趣味の漢詩と日本文学

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November 25, 2007
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カテゴリ: 漢詩・漢文
過裴舍人故居 劉長卿
慘慘天寒獨掩(一作閉)■(「戸」のしたに「炯」のみぎ。ケイ)、紛紛黄葉滿(一作落)空庭。
孤墳何處依山木、百口無家學(一作汎)水萍。
籬花猶及重陽發、鄰笛那堪落日聽。
書幌無人長不捲、秋來芳草自為螢。
【韻字】■(ケイ)・庭・萍・聴・蛍(平声、青韻)。
【訓読文】
 裴舍人の故居に過ぎる。 劉長卿
慘慘として天寒く独り■(ケイ)を掩ふ(一に「閉」に作る)、紛紛として黄葉空庭に満つ(一に「落」に作る)。

籬花猶ほ重陽に及びて発(ひら)く、隣笛那ぞ落日に聴くに堪へん。
書幌人無くして長に捲かず、秋来たりて芳草自から蛍と為る。
【注】
○過 立ち寄る。
○裴舍人 未詳。「舎人」は、中書舍人。
○故居 旧宅。
○慘慘 薄暗いようす。
○天 そら。
○■(ケイ) かんぬき。また、出入り口。
○紛紛 乱れ散るようす。
○黄葉 秋になって黄色く色づいた木々の葉。

○墳 土を高く盛った墓。ここでは裴舍人の墓であろう。
○何処 どこ。
○百口 一家全員。一族全部。
○水萍 浮き草。
○籬 まがき。陶淵明《飲酒》「菊を採る東籬の下、悠然として南山を見る」。

○発 花を開く。
○鄰笛 向秀《思旧賦》「隣人に笛を吹く者有り。声を発すること寥亮たり」。
○那堪 どうして堪えられよう、いや、たえられない。反語。
○書幌 書斎のカーテン、あるいは簾のことか。
○長 長い間。
○捲 まきあげる。
○秋来芳草自為蛍 『礼記』《月令》「季夏の月……腐草蛍と為る」をふまえる。
【訳】
裴舍人の旧居に立ち寄って詠んだ詩。
どんよりとした空さむく独りさびしく門をとじ、木々の葉はみな色づきて人無き庭に舞い落ちる。
ぽつりとはなれた墓一つどの木のそばにあったやら、家族の者は家を捨てどこへ行ったか根無し草。
まがきの菊は重陽を迎えてみごと咲いてるが、隣家の笛は夕暮れに聴くにたえないさびしさよ。
書斎しずかに客もなくカーテンを巻くこともなく、秋に香りのよい草はすでに蛍となりて飛ぶ。





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Last updated  November 25, 2007 05:35:36 PM
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