趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

January 24, 2010
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【訳】二月七日。今日は川尻に船が進入し漕ぎのぼったが、川の水量が減って行きなやんだ。船がさかのぼるのが非常に困難だった。

【本文】かかる間に船君の病者もとよりこちごちしき人にて、かうやうの事更に知らざりけり。
【訳】そうこうしている間に、船の御主人の病人は、もともと無骨な人なので、こんな事情を全く知らなかった。

【本文】かかれども淡路のたうめの歌にめでて、みやこぼこりにもやあらむ、からくしてあやしき歌ひねり出せり。そのうたは、

「きときては川のほりえの水をあさみ船も我が身もなづむけふかな」。

これは病をすればよめるなるべし。
【注】「きとき」は、遙々やって来る意の動詞「きとく」の連用形。
【訳】こんな具合だったが、淡路の国の老女の歌に感心して、都自慢のつもりでもあろうか、やっとの思いでへんてこりんな歌を作り出した。その歌は、

これは、船酔いの病気をするから、こんなふうに詠んだのにちがいない。


【本文】ひとうたにことの飽かねば今ひとつ、

「とくと思ふ船なやますは我がために水のこころのあさきなりけり(るべしイ)」。

この歌は、みやこ近くなりぬるよろこびに堪へずして言へるなるべし。
【訳】一つだけの和歌では自分の気持ちを十分に表せなかったので、もう一つ詠んだ歌、
「早くと都に着けばいいのになあと思う船を行きなやませるのは、私にたいする川の水の心が浅いのだなあ。」
この歌は、きっと都が近くなった喜びを抑えきれずに表現したのであろう。

【本文】淡路の御の歌におとれり。ねたき、いはざらましものをとくやしがるうちによるになりて寢にけり。
【訳】淡路の老女の歌にくらべて劣っている。いまいましい、言わなければいいのに・・・と残念がるうちに、夜になって寝てしまった。





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Last updated  January 24, 2010 04:29:38 PM
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