趣味の漢詩と日本文学

趣味の漢詩と日本文学

December 14, 2010
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カテゴリ: 国漢文
【本文】越前権守(ごんのかみ)兼盛、兵衛の君といふ人にすみけるを、としごろはなれて又いきけり。さてよみける、

ゆふさればみちもみえねどふるさとはもと来し駒にまかせてぞ行く

【注】
・越前権守兼盛=平兼盛。天暦四(950)年に越前権守となった。平安中期の歌人で三十六歌仙の一人。《百人一首》の「しのぶれど色にでにけり……」の歌で知られる。
・兵衛の君=参議藤原兼茂(かねもち)のむすめ。

【訳】越前権守兼盛が、兵衛の君という人の所に通って夫婦として生活していたが、何年か離れて暮らし、のちに再び兵衛の君の所へ行ったとさ。そうしてその折りに作った歌、

夕方になると道も暗くて見えないけれども、かつて暮らした家は、道を憶えているであろう以前乗って来た馬の進むにまかせて行く。


【本文】女、かへし、

こまにこそまかせたりけれはかなくも心の来ると思ひけるかな


あなたは私の所にくるかどうかを馬なんかにまかせていたのねえ、そんないい加減な人だと知らずに、愚かにも私の心が、あなたは私を深く愛しているからこそ来るもんだと思っていたわ。






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Last updated  December 14, 2010 09:48:05 AM
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