趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

October 8, 2009
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【本文】廿六日。まことにやあらむ。海賊追ふといへば、夜はばかりより船をいだして漕ぎくる。
【訳】正月二十六日。本当であろうか、「海賊が追ってくる」というので、夜中ぐらいから船を出して漕いで来た。

【本文】道にたむけする所あり。楫取してぬさたいまつらするに、幣のひんがしへちれば楫取の申し奉ることは、「この幣のちるかたにみふね速にこがしめ給へ」と申してたてまつる。
【訳】船路の途中、海神への手向けをする場所があった。船頭にぬさを奉納させたところ、ぬさが東方へ散ったので船頭が申し上げたことには、「このぬさの散った方角へ船をすみやかに漕がせてくださいませ」と申し上げた。

【本文】これを聞きてある女の童のよめる、
「わたつみのちぶりの神にたむけするぬさのおひ風やまずふかなむ」
とぞ詠める。
【訳】これを聞いて、ある少女が詠んだ歌、
「海の奥底の海神さまに手向けをするぬさが東へ散ったように東へ向かう追い風よ、やむこと無く吹いておくれ」と詠んだ。


【訳】ところで、風向きが良いので、船頭が調子にのって、「船に帆をあげろ」などと嬉しそうである。その音を聞いて、子供も老人も胸中早く帰京したいと思っていたからであろうか、とても喜んだ。

【本文】このなかに淡路のたうめといふ人のよめる歌、
「追風の吹きぬる時はゆくふねの帆手うちてこそうれしかりけれ」
とぞ。ていけのことにつけていのる。
【訳】この船旅の客のなかにいた淡路島の老女という人が詠んだ歌、
「追い風がとうとう吹いた時は進む船の帆布を張って、手をたたいて喜ぶほど嬉しかった」と詠んだ。天気のことにかこつけて祈った。





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Last updated  October 8, 2009 05:38:51 PM
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