したのか、なんて心配する余裕もない。ぶち当たってくる鉄の死体に十五.五センチ砲弾を反射的に撃ち込んだ。
鉄棒で殴られでもしたか、既に半壊していた《ゴーレム》はさしたる抵抗もなく砲弾の回転に合わせ砕け散った。しかし、そんなこと一機は気にしていない。
粉砕される同胞の亡骸、その下をすり抜けるように《マーヴェリック》が飛び入った。
目くらまし。馬鹿でもわかる。それについ対応してしまった自分の愚かさを一機は呪った。
ふところに入りこまれた。次弾装填も間に合わない。
狙いは明白、こちらのコクピット。一撃で仕留める気だ。
今まさに突き立てられんとする爪が、マジックミラー越しに迫ってきた瞬間一機は――ぐにゃりと、顔を歪めた。
「――かかったぁ!」
怯えるどころかしたり顔をして、あろうことか機体を全力前進させた。(なっ!?)とエミーナが叫ぶ間もなく、前へ倒れてきた。
コクピットに刺さるはずだった爪は軌道が逸れ、一番装甲が厚い胸部にぶち当たった。標的を失った刃はその鋭さでも断ち切れぬ鋼鉄にその身を打たれ、中ほどでへし折れる。
だがそれだけに止まらない。全速で襲いかかった《マーヴェリック》は停止すること叶わず、《サジタリウス》と激突する。歴然とした重量差がある二機が衝突すれば結果は明白。
(だわあああああぁ!)
「だあぁ!」
圧倒的な質量を持つボディプレスにより右腕は砕かれ、《エンジェル》の原形を残した四角の頭部も頭突きした側がひしゃげていく。そのまま押しつぶすかと思われたが、
(どっせぇぇい!)
「がぁっと!」
《マーヴェリック》がもう片方の腕で突き飛ばし、《サジタリウス》も転倒をかろうじて堪えた。
(はあ、はあ……ば、馬鹿かお前!?)
「……何度も言われた気がするね、その台詞」
確かに狂ってるだろうなとクラクラする頭で応じた。ドン亀よろしく倒れたら二度と起き上がれない《サジタリウス》を、敵が食らいついたのに合わせて自分から倒して押し潰そうなんて、一機自身おかしくなったんだなと自覚した。
それしか質量差という接近戦での利点を使える方法が思いつかなかったので予備案として保管していたが、まさか実践する羽目になるとは。
「だけど……これで形勢逆転だな」
衝撃で切った口から血液混じりのつばを吐きだす。マジックミラー越しにかけられた《マーヴェリック》の全貌は、哀れなものだった。
右腕は砕かれ、頭部はひしゃげている。骨しかないフレームが災いして直接激突していない部分もところどころ軋みが見える。せっかくの高機動もあれでは半減以下だろう。ザマミロだ。
だが、それでも小狼は三本脚の戦闘態勢を崩さなかった。
(や、やりやがったな……!)
「はあ、はあ……まだやる気か?」
(当たり前だ! このままやられたまんまで……)
「なあ、エミーナ」
遮るように、一機は口を開いた。息切れしているにもかかわらず、淡々と。
「喫茶店のときは悪かった」
(あん? お前何を……)
「あの酒美味かったよ、ありがと」
(だから、今そんなこと……)
「《サジタリウス》と引き合わせてくれたことは、本当に感謝している。たとえ、こんな形になったとしても」
(…………)
「エミーナ、俺は……」
唇を噛み、次の一言が発せなかった。マジックミラーだとわかっていても、顔を下げてないと今の自分が見られてしまいそうで嫌だった。
「親友(おまえ)と、戦いたくなかったよ」
(……同感だ)
大砲と爪、凶器を向けあっている二つの巨人の間に、季節にそぐわぬ枯れた風が吹いた。
それぞれの戦意の証が脈動した時、二人は自然に叫んだ。
「ライノス領カール自警団団長、エミーナ・ライノス!」
「シルヴィア親衛隊雑用見習い補佐もどき、ヴァン・デル・ヴェッケン!」
「「参る!!」」
互いの立場、そして守りたいものの名を背負い、二つの思いが激突した。
三本になった足で地面を叩き、大きく横へ跳ねさせた。
「ぐがっ……!」
強烈なGを食らい胃液が逆流しかけるが、歯を食いしばって耐える。大振りな移動は奴に動きを読まれるから、エミーナとしては小刻みに機体を駆けさせて抜けるしかない。
(やろぉ!)
