趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

July 31, 2007
XML
カテゴリ: 漢詩・漢文
長沙過賈誼宅 劉長卿
三年謫宦此棲遲、萬古惟留楚客(一作國)悲。
秋草獨(一作漸)尋人去後、寒林空見日斜時。
漢文有道恩猶薄、湘水無情弔豈知。
寂寂江山搖落處(一作正搖落)、憐君何事到天涯。
【韻字】遅・悲・時・知・涯(平声、支韻)。
【訓読文】
長沙にて賈誼の宅に過(よ)ぎる。
三年謫宦此こに棲むこと遅く、万古惟だ留む楚客(一に「国」に作る)の悲しび。

漢文道(い)ふこと有り恩猶ほ薄しと、湘水情無くして弔豈に知らんや。
寂寂たる江山揺落の処(一に「正揺落」に作る)、君を憐ぶ何事ぞ天涯に到る。
【注】
○長沙 湖南省長沙市。
○過 立ち寄る。
○賈誼 前漢の文帝に仕えた文人。辞賦に秀で論策にも長じた。権力者に妬まれ讒言により、長沙王の太傅に左遷された。賈長沙ともいう。のちに再び文帝に召され、末子の梁懐王の太傅となったが、懐王が落馬死すると、その翌年憂死した。著に『新書』あり。(前二〇一……前一六九年)。
○三年 長沙に左遷されて三年間とどまった。
○謫宦 官吏がとがめを受けて官位をおとされ、遠方の辺地に流される。
○万古 昔からずっと。
○楚客 故郷を離れて楚の地方(長江中下流域)にいる者。
○寒林 さびしい林。

○湘水 湖南省を流れ、瀟水と合して洞庭湖に注ぐ。
○無情 心が無い。
○弔 人の死を悲しみ、いたみとむらう気持ち。賈誼は任地に赴く途中、「弔屈原文」を作った。
○寂寂 ひっそりとして、さびしいようす。
○江山 山川。

○何事 どういうわけで。なぜ。
○天涯 きわめて遠い所。
【訳】
長沙にて賈誼の宅に立ち寄って詠んだ詩。
官位おとされ流されてこの地に住んでもう三年、昔からただ留まるは楚に流されし悲しみよ。
人去りてのちひっそりと賈誼の旧宅たずねみん、さびしき林ひとけなく日の暮れがたにたどり着く。
漢文にいう天子様の御恩でさえも薄きとぞ、湘水人情あらざれば我の弔意もわかるまい。
ひっそりさびしき川沿いの山が木々の葉落とすころ、君なに故に流されて都離れてここきたる。  





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  August 1, 2007 08:56:56 AM
コメント(200) | コメントを書く
[漢詩・漢文] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: