趣味の漢詩と日本文学

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September 16, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
送宇文遷明府赴洪州張觀察追攝豐城令(時長卿亦在此州) 劉長卿
送君不復遠為心、余亦扁舟湘水陰。
路逐山光何處盡、春隨草色向南深。
陳蕃待客應懸榻、■(「宀」の下に「必」。フク)賤之官獨抱琴。
儻見主人論謫宦、爾來空有白頭吟。
【韻字】心・陰・深・琴・吟(平声、侵韻)。
【訓読文】
宇文遷明府の洪州に赴き、張観察の追つて豊城の令を摂るを送る(時に長卿も亦た此の州に在り) 劉長卿
君を送るに復た遠きは心の為ならず、余も亦扁舟湘水の陰(みなみ)。

陳蕃客を待つに応に榻を懸くべし、■(フク)賎官に之きて独り琴を抱く。
儻(もし)主人の謫宦を論ずるを見なば、爾來空しく有らん白頭の吟。
【注】
○宇文遷明府 未詳。「明府」は、唐代の県令の称。
○洪州 むかしの治所は今の江西省南昌市。
○張観察 張休。洪州刺史の時、江西観察使を兼任していた。「観察」は、観察使。中国で地方政治を総理する官吏。
○此州 越州。
○扁舟 小さい舟。
○湘水 湖南省を流れ瀟水と合流して洞庭湖にはいる。
○陳蕃待客応懸榻 後漢の陳蕃は、郡に在りて賓客を接待しなかったが、徐稚がやってきた時だけは榻を設け、彼が去ると榻を懸けてしまったという。
○■(フク)賎 ■(フク)賎は単父を治めたとき、琴を弾き、自身は官舎から出ずに、単父が治まったという。すぐれた県令のたとえ。

○主人 道中に泊まる宿屋の主人。
○謫宦 官吏がとがめを受けて官位をおとされ、または遠方の辺地へ流される。
○爾來 そのとき以来。
○白頭吟 司馬相如は茂陵の人の娘を妾にしようとした時、妻の卓文君が白頭吟を作り自害したので、妾を迎えるのをやめた。ここでは老年になって朝廷から見捨てられた不満をいう。

【訳】

君を見送り別れても、心離れるわけじゃなし、われも小舟で湘水の南にうかぶ寂しさよ。
山の景色にしたがって路はどこまで続くやら、草の色とて南に行くにつれ濃くなりゆくぞ。
陳蕃客をあしらうに良き友あつくもてなさん、かの■(フク)子賎役所にて琴弾き地方よく治む。
宿の主人もたちまちに左遷をあれこれと言ったれば、その時以来口ずさむ恨含んだ白頭吟。






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Last updated  September 17, 2007 10:40:04 AM
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