キャラピラを旋回させて《サジタリウス》は体ごと追うが、そんなんに捕まるわけがない。ぐるりと奴の周りを走り抜ける。
問題は、奴がまた自機の損傷に構わず足下で吹き飛ばした時だ。至近距離であれをやられたら、今度こそ《マーヴェリック》は終わりだ。恐らく――いや、間違いなく奴はやる。
ならば、すべきことは一つ。奴に『無駄弾』を撃たせることだ。方法は……これしかない。
一瞬で命が奪われるその高速ステップの刹那、《マーヴェリック》は不意に停止した。
刹那と呼ぶにふさわしいほんのひと時、だがそれを見逃す一機ではない。ほとんど本能的にトリガーを引いた。
「づぅあらぁ!!!」
砲弾が発射される直前、いや、エミーナはそれより前に機体を地面からはね上げていた。
鉄伝で何度もやり合ったその力量、腕は自分が一番知っている。あのタイミングで撃とうとしないことなどできるわけがない。それを見込んでワザと隙を……なんのことはない、あいつが得意としたやり方を真似ただけだ。
狙いを外した弾は地面に激突し爆発する。万一外しても地面やらでダメージを与えるためだ。しかしそれは《マーヴェリック》が大地にいる場合。飛べば爆風は単なる加速装置だ。
鋼鉄の狼は天高く舞い、《サジタリウス》の頭上を飛び越した。
(んなっ……!?)
着地、《サジタリウス》の真後ろを取った。いける。
「うおおおおおおおおおおおおおぉ!!!」
雄叫びとともに《マーヴェリック》をひねらせ、親友(しゅくてき)へ最後の一撃を振り下ろす。狙うは先ほどと同じく装填用のコンベア。
これで、終わる――そう知覚した瞬間、エミーナはまったく違う光景を目にしていた。
初めて『ばら撒きヴェック』に出会いボコボコにされた日。
こちらで遭遇し、ケンカで殴られた頬の痛み、鼻の痛み。
一緒に飲んだ酒の味が、口からしみ出てきた。
「――だあぁ!!」
目にあふれたものを振り落とすように、大きくコクピットにこだました怒声。しかしそれをかき消すように、爆音が鳴った。
《サジタリウス》の砲撃。聞くまでもないが、いきなり振り向けるわけはない。背を向けて逆側に撃っていた。目くらましのつもりか、何を今更。
悪いが、もらった。研ぎ澄まされた五つの刃が、鋼鉄の砲撃者の生命線を切り裂こうとした。
だがその刃は、《マーヴェリック》の眼前に迫ってきた巨大な筒に阻まれた。
「!?」
何なのかわからないまま衝突、ただでさえ潰れていた頭部をその鉄の筒はさらに砕いた。
なんだこれ。あり得ない。何処から来た。バランスを崩して転倒する機体の中でエミーナはただ混乱していたが、よく見ると戦場の周囲にもいくつか似たようなのが転がっていた。それでハッとする。
薬莢。あれだけの巨砲なら当然吐きだされる薬莢も巨大になる。それがぶつかった。否、ぶつけた? まさか、あの刹那にそこまで浮かんだなんて。
「な、なめる、な……!」
片腕を失いつつも起き上がらせようとしたエミーナの挙動は、
ゴン、ともはや原形を留めなくなった頭部に押しつけられた砲口に制止した。
「…………」
(…………)
硬直。
こっちが転んでる間に反転したか。まったく、とんでもない奴だ。
やはり、勝てなかったか――切れた額から血がドロリと流れるのを感じたエミーナは、自分の敗北を悟った。
だけど、これで終わりじゃない。
鉄伝なら、ここで自分の機体が消えてゲームオーバー。しかしこれは現実。この次がある。
マジックミラーにそびえる黒い巨体、他のMNと一線を画す怪物が、今まさに自分を食おうとしているのに、どこか落ち着いた気分だった。
頑張ったけど負けた、全力を尽くしたからしょうがない、なんて子供じみた感覚ではない。ホッとしているんだとエミーナは知る。
そりゃそうだ。せっかくできた友人を、殺さなくて済んだんだから――
(……っ)
大砲を突き付けて微動だにしない《サジタリウス》の中にいるあいつの心が伝わって来ているように感じる。すまんとも言えない。悪いな、こんな役やらせちまって……
せめて、目ぐらいは閉じておくかと、エミーナは息を整え、目をつむった。
(……ミィナぁ!!)
突如、割り込んできた“声”に、エミーナはコクピットの中飛び起きた。
一機ではない、別の誰か。自警団の奴かとも思ったが、それも違う。『ジスタ』からではない、外からの“声”だ。外から? この戦場のど真ん中を?
視界を巡らせる。土と鉄くずが散布されたところに、人がいるはずが……いた。
(エミーナ! エミーナぁ!)
自慢のオールバックをボサボサに乱し、豪華に飾った服はボロボロのドロドロ。歳のくせに全力疾走でもしたのか、息も絶え絶えなのが遠目でもわかる。
(エミイィナぁ!!)
外聞を取り繕うのと自己演出に長けた商人の衣をはぎ取り、ジャクソンは《マーヴェリック》の元へ駆けていた。
あのクソ親父、何やってんだ。こんなとこへそんなカッコして。必死の形相で何してんだ。俺に寄こしたペンダント、あれを見ればエミーナの名前の意味も、あっちの世界に帰りたい理由も明白だ。だからこそ父と認めてこなかった。認められなかった。
だってのに、なんだその無様さは。まるで、まるで……
(――エミーナ)
呆気に取られていた一機が、再びこちらへ声をかけた。
かすれたその声は、にもかかわらず力強かった。
(悪いな!!!)
