前回までに説明したように、虫歯の発症には歯の主成分(HA)が酸性水溶液(H+)中に存在することが必要だった。
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それは、HA(Hydoroxyapatite)はH+の伝導物質で水素イオン伝導性セラミックスと呼ばれる通り、HAにとってH+は内部を流れる電流そのものだからだ。
そのH+がHA内部から外部の水溶液中に放出されるときにH+よりイオン化傾向の大きなHA結晶中のCaから電子を奪いH2ガスとなり、CaはCa2+となり水溶液中に溶出する。
こうしてHAの結晶は崩壊していく。これが虫歯の実像だ。
しかしH+の存在だけではHA中をH+は動かない(流れない)。プラスの荷電粒子であるH+を動かすにはHAの内外を問わず何らかの起電力が必須だ。それを電池と言っても良い。
この電池を形成するのにH+の存在は大変都合が良い。なぜそうなのかという話はここではしないが、例えば自動車バッテリーの液は硫酸をいう酸でH+を高濃度に含んでいることからも分かると思う。
だから虫歯の発症にはH+の存在が必須で、さらにH+を動かすための起電力(電池)の形成にもH+は必須だと言っても良い。
この時のH+の濃度は高い方が化学活性も高い。要するにpHが低い方が虫歯にもなりやすいことは経験上も容易に分かると思う。
ここでやっと糖質と虫歯の関係の話に入れる。
糖質は多くの細菌を始め人間に至るまでのエネルギー源になっており、解糖系という生化学反応系で代謝されその過程で各種の有機酸を生成させることが分かっている。
ここまでは誰でも知っていると思うが、口腔内の細菌もまた糖質を摂取して酸を出す。
しかし酸だけでは虫歯にはならないということだ。
糖質を多量に摂取しても、歯磨きもしないのに虫歯にならない人はいる。逆に歯磨きを頑張ってデンタルフロスもかけているのに虫歯になる人もいる。
酸だけでは虫歯にはならず、さらに起電力が必要だからだ。
この起電力の発生メカニズムはイオン化傾向の違いによるものの他に酸素濃度差というものがある。
酸素濃度差(通気差)電池としてよく知られている。
臨床的には過大な咬合力(咬合性外傷)により歯牙にクラック(ヒビ)が入りその酸素の少ないクラック内部と相対的に酸素の多い外部との間に酸素濃度差による起電力が発生する(クラック内外に電池が形成される)。そしてクラック内部が虫歯になるというのをよく見かける。この子の右上6のケースはそうだと思われる。
ただ酸を取り除くことは極めて容易で、酸をアルカリで中和すれば良い。
具体的には重曹で中和すれば良い。
元々血液・唾液中に含まれているこの重曹成分(重炭酸イオン)による緩衝能はすでに生体内で炭酸緩衝系として体液のpH維持に使われている必須かつ全く無害なものだ。
この機能を強化したものが「重曹うがい」であり「重曹はみがき」だと言える。
従来の様々な虫歯対策と称するものとは違い、本質的かつ根本的な対策であり、その効果は桁違いだ。
つづく