林艮酔記
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ここ10年ほど,北アルプス(と八ヶ岳)ばかり行っていた。南も気になってはいたのだが,いかんせん交通事情がよくない。とくに広河原から甲府へ帰るバスは,7月半ばから8月20日ごろまでを外すと,平日は実質的に1日2本…12:25と16:00(ハイシーズンの日祭日でも3本だけど…12:00と13:25と16:00…まあ,多少はマシ)かといって,ハイシーズンや日祭日は,混むこと必定。混むのは大嫌い。おまけに周辺の小屋のほとんどは,予約必須となってしまっている。となれば行きあたりばったりでは到底いけない。「計画性」という言葉は,私から最も遠いところにある。そういうわけで,甲斐駒と仙丈は,ずっと行きそびれていた。だが今回,勇を鼓して,長年の懸案の克服に向かったのである。 ◇ ◇ ◇9月16日(日)。予測できない天気図とのニラメッコをあきらめ,「とりあえず行ってみないとわからん」てんで,甲府駅南口9:00発広河原行きのバスに乗る。途中,夜叉神での10分の休憩を経て,11:10ごろ広河原着。思いの外,晴れていた。1時間ほど時間をつぶし,12:20発のバスで北沢峠へ。ちょうどバスに乗るころ,雨が降り出したが,途中で止んだ。ラッキー♪バスを降り,戸台方面へ少し歩く。車道を左へ外れ,大平山荘を経て,藪沢を登る。初めは沢の右岸のシラビソ林を行く。途中からジグザグを切りつつ斜上。するとこんな看板が。そーっとのぞいて見てみたら,左に滝がちらりと…要するに滝を高巻いたわけね。少々下って藪沢へ出たら,左岸へ渡り,沢沿いを登る。この辺りから,雨になる。途中,ミヤマトリカブト,ミヤマコゴメグサ,ミヤマアキノキリンソウなどが,まだ花を咲かせていたけれど,雨のためカメラを取り出すこともできず,ひたすら登る。北沢峠から2時間半ほどで,予約していた馬の背ヒュッテに到着。夕食のミヤマカツカレーを食べて,さっさと床に就く。 ◇ ◇ ◇夕方,いったん止んだ雨は,夜になってまた本降りに。だが,いつの間にやら再び止んで,朝。10分ほどで馬の背へ。行く手,藪沢カールに,新築間もない仙丈小屋(旧避難小屋)が見える。仙丈ケ岳山頂は,ガスにかすんでいる。けれど,そのガスも吹き飛ばすほどの南風が吹いている。左には,甲斐駒。その向こうに,八ヶ岳。仙丈小屋を過ぎた頃,ガスは飛ばされ,目の前に山頂。ところがここで,風とともに雲が襲来。雲はさらに甲斐駒めざして,龍のように走ってゆく。わずか5分の間に,空はかき曇り,山頂に着いたときには,まわりは真っ白。あとは曇った眼鏡を拭きつつ,ひたすら下るしかなかったのであった。(つづく)
2007年09月19日
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