趣味の漢詩と日本文学

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June 1, 2008
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カテゴリ: 漢詩・漢文
送姨弟往南郡 劉長卿
一展慰久闊、寸心仍未伸。
別時兩童稚、及此倶成人。
那堪適會面、遽已悲分首。
客路向楚雲、河橋對衰柳。
送君匹馬別河橋、汝南山郭寒蕭條。
今我單車復西上、朗陵■(サンズイに「霸」。ハ)陵轉惆悵。
何處共傷離別心、明月亭亭兩郷望。
【韻字】伸・人。首・柳。橋・条・悵・望。

姨弟の南郡に往くを送る。
一展久闊を慰め、寸心仍ほ未だ伸べず。
別れし時は両童稚、此に及んで倶に成人。
那ぞ堪へんや適会面し、遽に已に分首を悲しぶに。
客路楚雲に向かひ、河橋衰柳に対す。
君の匹馬を送りて河橋に別るれば、汝南の山郭寒くして蕭条たり。
今我単車復た西上し、朗陵■(ハ)陵転た惆悵す。
何れの処にか離別の心を共に傷ましめ、明月亭亭として両郷を望まん。
【注】天宝初めごろの作。
○姨弟 いとこのうち、父の兄弟以外の子。
○南郡 汝南郡。治所は汝陽。

○久闊 無沙汰。
○寸心 こころ。
○未伸 思いをのべつくさない。
○両 ふたりとも。
○童稚 児童。

○倶 そろって。
○成人 二十歳以上の人。
○那堪 反語で、たえられない。
○適 たまたま。
○会面 顔を合わせる。
○遽に已に
○分首 別れる。
○客路 旅路。
○楚雲 楚の地。
○河橋 川にかかる橋。
○衰柳 枯れ柳。
○匹馬 一頭の馬。
○汝南 いまの河南省汝南県。
○山郭 山の町の城郭。
○蕭条 ひっそりとしてものさびしい。
○単車 単独で供を連れない馬車。
○西上 都の長安に向かう。
○朗陵 汝南郡。『元和郡県図志』「河南道蔡州朗山県に漢の朗陵の故城有り、又朗陵山有り」。
○■(ハ)陵 漢の文帝の墓のある所。故址は今の陝西省西安市の東に在り。もと「霸陵」に作る。
○転 ますます。
○惆悵 嘆き悲しむ。
○何処 いったいどこで。
○亭亭 高いさま。
【訳】
いとこが南の郊外に行くのを見送る。
ひさかたぶりに君と会い無沙汰の心なぐさむも、心の中をなおいまだのべざるうちにはや別る。
まえに別れしときはまだ二人そろって幼くて、いま会う二人は成人し光陰まさに矢のごとし。
たまたま会えた喜びも、あっというまに別れ時。
君は楚の地を目指しゆく、橋のたもとに枯れ柳。
君の乗る馬見送りて橋のたもとにきたれども、汝南の山の町はずれものさびしくて肌寒し。
今われ単車で供連れず一人で西を目指しつつ、朗陵■(ハ)陵いやましに嘆き悲しみつのりゆく。
君は東へ我は西、別れの辛さみしめて、この高空の月のもと互いの身をば思いやる。






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Last updated  June 1, 2008 09:08:27 AM
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