悪いな。その単純かつ簡潔な一言に一機は様々な思いを詰め、
言葉と一緒に、トリガーを引いた。
ドオォン!!
「う、うう……生きて、るのか……?」
どれくらい意識が飛んでいたのか、全身に痛みを覚えつつエミーナは覚醒した。コクピットの中をかき回されたらしい。
そのコクピットもひどい有様だった。赤い汚れがところどころについて、操縦席も外れている。
何より、装甲がパックリ割れてマジックミラーを介さなくても外がまる見えになってしまった。
その外からこっちに見下ろしている、剣を持った男の姿も。
「……よお、カズキ。似合わねえな鎧」
血が入って閉じた片目越しに映った男は、かつて画面越しに見た宿敵の想像図とよく似ていて、やっぱ全然違った。
「はは、にしても、『ばら撒きヴェック』はホント『ばら撒きヴェック』だな。薬莢ばら撒くとは思ってなかったぜ……」
「…………」
意識が切れそうでもなお笑っていた。これくらいの見栄を張らないとやってられん。
「結局、一回も勝ち星は上げられなかったな……さあ、ゲームオーバーだ。やれよ、ヴァン・デル・ヴェッケン」
それがお前の“立場”だろ……? くいくいと指で招きつつ、エミーナは笑った。最後くらい、笑っていたかった。
「……はあ」
しかし、カズキはその剣を投げ捨てると、背を向けて座り込んだ。
「やめた」
「は?」
「なんかもう、やる気無くしたわ」
気の抜けたように言葉に、さすがにエミーナも愕然となる。
「な、んだそりゃ……」
「疲れた。もう何もする気起きん。それに……」
そう言って、親指でくいと指差した。その手には、切れたチェーンと三つのアクセサリがあった。
「あのオッサン割り込んで、つい砲弾を上に逸らしたのに今更だ」
「……! そうだ、あいつは……」
「なあ、エミーナ」
「な、なんだ?」
「お前名前なんて言うの?」
気だるそうに問われ、思わず「へ?」と生返事を返した。
「あんたがジャクソンの娘じゃないんなら、本名あるんだろ、名前は」
目を見開く。どうしてそれを、と聞こうとしたが、カズキの手に収まってる三つ目のアクセに気付くと、なんとも馬鹿馬鹿しくなって脱力した。
「……錦織薫子」
「え、日本人?」
「ハーフだよ。父親は白人。そういうお前の本名はなんなんだよ」
「俺? 俺は……的場一機」
面白味のねえ名だ、そうエミーナが嗤うと、お前こそずいぶん女の子した名前だことなんて憎らしげに返すのだった。
「は、はは、ははは……」
今まで戦場だった場所の真ん中で、仰向けに倒れたジャクソン・ライノスと名乗っていた男は笑っていた。
終わった。これで全てパーだ。十年間の苦労も、これから待っていたはずの無限の未来も。何もかもパーだ。
逸り過ぎたのだろう。《アレ》を動かせる男が現れてつい有頂天になっていた。あのヴェックというガキを見誤ったというのもある。ヘレナも甘く見過ぎた。商売に焦りは禁物だというのに、本当に笑うしかない。
そこに、鎧を着た男が敗残者の顔を覗きこんできた。
「なんだ、お前か……笑いに来たのか?」
ある意味全ての元凶と言える男に、ジャクソンは不思議と恨みは抱かなかった。自業自得なんて言葉がこいつと“あの女”の祖国にあったかな。
その男――一機は「けっ」と舌打ちすると、呆れたように口を開いた。
「何が石油を持って帰って世界征服だ。その前にシルヴィア侵略だ。どうもスカスカだと思ったら、全部嘘だったんじゃねえか」
「……嘘?」
「俺は英語のテストはいつも赤点スレスレだったが、これくらいはわかるぞ」
エミーナが落としていった黄土色の猫の形をしたアクセ。メガラの技術ではとても作れなそうな精巧な細工物の裏に刻まれた文はたった一言。
To my dear daughter Emina(我が娘エミーナへ)
「帰りたかっただけなんだろ、娘の元へ」
「…………」
「だから急いで、あわてて、なりふり構わなくなって。だけど、エミーナの、あいつのことは娘だとちゃんと思ってたんだよな? だったら、このアクセを渡すわけ……」
「あいつはエミーナじゃない」
一機の言葉を遮るジャクソンの声は、どこまでも堅かった。思わず一機は激昂する。
「嘘だ! ならどうしてここまで来た。あいつは、あんたのために……!」
「だから、厄介なんだろうが」
なに……?と声のトーンを落とした一機に、ジャクソンは腕で目を隠し、自嘲気味に呟く。
「エミーナじゃないから、厄介なんだろうが……あんな名前、付けるんじゃなかった……」
尻もちをつく音がして、「……馬鹿だ、あんたら親子」なんて放たれた声に、知ってるとだけ応えておいた。
かくして、ここに『ライノス事件』と後日称される戦いは終結した。
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