夢みるきのこ

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2010年07月30日
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カテゴリ: ロシアクラブ
夏木立したたる子供音楽祭

 ギャラリーきのこを応援していただいている山本郁夫さんの監修による表題のコンサートが灘区民センター・マリーホールで開かれたのでかけつけてきた。副題に「親子手作りミュージカル 2010」とあるように脚本・金城泰江(高校2年)、衣装デザイン・藤井茜(中学2年)、そして配役は小学生を中心に保育所年長組さんから高校1年生までの多岐にわたる年齢層の子供たち。それに衣装制作を父母チームが手伝い、音楽を山本郁夫さんが担当するというユニークなもの。当夜の演目は「続☆不思議の国のアリス~パート3~」で平成版・不思議の国のアリスだ。山本さんはロシア国立ヤクーツク歌劇場正指揮者/モスクワ中央音楽院管弦楽団指揮者の肩書をもつこれまたユニークな逸材だが、彼の素晴らしいところは子供たちに無限の可能性をみているところだ。そしてその開発のためにあらゆる機会を通じて子供たちにその才能発揚の「場」を作り続けていること。今日はそんな彼の打ちあげた「妙(たえ)なるきのこ」を観賞する日だ。豪雨もおさまった夕べ、仕事を早退して会場へと急いだ。
 コンサートの第1部は田中杏菜さんのヴァイオリン独奏・クライスラー作曲「レスタチーボとスケルツォ」。現在、ノヴォシビルスクの音楽院に留学中の彼女は中学生。超絶技巧の曲をさらりとエモ―ショナルに弾きこなし、親子で満たされた会場を一瞬凍らせた。続いて東恵子さんのピアノ伴奏による山本龍くんのチェロ独奏・ハイドン作曲「チェロ協奏曲第1番第1楽章」。杏菜さんと同じく中学生の彼は、いささか謹厳実直そのものでお父さんとは正反対の性格との印象を与えるがやはり演奏の端々に滲み出る音調には血の争えぬ温かいものを感じさせてくれる。山本くんは今乗りにのっていて終日でも弾き続けられそうな勢いだが、今回の第1楽章のカデンツァ部分は特に聞かせどころであった。そして第一部の酉は、新婚ほやほやの東恵子さんのピアノ独奏・リスト作曲「ヴェルディの<リゴレット>による演奏会用パラフレーズ」。自在を得てしかも繊細さを失わないタッチで弾きまくり思わず彼女の生み出す音楽の渦に呑まれそうになった。
 そして、山本さんのもっともすぐれたところは、こうした催しには必ず一流の演奏者を招いて、親子に加えて幼な子たちにも分け隔てなく最高の音楽に触れる機会を提供しつづけていることだ。ヤクーツク歌劇場専属メゾソプラノ歌手のアナスタシア・ム―ヒナ氏とボリショイ歌劇場専属のテノール歌手アナトーリ・ザイチェンコ氏もそれを心得ていて、さわがしい子供たちをシーンとさせるような演奏ができなければ、それは自身の責任だと考えている様子。夏秋光代さんのピアノ伴奏によるそれぞれのオペラ歌曲の独奏もさることながら、私はうん十年ぶりに聞いた「ラ・エスパニョーラ」をおふたりがデュエットで歌ってくれたことに感動した。
 第2部ではマスクの国の住人としてサーシャちゃんがパンダみたいなメイクをほどこされて出演しているほか、鏡の国、ロボットの国、マスク(仮面)の国のアリスと住人たちが悪の国のダーク親分の一味たちと戦うのだが、不揃いの子供たちが不揃いのままそれぞれ個性豊かに演じているさまには胸熱くなるものを感じた。
 コンサートのあと、ギャラリー常連のH氏がJR西明石駅界隈にハーバーランドから移って1週間前にオープンしたというスペイン料理の店がとてもおいしいというので、ちょっと、いや、ずいぶんの距離を寄り道してギネスとシェリー酒で乾杯し、またまたすさまじい月明かりの中、家路を急いだ。





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最終更新日  2010年07月30日 11時57分21秒
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