趣味の漢詩と日本文学

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October 1, 2005
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カテゴリ: 漢詩・漢文
送李侍御貶■(チン)州 
洞庭波渺渺、君去弔靈均。
幾路三湘水、全家萬里人。
聽猿明月夜、看柳故年春。
憶想汀洲畔、傷心向白蘋。
【韻字】均・人・春・蘋(平声、真韻)。
【訓読文】
李侍御の■(チン)州に貶(ヘン)せらるるを送る。
洞庭波渺渺、君去つて霊均を弔(とぶら)ふ。

猿を聴く明月の夜、柳を看る故年の春。
憶想せよ汀洲の畔、傷心して白蘋に向かふを。
【注】
○李侍御 未詳。姓が李で、侍御史をつとめた者。「侍御史」は、もと秦の時代に置かれた宮中の図書係であったが、のちに治書侍御史(図書を司る)、殿中侍御史(宮中の非法を取り締まる)、監察侍御史(内外の非法を正し、祭礼などを取り締まる)の三つに分かれた。
○■(チン)州 治所は今の湖南省■(チン)県。楚の項羽が義帝を撃殺させた地。
○洞庭 湖南省にある湖の名。かつて中国最大の湖であった。
○渺渺 水が広くて果てしがないさま。
○霊均 屈原の字(あざな)。春秋時代の楚の文人。もと楚の三閭大夫で、直言を好み、祖国の存続繁栄のために、斉と協力して秦に対抗する縦横策を立てたが、張儀の連衡策を用いた君主の意向と合わず、流浪のすえ、汨羅江に身を投げた。、『楚辞』に「離騒」「九歌」「天問」などの作品をのこした。(前三四三……前二七七年)。
○三湘 諸説ある。一は、湘江の上流と漓水と合流して漓湘となり、中流と瀟水と合流して瀟湘となり、下流と蒸水と合流して蒸湘となり、漓湘・瀟湘・、蒸湘を合わせて三湘という。一は、湘郷を下湘、湘潭を中湘、湘陰を下湘とし、合わせて三湘という。一は、湘東・湘西・湘南を合わせていう。
○全家 家じゅう。
○傷心 心をいためる。『戦国策』「悲しみは心を傷ましむるより痛なるは莫し」。

○白蘋 白い浮き草。
【訳】
李侍御が左遷されて■(チン)州に赴任するのを見送る。
洞庭湖には波が果てしなく広がり、君は任地へ向かい屈原を弔う。
どの路が三湘に続いているのであろうか、君は家族全員ひきつれて一万里も離れた■(チン)州への旅に出る。

時々は思い出してくれよ、私がこの川の中洲の畔で、白いウキクサを眺めながら、いつも君のことを思って心配しているのを。





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Last updated  October 1, 2005 08:36:48 AM
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