趣味の漢詩と日本文学

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April 14, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
送盧侍御赴河北 劉長卿
謫居為別倍傷情、何事從戎獨遠行。
千里按圖收故地、三軍罷戰及春耕。
江天渺渺鴻初去、■(サンズイに「章」。ショウ)水悠悠草欲生。
莫學仲連逃海上、田單空愧取聊城。
【韻字】情・行・耕・生・城(平声、庚韻)。
【訓読文】
盧侍御の河北に赴くを送る。
謫居して別れを為せば倍(ますます)情を傷ましむ、何事ぞ戎に従ひて独り遠く行く。

江天渺渺として鴻初めて去り、■(ショウ)水悠悠として草生ぜんと欲す。
仲連を学びて海上に逃ぐること莫かれ、田単空しく愧づ聊城を取るを。
【注】広徳元年(七六三)春、揚州における作。
○盧侍御 劉長卿の知人らしいが、未詳。
○河北 唐の河北道。東は海に浜し、西は太行・常山に至り、南は黄河に至り、北は薊門・楡関範囲の内地に達す。安史の乱のおり、河北の州郡は、多く反乱軍の陥れる所となったが、広徳元年正月に悉く平定された。
○謫居 罪により遠方へ流される。
○倍 ますます。さらにまして。
○傷情 悲しみで心をいためる。
○何事 どういうわけで。
○従戎 戦争にたずさわる。
○遠行 遠方の地にゆく。

○故地 もとの領地。
○三軍 大軍。
○罷 やめる。
○春耕 春になって、田畑をたがやす。
○渺渺 遠くはるかなさま。

○■(ショウ)水 山西省に源を発し河北省に入り衛河と合流する。
○悠悠 ゆったりした様子。
○仲連 戦国時代の斉の高節の士、魯仲連。趙・魏が秦を恐れて秦王に帝号を与えようとした際に異を唱えてやめさせた。魯仲連が斉を助けて、燕の占領下にある聊城を奪回した。その功により斉が爵位を授けようとしたとき、海上に逃れた。
○田単空愧取聊城 田単は、戦国時代の斉の武将。火牛の計(牛の角に刃物を固定し、尾に葦束を結んで火をつけ、敵陣に突入させる計略)により燕の将軍楽毅を破り、次いで斉の七十余城をことごとく奪還し、安平君に封ぜられた。
【訳】
盧侍御が河北の地に赴任するのを見送る。
遠い異郷に流されて、いままた君と別れるは、なんともつらいことじゃわい、なぜにいくさにたずさわり、私を置いて遠く行く。
唐の領土を安んじて反乱軍から取り戻し、大軍ようやくいくさやめ、春の耕作はじまらん。
川の上空眺めれば遠くに雁が飛び去りて、■(ショウ)水流れゆったりと土手には草が生えはじむ。
海に逃れた魯仲連、ゆめゆめ真似をしたもうな、田単のごとき武将とて城の奪回恥じていよう。






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Last updated  April 18, 2007 10:09:31 AM
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