I歯科医院の高楊枝通信。

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高カリエスリスク症例1.3(右下6の修復、歯の発生上の虫歯の問題)



前回のつづき

https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/202403120001/

今日でこのシリーズは終わりになると思う。

若い子の場合、虫歯になりやすい部分は大臼歯の場合、3つある。
1、咬合面の窩(か)とか溝(こう)と呼ばれる部分
2、隣接面と呼ばれる隣の歯との間
3、咬頭(こうとう)と呼ばれる尖った部分

1、2に関しては 歯の発生 の概要から見た方が分かりやすいかもしれない。

なぜ歯の形が種によって決まっているのか、どうしてそのような形になるのかはよく分かっていないと思う。前歯と奥歯ではかなり違う。
ただどのように象牙質とエナメル質ができていくかということは観察できる。

象牙質を作る象牙芽細胞とエナメル質を作るエナメル芽細胞がお互いに向き合って配置された半球状のシートがあると想像してみてください。
それらが一斉に象牙芽細胞は内向きに象牙質を作り始め、エナメル芽細胞はエナメル小柱と呼ばれる細長いハイドロキシアパタイトの結晶構造を作りながら外側に向かって移動していく。

ここで取り上げる下顎の6番の場合、その半球状の塊が5つあって、押し合いへし合いしながらエナメル質と象牙質を作りながら大きくなっていく。

その内2つの塊が作ったエナメル質の境目が溝で、3つの塊が作ったエナメル質が合わさったところは深い窩になる。

これら歯の発生過程でできた溝や窩が虫歯になりやすいのだが、その原因は溝や窩の内外で生じる酸素濃度差腐食がメインだということはこのシリーズを遡ってご覧になれば分かると思う。

3、の場合はこれも歯の発生上の問題で、尖ったところはエネメル芽細胞がエナメル質を作りながら外に膨張していくので、疎(まばら)になっていく。エナメル質の結晶も疎になりやすい。
さらにこの部分は対合歯と強く噛み合うところなので、度重なる外傷力により疲労が蓄積しやすい。
金属の腐食で言えば金属疲労と呼ばれるもので、細かいクラックが構造上弱いところにできて崩れていき、応力に耐えられなくなった時、一挙に破断する。

2、は隣接面のコンタクトポイントに腐食電流が通りやすいことからできると思って良い。電気化学的な問題だ。もちろん隣接面は咬合力によって微小クラックが入りやすいとか、磨きにくいとかという増悪要因はある。

https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/202312180001/

では具体的な虫歯になる部分の解説をしよう。

溝や窩の大部分は前医によりCR充填されているので今回は特に触っていない。
今回は対合歯と強く当たる咬頭部分と頬側面の溝に虫歯ができているのでこれらの部分を修復した。
咬頭部分の虫歯が解説したので、頬側面溝の虫歯だが、萌え(はえ)てきた時にはすでに虫歯になっていることも多い部分だ。この部分のエナメル質は薄く、さらに外向きに豊隆しているので疎になりやすいので、酸素濃度差腐食により簡単にエナメル質が腐食し、象牙質が露出するので異種金属接触腐食に進みやすいと言える。頬の粘膜に隠れるので酸素濃度差も他の部分より大きいので虫歯の進行は速い。
隣接面の虫歯はまだ確認していない。

このような虫歯の成因に関する考察は電気化学的な知見がないと全くできない。
「​ 虫歯の電気化学説 ​」が定説になってほしいものだ。


頬側面の虫歯の方が大きかった。軟化象牙質(虫歯)は完全に除去しないでもα-TCP(ハイドロキシアパタイト)によって再結晶するので、CRの接着力を維持するために辺縁の新鮮歯質を確保することに注力すれば良い。






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